報告書 > 評価結果(2)研究開発課題の個別評価

研究成果最適移転事業 成果育成プログラムB(独創モデル化)

平成14年度実施課題 事後評価報告書



平成16年4月
研究成果最適移転事業 成果育成プログラムB(独創モデル化)評価委員会


5. 評価結果
(2)研究開発課題の個別評価
 11 新方式ナノ空間顕微分光装置の開発(H14-0053)

企業名 :株式会社 東京インスツルメンツ
研究者(研究機関名) :河田 聡(大阪大学 大学院 情報科学研究科情報数理学専攻 教授)

1 ) モデル化の概要および成果
 本装置は、金属針の先端を原子オーダーにまで先鋭化した近接場プローブと共焦点レーザ顕微鏡、ピエゾステージとイメージ分光器から構成され、金属針プローブ近傍のnmスケール領域でのみ入射光強度が増強される表面増強ラマン効果を用いて数十nmスケールの観察対象からのイメージラマンスペクトルと表面形状を同時測定する新方式ナノ空間顕微分光装置である。従来の近接場光学顕微鏡を用いた顕微ラマン分光法装置では、光ファイバー先端に微小開口を作製した近接場プローブが用いられるが、感度が3桁以上悪く3~4時間の測定を要し機械的ドリフトも起こる。またプローブ先端の開口径は、製造技術が確立されておらず、100~300nm間のバラツキが多いため再現性が低く、安定的に100nm以下の空間分解能を得るのは困難であった。本開発では、金属プローブ材質・励起波長の最適化、レーザ照射光学系・分光-検出光学系の最適設計による高効率化及び近接場プローブ、ピエゾステージ制御、分光スペクトル取得制御ソフトウェアについての検討・装置化により、100nm以下の分解能でのイメージラマンスペクトルと表面形状の同時測定を可能とした。現在、世界的にnmスケールでのイメージラマンスペクトル測定例がほとんど無い状況であり、測定条件の最適化や材料に合った励起条件の探索と最高性能の確認など検討が必要な項目は多いが、従来不可能だった分野への適用の可能性は高く、今後各種材料・新規分野での分析・評価に活用し、有用性を実証していきたい。

2 ) 事後評価
モデル化目標の達成度
 空間分解能の目標値50nm以下に対し、達成値は~80nm。試料の選択も重要であったが、装置性能の更なる検討も望みたい。他の目標は達成されており評価できる。
知的財産権等の発生
 特許1件出願済み。
企業化開発の可能性
 開発装置の完成度は相当に高いと考えられる。適用分野によっては実用の域に達しているのではないだろうか。
新産業、新事業創出の期待度
 ナノテクノロジー分野の期待される製品である。競合製品も皆無ではないが、XY駆動ステージの位置決め分解能を確保し、コンパクトにまとめ上げれば期待度はかなり高いと考えられる。
3 ) 評価のまとめ
 空間分解能の目標値は、近々達成されるものと思われる。他の目標は達成されており、開発装置の完成度は相当に高いと考えられる。製品販売の可能性が高い。


一覧に戻る 次へ

目次に戻る


This page updated on May 19, 2004

Copyright©2004 Japan Science and Technology Agency.