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資料1

平成20年度育成研究 採択課題一覧

プラザ/サテライト 研究課題名 代表研究者 共同研究機関 共同研究企業 研究
期間(年)
研究概要
氏名 所属機関・部署 役職
北海道 関節疾患治療のための新規注射剤の実用化研究 岩崎 倫政 北海道大学病院 講師 酪農学園大学 持田製薬(株) 3 現在、外傷性関節軟骨欠損や変形性関節症などの関節疾患において治療に用いられるヒアルロン酸製剤は動物由来製剤が主流であり、安全のための精製にコストがかかるなどの欠点がある。また、最も有効な治療法は人工関節置換術であるが、それは安定したものである反面、高コスト、置換物のゆるみ、感染症など問題が存在している。
申請者は、幹細胞を活性化する基材として植物由来の新規マテリアルを用いて、軟骨損傷部に集まる骨髄間葉系幹細胞の活性化による軟骨再生を実現している。既に大型動物での研究で軟骨再生治療の確証を得ており、軟骨修復・再生の作用機序を検証し、実用化を目指す。
本成果により介護、QOLへの貢献も大きく期待される。
北海道 リアルタイム分光イメージングによる食品の安全性モニタリングおよび通電加熱による高効率殺菌技術の開発 澤山 一博 北海道立工業試験場 情報システム部 部長 北海道大学 北海バネ(株) 3 現在、食品の安全性に対する消費者の関心が高まっており、国や地方自治体、特に北海道において食品安全に関わる施策を重点的に取り組んでいる。
本研究では、申請者は近赤外線によるリアルタイム水分計の開発成果を発展させ、現状の製造ラインで採用されているX 線異物検査装置や目視では困難な虫やガラス、プラスチック片などの非金属の混入異物の検出法を開発する。また、紫外・蛍光検出技術を活用することにより加工食品の変質、劣化を検出するシステムを合わせて開発する。これらの成果を統合し、食品製造ラインにおけるリアルタイム検出によるトータルシステムを構築する。
宮城 携帯端末に搭載可能な超高速通信用ミリ波ビームフォーミングアンテナの研究開発 加藤 修三 東北大学 電気通信研究所 教授 独立行政法人 情報通信研究機構 (株)日立製作所 中央研究所 3 申請者はこれまでに、ミリ波(60GHz)通信方式実用化のボトルネックとなっていた、(1)複雑な回路によるアンテナビームの制御、(2)アンテナの強い指向性による低い通信信頼性(接続性)を解決するために、(1)に対しては離散的な位相だけでビームを制御する方式とLTCC(Low Temperature Co-fired Ceramics)技術を用いた低損失移相器によるビームフォ- ミンク回路の小型化および低損失化を、(2)に対しては人工的に反射波を増大させ、かつ“最適なビーム”と“2番目に最適なビーム”を同時に追尾する方式を考案した。
本研究では、これら所有特許をベースとしたビームフォーミング機能用RF(Radio Frequency) ICの設計・開発・検証を行い、携帯端末に適用できる簡易でかつ超高速通信(3Gbps相当)の高信頼化(2倍以上)を図ることができるミリ波用ビームフォーミングアンテナ技術を実現する。
宮城 飲酒にともなうアセトアルデヒド生成による健康問題を解決する原因除去型サプリメントの開発 中山 亨 東北大学 大学院工学研究科 教授 - サントリー(株) 3 飲酒により体内で生成するアセトアルデヒドは、口臭(熟柿臭)や二日酔いなど、飲酒にともなって起こるさまざまな健康問題の原因となる。これまでに商品化されている口中清涼剤や二日酔い対策商品の商品コンセプトはこれらの問題の解決策としては対症療法的で、原因除去型のものではなかった。
本研究では、飲酒後に口腔内に蓄積するアセトアルデヒドを酵素的に消去し、飲酒にともなうアセトアルデヒド生成に関わる健康問題を根本的に解決する原因除去型の健康サプリメントの開発を目指す。
石川 インクジェットを活用したフレキシブル熱電モジュールの開発 小矢野 幹夫 北陸先端科学技術大学院大学 マテリアルサイエンス研究科 准教授 - (株)KELK 3 熱電モジュールは熱と電気とを直接変換する固体素子であり、半導体製造装置の薬液温度調節や光通信のレーザ温度制御など精密な温度制御が必要な用途で使用されている。
