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別紙

戦略的国際科学技術協力推進事業
平成20年度「日本-フィンランド研究交流」新規課題 採択一覧

研究交流課題名 日本側
研究代表者
所属・役職 研究交流課題 概要
フィンランド側
研究代表者
1 大規模分子動力学シミュレーションと放射光X線を用いた高速相変化材料の構造解析および新規材料設計 小原 真司 財団法人 高輝度光科学研究センター 利用研究促進部門 副主幹研究員  本研究交流は、DVD、Blu-rayに代表される高速相変化材料の液体・アモルファス構造の解析を行い、その3次元構造を構築することを目的とする。
 具体的には、日本側ではDVD、Blu-ray実デバイスとして使われているアモルファス材料を合成し、その構造に関する実験データを得る。一方、フィンランド側では、大規模計算によって理論的に液体、アモルファスの3次元構造を構築する。
 本共同研究で日本とフィンランドが交流を通じて相互的に取り組むことで、高速相変化の本質が明らかとなり、新規材料設計の指針が得られることが期待される。
Jaakko Akola
(ジャーコ・アコラ)
ユバスキュラ大学 ナノサイエンスセンター 客員教授
2 カーボンナノ材料の欠陥構造研究 末永 和知 独立行政法人 産業技術総合研究所 ナノチューブ応用研究センター 研究センター長  本研究交流は、ナノチューブやグラフェンをはじめとするナノ炭素材料の欠陥構造とその機能を明らかとすることを目的とする。
 具体的には、日本側では高分解能電子顕微鏡や高感度元素分析などの手法で、欠陥構造を原子レベルで可視可すると共に、それらの欠陥が材料の物理化学的性質に及ぼす影響を実験により明らかにする。一方、フィンランド側では、擬似的な照射実験によってドーパント注入や格子欠陥の導入を行い、さらに理論的に構造計算や電子状態計算を実行し、日本側での実験結果との照合を行う。
 本共同研究で日本とフィンランドが交流を通じて相互的に取り組むことで、核融合炉隔壁材料の開発に重要な知見の獲得や、ナノチューブといった機能性材料の物理化学的特性の積極的変調が期待される。
Arkady Krasheninnikov
(アルカディ・クラシェニニコフ)
ヘルシンキ大学 材料物理学部門 講師
3 新規熱電変換酸化物の設計と合成 寺崎 一郎 早稲田大学 理工学術院 教授  本研究交流は、特異な結晶構造を持つ遷移金属酸化物の物理的・化学的性質を制御することにより、新規な熱電変換材料設計・合成、およびナノ構造制御を通じた材料の性能向上を目的とする。
 具体的には、日本側では新規な遷移金属酸化物の単結晶試料設計と合成を行い、熱電特性の精密測定を実施する。一方、フィンランド側では、薄膜材料の設計・合成とその化学的評価を行う。
 本共同研究で日本とフィンランドが交流を通じて相互的に取り組むことで、酸化物だけでできた熱電変換素子を試作し、廃熱からの電力回収のための要素技術を確立することが期待される。
Maarit karppinen
(マリット・カルピネン)
ヘルシンキ工科大学 化学科 教授
4 バイオエレクトロニクスデバイスへの応用を目指す自己組織化分子材料の開発 春山 哲也 九州工業大学 大学院生命体工学研究科 教授  本研究交流は、構造を制御した分子層を固体上に形成できる自己組織化分子材料を構築し、さらにそれを利用した分子層形成プロセスを確立することを目的とする。
 具体的には、バイオエレクトロニクスを専門とする日本側では、自己組織化融合分子の構築、分子界面自己組織化プロセス開発、形成された分子界面機能の速度論的評価を中心に推進する。一方、たんぱく質工学を専門とするフィンランド側では、自己組織化機能分子の構築と発現・精製手法の検討を行う。
 本共同研究で日本とフィンランドが交流を通じて相互的に取り組むことで、未だ技術化の目処が立っていない超高感度バイオセンサーやバイオ燃料電池など、マクロ分子界面機能の高効率化が基となる次世代技術への道が開かれることが期待される。
Markus Linder
(マーカス・リンダー)
フィンランド国立技術研究センター(VTT) バイオナノマテリアルチーム チームリーダー
5 自己組織化金属錯体による機能性材料の開発 藤田 誠 東京大学 大学院工学系研究科 教授  本研究交流は、生体系に見られる自己組織化現象(複雑な構造が自発的に組み上がるしくみ)を、金属イオンと有機分子の特性を活かすことで人工系において実現し、ナノメートルスケールの新物質や新機能を創出することを目的とする。
 具体的には、日本側では数ナノメートル以上の中空自己組織化錯体に焦点を当て、その構築やナノ表面、内表面の化学を展開する。一方、フィンランド側では、無限骨格を有する自己組織化金属錯体に絞って研究を遂行する。
 本共同研究で日本とフィンランドが交流を通じて相互的に取り組むことで、物質・材料創成の新しい概念・手法としての「金属イオンを活用した自己組織化」の確立が期待される。
Kari Rissanen
(カリ・リサネン)
ユバスキュラ大学 ナノサイエンスセンター 教授
6 再生医療における新しい細胞マトリックス作成技術の開発 澤 芳樹 大阪大学 大学院医学系研究科 教授  本研究交流は、温度応答性細胞培養皿による細胞シート技術を応用してnemosisと呼ばれる細胞群の形成プロセスを強化し、より高度な再生医療を実現することを目的とする。
 具体的には、日本側では細胞シートに埋め込まれたnemosis活性化細胞や可溶性メディエーターの生体内・生体外での実験を行う。一方、フィンランド側では、組織創傷治療および再生のためのnemosisキャリアマトリックスの開発を行う。
 本共同研究で日本とフィンランドが交流を通じて相互的に取り組むことで、皮膚創傷治癒と治療のためのコンセプトを臨床的治療で実証し、心不全など心血管疾患の再生療法がより発展することが期待される。
Esko Kankuri
(エスコ・カンクリ)
ヘルシンキ大学 生物医学研究所 助教
7 ダイヤモンドラークカーボン薄膜を利用した環境調和型機能性表面 鈴木 哲也 慶應義塾大学 大学院理工学研究科 教授  本研究交流は、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)薄膜の新しい低コスト合成方法およびその実用化を発展させることを目的とする。
 具体的には、日本側では都市エリアプロジェクトにおいて開発中の大気圧プラズマDLC薄膜資料をフィンランド側に送付し、現地企業での応用を目指す。一方、フィンランド側では表面特性の評価を行う。
 本共同研究で日本とフィンランドが交流を通じて相互的に取り組むことで、高機能DLC膜の創製・実用化が期待される。
Kenneth Holmberg
(ケネス・ホルムベルグ)
フィンランド国立技術研究センター(VTT) 産業システム部門 教授