別紙3

平成15年度採択地域の提案内容に関する評価結果

地域名:京都府
課題名:「機能性微粒子材料創製のための基盤技術開発」

<事業概要>

 ものづくり企業が多い京都府の産業特性を活かし、微粒子技術を駆使し高付加価値や新規需要創出を実現するプロダクトイノベーションと、微粒子制御・計測技術の高度化による新規の製造・品質管理技術を実現するプロセスイノベーションの次元を高めるとともに、環境負荷極小化技術を両立させ、地域優位性及び企業優位性の創出を図ることを目的として、以下の研究開発を行う。
 (1)高機能微粒子材料生成過程の研究開発
 (2)微粒子材料分散輸送制御技術の研究開発
 (3)微粒子計測・観測技術の研究開発

<事業の推進に関して>

 微粒子工学を先導している同志社大学、京都大学の粉体を専門とする研究者及び微粒子技術を有する世界的企業といった地域のポテンシャルの活用が図られている。また、京都・大阪・奈良の3府県にまたがる関西文化学術研究都市に位置する「(株)けいはんな」にコア研究室を設置することにより他府県との連携を進めようという、意欲的な研究開発の姿勢も評価できる。

<研究開発に関して>

 ミクロンとナノの間の領域は重要であるとともに、世界的に注目が集まっている分野である。微粒子の生成・プロセス・評価の一体となった取り組みは評価できるとともに、微粒子の分散制御、輸送技術は微粒子利用技術の中で最重要課題であり、産業に重要な技術である。

<地域による支援に関して>

 「けいはんな新産業フロンティア創出事業」、「産学公連携研究開発資金支援事業」といった支援体制の確立、産学官連携に焦点をあてた「京都産学公連携機構」の設立に加えて、京都府が機能性微粒子材料創製の基盤技術のCOEとして「微粒子応用技術研究開発センター」の創設を全国に先駆けて目指す意義は大きく、将来の微粒子利用産業への波及効果が期待される。

京都府より提案のあった事業概要(PDFファイル)

地域名:兵庫県
課題名:「ナノ粒子コンポジット材料の基盤開発」

<事業概要>

 SPring-8高精度分析技術と材料開発技術を直結した国際的な研究開発拠点を形成するために、高機能独創ナノ粒子コンポジットの開発研究の効率化とこの地域を発祥地とするゴムをはじめとした高分子製品製造における生産工程の最適化を目指すことを目的として、以下の研究開発を行う。
 (1)ナノ粒子コンポジットの開発
 (2)高輝度放射光によるナノ計測・評価技術の開発

<事業の推進に関して>

 SPring-8を核とする企業集団、研究開発集団を活用し、地場産業を育成しようという構想の下に事業推進体制が確立されており、着実な事業の推進が期待できる。また、具体的な事業化ターゲットを絞った地元企業ニーズへの対応を通じて、研究成果が地域へフィードバックされる実現性が高い。大規模科学装置に集結した中小企業の発展という地域COEの新しいモデルとして期待される。

<研究開発に関して>

 実時間計測・薄膜の構造解析など大学やその他の研究機関ではできない放射光による高度解析技術は世界的なレベルにあり、それを活用してのナノ材料開発は、先進性、優位性が認められる。また、開発した放射光を使用した高精度な実時間計測・薄膜構造解析手段を利用するために、コンサルティングを含めて他の研究者が使いやすい形で研究成果を公開することは、重要な意義がある。

<地域による支援に関して>

 兵庫県としてSPring-8を中心に据えた本事業の実施戦略が明確であり、併せて県立先端科学技術支援センターの設立や、県がSPring-8の新ビームラインを増設するなど、科学技術振興に対しての積極的取り組みも認められ、地域COEの構築に向けた地域の支援が期待できる。

兵庫県より提案のあった事業概要(PDFファイル)

地域名:和歌山県
課題名:「アグリバイオインフォマティクスの高度活用技術の開発」

<事業概要>

 第一次産業が優位にある和歌山県において、その豊富な農業資源(アグリリソース)を遺伝子・蛋白質レベルで解析・利用するシステム(アグリバイオインフォマティクス)を総合的に活用する技術を開発し、新農業資源利用産業の創生を通じて地域産業の活性化を図ることを目的として、以下の研究開発を行う。
 (1)有用アグリリソースのタンパク質発現解析と制御技術の開発
 (2)有用アグリリソースの高効率生産・利用技術の開発

<事業の推進に関して>

 地域の大学・企業・公設試それぞれのポテンシャルを有効に活用しつつ、コア研究室を中心として事業を推進する体制が提案されており、和歌山県の個性を生かした研究開発基盤の形成と地域産業振興に結びつく波及効果が期待される。

<研究開発に関して>

 食資源のバイオ解析は重要なテーマであり、和歌山県に優位な農業資源を研究対象としていることから、本研究開発全体としての必要性、地域性、独自性は評価できる。昨年度の可能性調査(FS)を踏まえて、実績のある研究者を中心とする地域に密着した研究テーマへの重点化及び実現性の高い計画立案が図られており、農林水産業に新たな付加価値を付与する新技術・新産業の創出につながる研究成果が期待できる。

<地域による支援に関して>

 関西をベースとするバイオ産業プロジェクトと連動・役割分担し、県の政策として和歌山バイオ戦略を明確に位置づけるとともに、本事業を通じて和歌山県がアグリバイオインフォマティクスの情報拠点・発信基地を目指そうという積極的な姿勢が示されており、地域COE形成に向けた地域の支援が期待できる。

和歌山県より提案のあった事業概要(PDFファイル)

地域名:宮崎県
課題名:「食の機能を中心としたがん予防基盤技術創出」

<事業概要>

 南九州特有の風土病である成人T細胞白血病(ATL)、及び肝細胞がんというウィルス発がんの発症機序を解明し、これに基づき食の機能性の活用を中心とした予防法及び治療法を開発することにより、バイオメディカル分野での基盤技術の国際拠点を形成し、ウィルス発がんの克服とともに地域産業や経済の活性化を図ることを目的として、以下の研究開発を行う。
 (1)ウイルス発がんの機序解明と予防・治療法の創出
 (2)食の機能性活用のための基盤技術の開発

<事業の推進に関して>

 宮崎医科大学と統合した新たな宮崎大学を中心として産学官のポテンシャルを結集し、地域特有の課題を克服するために医と農とが連携した事業推進体制が提案されており、バイオメディカル分野における地域COEの構築や宮崎県の地域産業を振興させる波及効果が期待できる。

<研究開発に関して>

 ウィルス発がんの機序解明は宮崎全県的課題であり、宮崎県において本研究を行う必要性は高い。長年の研究蓄積により優位性や独自性があり、このポテンシャルを医と農の分野の研究者が連携して活用する計画が、昨年度の可能性調査(FS)をもとに立案されており、食の機能性の活用を中心とした予防法及び治療法が開発されることが期待できる。

<地域による支援に関して>

 平成12年度の「産業科学技術振興指針の策定」や平成13年度の「宮崎県戦略的地域科学技術振興事業の創設」に見られるように、近年科学技術による地域振興への取り組みが熱心に行われており、県として本事業推進に向け積極的な支援体制整備を図っている点に強い意気込みが感じられ、地域COE形成に向けた県のイニシアチブと支援が期待できる。

宮崎県より提案のあった事業概要(PDFファイル)

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This page updated on October 23, 2003

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