本研究では、LCD用カラーフィルターや有機ELの製造に利用されているインクジェット技術を活用し、フレキシブル熱電モジュールを開発・企業化することを目指す。
これにより、より広い産業分野に対して、熱電モジュールの需要が伸びることが期待される。
石川 新規紫外線源の開発とその食品殺菌への応用 松本 和憲 富山県立大学 工学部 准教授 - エムアールシーポリサッカライド(株)
立山マシン(株)
コーセル(株)
3 水銀やキセノンなどを用いた紫外線源は、さまざまな産業分野において利用されている。しかし、地球環境問題や持続可能社会への関心の高まりから、有害な水銀や地球希少資源のキセノンなどを用いない紫外線源の登場が望まれている。
本研究では、独自技術である多極磁場中の多相交流放電プラズマ発生法を適用し、地球環境に整合し容易に入手可能な窒素化合物ガスを用い、特徴ある新規紫外線源を開発すると共に有用な光化学反応分野への応用を展開する。具体例として、まず食品分野の殺菌装置への応用を進める。
東海 活性酸素を利用したディーゼルパティキュレートセンサの開発 日比野 高士 名古屋大学 大学院環境学研究科 教授 独立行政法人 産業技術総合研究所 (株)日本自動車部品総合研究所 3 本研究では、これまで申請者らが検討を行ってきたプロトン導電性電解質と電極触媒からなる電気化学デバイスを使用し、活性酸素を高効率に生成させることにより、排ガス中の浮遊粒子状物質(パティキュレートマター:PM)濃度をその場で瞬時に測定するセンサを開発する。
センサ自体が自己再生能力を持つため、これまで報告されているセンサでは不可能であったPMの連続モニタが可能になり、加えて活性酸素のPM燃焼活性が特異的に高いため、作動温度が制限されず、低温から高温まで幅広く使用できる。
東海 アルツハイマー病の早期診断試薬キットの開発 三浦 裕 名古屋市立大学 医学研究科 准教授 国立長寿医療センター
医療法人さわらび会 福祉村病院
独立行政法人 労働者健康福祉機構 新潟労災病院
(株)医学生物学研究所 3 申請者らは、脳細胞の増殖・分化を制御するタンパク質ATBF1を発見し、ATBF1がアルツハイマー病脳・髄液・血液で異常増加することを見いだした。この増加を血液中で簡便に検出するモノクローナル抗体を開発し、アルツハイマー病の早期あるいは発症前診断システムを確立する。
京都 低侵襲脳血管内治療用デバイスの研究開発 岩田 博夫 京都大学 再生医科学研究所 教授 三重大学 マルホ発條工業(株)
(株)カネカ
3 近年、脳動脈瘤の治療は開頭・直達術からより低侵襲なカテーテルと塞栓コイルを用いた血管内手術に移行している。一方、術後フォローアップに核磁気共鳴イメージング法(MRI)が導入されているケースが多くなってきているが、従来の塞栓コイルではハレーションが起こり正確な診断ができない。
本研究では、高度な技術を有する異分野の研究者と民間企業が共同して、MRIにおいてハレーションを起こさない塞栓コイルの開発を行う。
京都 高活性可視光応答型共ドープ酸化チタン光触媒の開発 岩本 伸司 群馬大学 大学院工学研究科 准教授 京都大学 堺化学工業(株) 3 酸化チタン光触媒を用いる大気や水の中の有害物質の除去は、太陽光を利用するメンテナンスフリーな技術として大きな期待を集めている。
本研究では、ソルボサーマル法により合成したSi修飾酸化チタンナノ結晶を窒化処理した試料を用い、紫外線だけでなく可視光でも高い光触媒活性を示す高性能光触媒材料の開発を行う。得られる新規な光触媒材料は、室内の光照射条件でも光触媒作用を発揮し、空気清浄、浄水、抗菌などさまざまな用途への応用が期待される。
京都 新規両親媒性乳酸系ポリデプシペプチドを用いた分子プローブの開発に関する研究 木村 俊作 京都大学 大学院工学研究科 教授 - (株)島津製作所 3 新規両親媒性ポリペプチドを開発し、その自己組織化により形成されるナノ粒子が、内臓などへの集積が少なくかつ高選択的にがん組織に集積することをin vivo蛍光イメージングにより明らかにしてきた。
