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開発を終了した課題の評価

課題名 「新規育種植物による土壌汚染浄化技術」
所有者 独立行政法人 産業技術総合研究所 飯村 洋介
研究者 独立行政法人 産業技術総合研究所 主任研究員 飯村 洋介
委託企業 株式会社 小泉
開発費 約2.4億円
開発期間 平成15年3月~平成21年2月
評価  本新技術は、有害物質で汚染された土壌を、植物を利用して原位置で低コストで修復する土壌汚染浄化技術に関するものである。
 従来から植物を利用した土壌汚染浄化技術は、環境への負荷が小さい利点があるものの、処理に時間がかかることや植物の生育環境により除去率が不安定となるなどが課題とされている。
 当初、重金属を高濃度に蓄積する植物に、担子菌から単離した有害化学物質分解酵素遺伝子を導入して組み換え植物を作出する目的で開発に着手した。4年経過時点で、遺伝子組み換え技術の進捗評価を行うと共に、組み換え植物の屋外試験に反対する世論の高まりから計画変更を行い、それまでの開発過程で得た育種技術を発展させ、重金属蓄積能力の高い非組み換え品種を改良し、環境適応能力の高い新品種の作出を目標とすることとなった。
 本技術開発では、汚染対象有害物質をCdとし、これまで20種類の候補植物から最終的に絞り込んだマリーゴールド親株2品種について、花粉親の選抜・育種を進め、形質を固定化させた花粉親株を選抜した。また一方で、人工培養による安定な雄性不稔株の作出技術を確立した。さらに選抜固定化品種の雄性不稔株と開発した花粉親株との掛け合せにより従来品種の1.5~2倍のCd吸収能をもつ2種の品種改良種を作出した。これらは、Cd汚染土壌においても従来品種と比べ生育力が優れているだけでなく、他の主な重金属も在来種に比べ同等以上に吸収する能力をも有している。この2種は、新品種として農林水産省に品種登録の申請を準備中である注)。以上の成果が得られたことから、開発手法は異なるものの開発は成功と判断するのが妥当と考える。
評価者 独創的シーズ展開事業 委託開発
 プログラムディレクター  今成 真
 プログラムオフィサー  中川 威雄、吉村 進、桐野 豊
評価日 平成21年3月5日
注)本文は3月5日時点のものであり、2品種のうち1品種の品種登録は平成21年2月20日に出願済み。