本研究では、これをがん診断用分子プローブの基材として用いるための研究開発を行うとともに、分子イメージング技術を用いた体内動態解析を行い、効率のよい治療薬開発システムへ繋げることを検討する。
大阪 核内受容体リガンドの網羅的簡便迅速バイオアッセイ法の開発 八木 孝司 大阪府立大学 産学官連携機構先端科学イノベーションセンター 教授 - 長瀬産業(株) 3 ヒト核内受容体のリガンド物質は環境ホルモンにも医薬品にもなり、注目されている。申請者らは、リガンド物質を簡便迅速に測定できる独自の酵母バイオアッセイ法を、遺伝子組換え方法で樹立し、一部は商品化に成功した。
本研究では、多種類のヒト核内受容体発現アッセイ酵母を創出し、最終的には、環境や創薬などの用途に応じて酵母群を選択でき、候補物質を網羅的にスクリーニングできる全く新しいリガンドアッセイキットの商品化を行う。これは信頼性が低くかつ高価な既存の方法を凌駕して普及し、環境中の未知人体影響物質の探索および創薬促進を通して、人々の健康維持に寄与すると思われる。
大阪 濃度勾配性因子をターゲットとした脊髄損傷治療薬の開発 山下 俊英 大阪大学 大学院医学系研究科 教授 - 田辺三菱製薬(株) 3 本研究は、損傷した中枢神経回路を修復し、失われた神経機能を回復する抗体治療薬開発を目的とする。申請者が発見した神経回路の再生を負に制御する因子をターゲットとして、ヒト型モノクローナル中和抗体を開発し、動物モデルでの薬効を検証する。これらの薬剤は、中枢神経機能障害をもたらす多くの疾患をターゲットとする点で医学的に貢献するのみならず、特に「要介護状態」からの回復が可能になるという観点で、医学経済面での大きな貢献も望める。
広島 肝硬変・肝不全に有用な骨髄由来Nano-induced Stem Cell (Nano-iSC)分離培養技術の臨床開発 坂井田 功 山口大学 大学院医学系研究科 教授 財団法人 川村理化学研究所
東京医科歯科大学
広島大学
DIC(株)
旭化成クラレメディカル(株)
3 申請者らは、肝硬変症に対する自己骨髄細胞投与療法(ABMI療法)を世界で初めて開発しその有効性を明らかにし、さらに多施設臨床研究を行なってきた。しかし、全身麻酔下で骨髄液400mlを採取するため、心肺機能が悪いなどの全身麻酔が不可能な症例には適応がない。
そこで本研究では、局所麻酔下に少量の骨髄液を採取し、骨髄細胞を分離しナノテクノロジー技術を用いて新たにNano-induced stem cell (Nano-iSC)を培養増殖させ、これを投与する新しい再生療法のための研究開発を行う。
広島 IR/MAR遺伝子増幅法を蛋白質生産の基幹技術へと育成するための研究 清水 典明 広島大学 大学院生物圏科学研究科 教授 - (株)トランスジェニック 3 申請者が独自な基礎研究から見いだし開発してきたIR/MAR遺伝子増幅法は、動物細胞で組み換え蛋白質を工業生産させる画期的な方法である。本手法を、巨大な市場を持つ抗体医薬品等、広汎な産業分野で基幹技術として利用されるようにするためには、残された2課題を解決することが必要である。すなわち(1)適用細胞の拡大と、(2)発現抑制の効果的な解除法の樹立である。
本研究では、系統的な検討を行うことにより、これらの課題を解決する。
広島 温暖化対策に適した早晩生高温登熟性の短稈コシヒカリの開発 富田 因則 鳥取大学 農学部 准教授 - 幸福米穀(株) 3 申請者らは、コシヒカリの倒伏防止のため、当時世界に1つしかなかった短稈遺伝子sd1を導入したヒカリ新世紀を開発して複数県に普及させ、さらに遺伝子の多様化を図るため新規の短稈遺伝子d60を持つコシヒカリd60、ミニヒカリを作った。
本研究では、これら短稈コシヒカリに、早晩生、高温登熟性などの量的形質(QTL)遺伝子を分子育種により短期間で付与し、温暖化による品質劣化を防ぐとともに収穫期を分散することによって、生産者の労力を軽減し、農業雇用と米生産事業の活性化に役立つ新品種を創生する。
福岡 石けんを主成分とした林野火災用の泡消火剤の開発 上江洲 一也 北九州市立大学 国際環境工学部 教授 - シャボン玉石けん(株)
(株)モリタ
3 林野火災は火災規模が大きく、安全面に加え、環境・経済面でも甚大な損害となる。
本研究では、消火能力に優れかつ生態系環境負荷を極小化した泡消火剤およびその効果的利用を可能とする消火資機材・消火戦術等、林野火災の総合的消火技術の新規開発を行う。
福岡 文献や特許データベース中の化学構造式の認識と検索 鈴木 昌和 九州大学 大学院数理学研究院 教授 茨城大学
財団法人 九州先端科学技術研究所
(株)システムオーディット
(株)デジタルノーツ
(株)キューデンインフォコム
3 本研究で開発するシステムは、化学分野の文献や特許データベースに含まれる画像形式の化学構造式を認識して構造化されたデータに変換することにより、これまで困難であった化学式情報の検索に道を拓くとともに、化学式検索用データベース構築の低コスト化を図るものである。また、手書き入力による化学式認識を用いた化学式入力インタフェース開発も行い、直感的で分かりやすい化学式検索システムの実現を目指す。
福岡 コンクリート内パルスパワー放電による高度骨材再生処理 浪平 隆男 熊本大学 バイオエレクトリクス研究センター 准教授 - 清水建設(株)
(株)太平洋コンサルタント
西日本技術開発(株)
3 現在、土木・建築業界が直面する課題として「激増する廃コンクリート」、「逼迫する最終処分場」、「枯渇が懸念される天然骨材」が挙げられるが、これらは廃コンクリートからの高度骨材再生処理技術の完成をもってして解消することとなる。
本研究は、廃コンクリート内における「パルスパワー放電に起因する選択的放電路形成によるセメントペーストの破砕」および「衝撃波の波動性による骨材とセメントペーストの分離」という2つの制御破砕・分離原理に基づいた高度骨材再生処理技術を世に提供し、前述全ての課題を解決することを目的とする。
岩手 電子機器の電極パターニングに適した新規無機インクの開発 山本 修 秋田大学 工学資源学部 准教授 - (株)ジェムコ 3 液晶ディスプレーやタッチパネル・太陽電池などに用いられる透明導電膜(ITO)は、現在、主に真空中でのスパッタリング法にて製膜し、エッチングにてパターン形成しており、大面積化に伴い設備投資・加工コスト面で課題がある。また、常圧でパターン形成可能なITOインクは、有機金属の熱分解やゾル溶液が研究されているが、結晶化のための高温加熱処理と有機残渣による透過率の減少が問題となっている。
本研究では、これら諸問題を解決し、350℃以下で結晶化させ、高い透過率と導電率を達成するITOインクを開発する。
岩手 長日要求性素材と遺伝子解析を応用したアブラナ科極晩抽性品種の開発 由比 進 独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 東北農業研究センター チーム長 岩手大学
岩手県農業研究センター
(株)サカタのタネ 3 ハクサイやコマツナ、チンゲンサイなどの品種は、冬から春の低温環境下で生育させると花芽が分化して茎が伸長(抽だい)し、収穫できなくなる。これに対し、申請者らが開発した「つけな中間母本農2号」はハクサイのような結球はしないが、(1)低温ではなく長日によって花芽分化・抽だいする、(2)花芽分化・抽だいが非常に遅い、という特異な形質を保有している。
本研究では、これらの形質とハクサイの有する結球性を組み合わせ、さらに積雪下での越冬性を併せ持たせたハクサイ品種を、新たな遺伝子解析手法を適用して選抜・育成する。これによって、既存のハクサイ品種では不可能な作型、すなわち晩秋に種まきして露地越冬させ、翌春に結球させて収穫する作型を短期間で開発する。
茨城 合成ワクチン・抗体医薬「鍵物質」合成法の開発 千葉 一裕 東京農工大学 大学院連合農学研究科 教授 - (株)AUC
農工大ティー・エル・オー(株)
JITSUBO(株)
3 合成ワクチンなど多くの医薬品開発には、鍵となるタンパク質の特定部分をモデルとした化学物質合成技術が必要となる。しかし、活性を発現する立体構造を再現した形でモデル物質を合成することは、従来技術では極めて困難であり、医薬品の開発コストや医療費の増大につながっている。
本研究では、逆ミセル反応法を導入した新たな化学物質製造技術により、飛躍的に安価で迅速に、自在に立体構造を制御したタンパク質フラグメント分子を合成・製造することができる要素技術を確立する。本成果は、創薬化学分野での基盤技術となることが期待される。
茨城 生体吸収性合成高分子を用いた3次元細胞空間の構築とコラーゲン複合化高機能性材料の開発 陳 国平 独立行政法人 物質・材料研究機構 生体材料センター グループリーダー - セーレン(株) 2 生体組織の再生に用いられる多孔質材料は、高い生体親和性、形状安定性、気孔率などの性質が求められる。従来、これらの性質を満たす材料を単一の素材から作製することは、極めて困難であった。
本研究では、繊維の織編技術により作製した高い力学強度を持つ合成高分子多孔質体の骨格と生体親和性に優れたコラーゲンスポンジとを複合化する、独自の材料技術を活かし、高い力学強度と気孔率に加え、精密に制御された連通孔および優れた生体親和性を備えた、再生医療用の高機能複合多孔質材料を開発する。本成果は、骨や軟骨、皮膚などを再生する再生医療分野での中核的な基盤技術となることが期待される。
茨城 構造物の耐震性能を高機能化する次世代型パッシブトリガーダンパーの開発 山口 修由 独立行政法人 建築研究所 材料研究グループ 主任研究員 - バンドー化学(株)
(株) ビービーエム
3 地震による建物の揺れを低減するさまざまな制振装置の中で、自律的に作動するアクティブ型制振装置は優れた性能を持っているが、使用期間の長い構造物に設置し制御する場合は、制御システムの高度なメンテナンスを長期間(100年以上)継続しなければならないという問題があった。そのため、保守コストの負担が大きくなるにもかかわらず、それでも故障のリスクを排除することはできない。
本研究では、これらの問題を解決するメンテナンスフリーの非流体ダンパーを開発する。高減衰ゴムと機能化プラグを組み合わせることにより、エネルギーを吸収する減衰性能を可変にできるダンパーを開発し、減衰性能の信頼性を維持しつつ、減衰性能の高度化を図る。本成果は、耐震工学の分野における基盤技術となることが期待される。
新潟 生分解性材料を用いた環境調和型水中溶存アニオンの高効率吸着材の創製研究 瀬古 典明 独立行政法人 日本原子力研究開発機構 量子ビーム応用研究部門 研究副主幹 - (株)ERHテクノリサーチ
(株)第一テクノ
ウイーグル(株)
3 本研究は、地球温暖化防止および環境浄化・保全の観点から、従来の人工高分子素材ではなく、植物由来のセルロースなどの生分解性素材による環境調和型吸着材を放射線グラフト重合技術により創製しようとするものである。これにより、二酸化炭素排出の収支が循環回収(カーボンニュートラル)できる吸着材の創製およびその量産化技術の確立に加え、廃坑廃水や地下水および産業排水中に含まれるヒ素など、水中に溶け込んでいる有害物質を吸着・回収することを目指す。これらの成果により実用化に向けた有害物質の除去技術の開発および浄化システムの構築の基盤技術となることが期待される。
新潟 がん治療用sgRNA薬スクリーニングシステムの開発 梨本 正之 新潟薬科大学 応用生物科学部 教授 北海道大学
新潟大学
(株)新潟科学
協和発酵キリン(株)
3 本研究は、特定の遺伝子の発現をRNAレベルで抑制することができる新しい遺伝子発現制御法(TRUE gene silencing法)を基盤としたもので、がん治療用small guide RNA(sgRNA)薬スクリーニング システムの製品化を目的とする研究開発である。この方法は、健康で正常な細胞には影響がなく、かつ特定のがん細胞のみを死滅させるsgRNAを見いだし、難治性がん治療のための創薬に役立てようとする点に特徴がある。類似技術のRNAi法に比べて、インターフェロン反応による副作用がない、RNA合成費用を低くできる、細胞内へ導入するための薬品・処理などを必要としない、などの優位性がある。このシステムを利用してテーラーメード医療に向けたがん治療用sgRNA薬などの開発が期待される。
静岡 フリーピストン型スターリング冷凍機とサーモサイフォンを用いた深部腫瘍性病変の凍結治療装置開発 礒田 治夫 浜松医科大学 医学部 准教授 - ツインバード工業(株)
日本ゼオン(株)
3 凍結治療は腫瘍を低侵襲的に凍結・融解により壊死させ、正常組織の損傷を抑えながら凍結免疫も期待できる治療法で、腫瘍と凍結領域をMR、CTまたは超音波ガイド下で高精度モニタリングすることでより安全かつ正確な治療が行える。
本研究では、フリーピストン型スターリング冷凍機とサーモサイフォンを組み合わせることにより、イメージガイド下で治療でき、小型・安価・操作性に優れた凍結治療装置を研究開発する。近年急増している乳がんを最初のターゲットとし、根治治療に加え整容性の向上を図り、さらに深部腫瘍性病変への適用拡大を目指す。また、将来の薬事申請を視野に入れ、安全性の確認・動物実験による有効性の確認を行う。
静岡 易脱ぷ性四倍体ダッタンソバ品種を用いた高GABA大粒ソバ米の開発 井上 直人 信州大学 農学部 教授 - タカノ(株) 3 本研究の目的は、中山間地での栽培に適し、血圧を抑えるルチンや、アレルギー抑制効果が認められているケルセチンをソバの100倍以上含むだけでなく血糖値を抑制する効果も高い機能性食品素材であるダッタンソバの新品種を開発するとともに、それを用いた高GABAソバ米加工方法を開発して商品化することである。易脱ぷ性突然変異系統を用いて染色体を倍加・選抜し、外皮が剥けやすく大粒のソバ米を作れる四倍体品種を育成する。さらに、近氷温加水熟成加工により、機能性を強化した食品を開発する。
滋賀 防疫に利用できる一粒子検出による感染症診断機器の開発 長谷川 慎 長浜バイオ大学 バイオサイエンス学部 講師 滋賀県工業技術総合センター
長崎大学
(株)ライフテック 3 本研究では、新興・再興感染症対策に活用できる一粒子検出法を基盤とした検査機器を開発する。一粒子検出法は、共焦点光学系での経時的な蛍光変動をもとに粒子の計数を行う。この方法は、ウイルスなどの病原体を増幅過程なしに数分で微量の検体から検出できる。
この原理に基づく診断機器を試作することにより、パンデミックが危惧されている新型インフルエンザウイルスの対策を提供し、検疫所などでの防疫検査に利用できる技術を開発する。また、数種のウイルス・微生物について検査試薬を開発することにより、この検出装置を応用性の高いものとする。
滋賀 プロテオーム解析用2種およびメタボローム分析用1種の新規マルチ同位体標識化合物の開発と製品化 松川 茂 福井大学 総合実験研究支援センター 准教授 - (株)日立ハイテクノロジーズ
大陽日酸(株)
3 本研究では、申請者らが開発した新規の同位体標識化合物を用いて、微量の血液から癌や血管疾患などさまざまな病気の診断や・治療効果・予後経過等を測定する簡易分析用と高効率精密分析用の蛋白・ペプチド検出用試薬を2種類開発する。
また、神経精神疾患の診断のために精神活動の目安となるさまざまな生理活性アミン全てを1滴の血液で計測定量できる試薬の開発製品化も目指す。
同一母体から作るこれらの試薬をドーピング検査で使用されている質量分析装置と組み合わせて使用することによって、一度に多検体を同時分析し結果を出す高効率化分析を可能にする。
徳島 超高感度ELISA測定系の自動化 蛯名 洋介 徳島大学 疾患酵素学研究センター 教授 徳島文理大学
愛媛大学
テカンジャパン(株)
(株)医学生物学研究所
3 体外診断用医薬品や生物学的な研究の分野において、ELISA法は広く用いられている技術で、生体内の微量な成分を、高感度に測定することができる。しかし、その測定範囲は通常1000pg/mL程度の濃度を対象としており、また測定する対象物によっては、さらにその感度は低下するなど限界がある。
本研究では、感度の低下の原因となる本来反応に関与しない物質の非特異的な吸着を抑え、特異的な反応のみを検出する方法を考案し、従来測定が不可能であったpg/mL以下の感度で生体物質を超高感度に測定する系を開発し、その自動化を行う。
徳島 分岐型オリゴグリセロール修飾法による医薬品の水溶性化および薬効改善 根本 尚夫 徳島大学 大学院ヘルスバイオサイエンス研究部 准教授 - 大塚製薬(株) 3 難水溶性薬剤は、消化管からの吸収が十分でなく、食事の影響を大きく受けるほか、過剰投与から副作用を起こす恐れがある。申請者は、枝分れ型グリセロール(BGL)を用いた共有結合による化学修飾法を独自に開発し、医薬品の水溶性・消化管吸収性・熱的安定性・疾患細胞集積性等の向上、生体内分解抑制などを示してきた。
本研究では、いくつかの難水溶性薬剤のBGL化剤の製造法とその修飾法を実用的レベルまで確立しつつ、BGL修飾化合物の薬効評価を行う。
高知 古紙と未利用木質資源から造った炭の植物栽培床と環境資材の開発 坂輪 光弘 高知工科大学 総合研究所 教授 高知県立森林技術センター (有)稲田建設
(株)ダイキアクシス
2 炭だけを用いた植物栽培床は、軽量かつ無菌でさらにホルムアルデヒドの吸着能を有し、土のように処分に困ることもない。そのため農業用の苗床としての利用はもとより、都市部での観賞用植物栽培に適し、ベランダや屋上植栽によるヒートアイランド対策にも有効と考えられる。
本研究では、これまでに申請者らが開発した古紙による炭の鉢を発展させ、地域の木質系未利用資源である木屑、樹皮などを混合し、安価で機能性の高い植物栽培床を開発する。
高知 柔軟で高品位な短光パルス発生器の実用化による信号品質評価技術の開発 野中 弘二 高知工科大学 工学部 教授 - アンリツ(株) 2 本研究では、既存の半導体レーザに簡単な光制御機能を盛り込むだけで、高品位で柔軟な光パルスを発生できる技術を実用化する。それを核として、次世代通信を支える新しい信号品質監視装置を開発する。具体的には、光波形計測・光信号品質評価装置用として、現状と同じサブピコ秒のジッタ品質を維持しつつ、数分の1以下の短パルス化を図るとともに、発生周波数の確度向上と繰り返し周期の低速化を簡単な制御で容易に実現する光パルス発生モジュールを実用化する。さらに、従来にない実用的で安価なパルス発生モジュールの生産技術を確立する。本技術の柔軟で高品質な光パルスを核として、高速情報信号の品質評価装置の構成を検討し、適用をはかる。
高知 遺伝情報に基づく高血圧等メタボリックシンドロームの個別化予防の実現に向けたリスク診断アルゴリズムと遺伝子解析ツールの開発 三木 哲郎 愛媛大学 医学系研究科 教授 滋賀医科大学
横浜市立大学
オリンパス(株) 3 本研究では、個人の遺伝情報に基づいたメタボリックシンドロームのリスク診断システムを開発する。従来の臨床情報のみによるリスク診断に比して、ハイリスク者を未病状態のうちにスクリーニングできることから、より確実な疾病予防に繋がるものと期待できる。診断アルゴリズムは、申請者らが発見した疾患感受性遺伝子の情報と、14,000人以上を対象とした大規模な解析結果に基づくものであり、極めて精度が高いと判断される。企業化にあたっては遺伝子解析の時間とコストが大きな制約であったが、今回同時に開発する新しい遺伝子解析ツールを用いれば、既存の方法に比べて極めて短時間かつ低コストでの解析が可能となり遺伝子情報の臨床応用が具現化する。
宮崎 尿中ナノベジクルを利用した新規非侵襲的腎臓病迅速診断法の開発研究 池田 正浩 宮崎大学 農学部 准教授 宮崎県立宮崎病院 アルフレッサ ファーマ(株) 3 申請者は、ナノベジクルと呼ばれる小胞に含まれてタンパク質が尿中に排泄される現象に着目し、これが急性腎不全の早期診断マーカーとなり得ることを見いだした。これを契機に、世界的に解析が進んでいない尿中ナノベジクルに含まれるタンパク質を網羅的に解析し、新規診断マーカーの発見を目指す。
本研究では、病院設備で迅速診断する技術を持つ企業と共同で、これらのマーカーをもとに非侵襲的な腎臓病の診断法を開発する。
宮崎 高速無廃水型バイオディーゼル燃料製造装置の開発 高梨 啓和 鹿児島大学 工学部 准教授 - (株)南光
ナトコジャパン(株)
3 バイオ燃料の一種であるBio Diesel Fuel(BDF)の高速無廃水型製造装置の開発を行う。従来、BDF の精製に長時間を必要としたが、原油中の水分除去にすでに多くの実用例が存在する高電圧印加処理技術などを適用することによって、プロセスの高速化が可能となる。
本研究では、同技術をBDF の製造に適用するための条件および装置の検討を行い、市場競争力が高いBDF 製造装置のプロトタイプを製作する。