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別紙3

平成20年度申請課題に関する評価結果


<採択課題>

課題名:「静岡発 世界を結ぶ新世代茶飲料と素材の開発」
地域名:静岡県・静岡市

(目的・概要)

 日本茶の機能性物質を効果的、効率的に生成、摂取する方法の確立、生体内での代謝現象の解明、および美味しく、安全な新飲料などの大量、安価な製造方法の開発を目的として以下の研究開発を行う。
(1)光技術を活用した機能性成分の体内挙動の解明に関する基盤研究
(2)光とバイオを融合した機能性成分の増幅や効率的生産方法の開発に関する研究
(3)食薬融合技術によるおいしく安全な茶飲料と素材の開発に関する研究

<事業の推進に関して>

 すでにお茶のブランド力を持つ静岡が、新たなお茶の味と香りを開発することを目的に、十分な基礎研究を計画している。世界に通じるお茶の創出を期待したい。ただし、医薬品産業への展開については企業化に至らない可能性が高いので、食品に絞るべきと判断される。また、基礎研究と実用化技術の乖離に注意し、十分にマネージメントする必要がある。

<研究開発に関して>

 地域ニーズと長年蓄積してきた茶研究のポテンシャルを一致させることが可能な課題である。PET(ポジトロン断層法)をカテキンの機能解明に応用する提案は、未解明の領域であり、ブレイクスルーが期待できる。実用化技術の開発においては、開発目標を「飲みやすいWorld Green Tea」に絞り、成果物の具体的イメージを明瞭にすることが望ましい。

<成果移転・企業化に関して>

 確立されているブランド力は企業化の後押しになる。特許や新規な知見が多く出ることは期待されるが、企業化のための特許戦略が課題である。

<地域による支援に関して>

 県の3つの研究セクター(光技術・機能性食品・先端健康産業)を拠点とした展開は評価できる。ただし、これらを組み合わせた取り組みとなるので、県の強力なリーダーシップを期待したい。市の関与についても学術企画などの積極的な支援を期待したい。

(提案内容)

静岡県・静岡市  静岡発 世界を結ぶ新世代茶飲料と素材の開発
(ライフサイエンス分野)

○企業化統括:原 征彦(前三井農林株式会社 最高技術顧問、静岡大学 客員教授、静岡県立大学 客員教授)
○代表研究者:中山 勉(静岡県立大学 食品栄養科学部 学部長)

研究開発のねらい

 機能性食品の開発は、全国各地で行われているが、機能性物質の体内での動態や代謝経路などは、解明されていない部分が多く、また、植物の栽培や食品の加工段階で光が酵素に与える影響など、光の作用についても、科学的に証明されていないものが多い。
 このようなことから、光技術を活用して、効果的、効率的に機能性成分を生成、摂取する方法を確立するとともに、植物内や体内でどのような代謝現象が起きているのかを解明することにより、おいしく安全な新飲料などの製造方法を開発し、健康増進に貢献する。

背景

 静岡県では、機能性食品産業などの集積を図るフーズ・サイエンスヒルズ、光技術の産業応用を図るフォトンバレー、先端健康産業集積を目指すファルマバレーの研究成果を融合し、次世代の新産業の創出を目指している。
 フーズ・サイエンスヒルズプロジェクトでは、抗ストレスや生活習慣病予防のための機能性物質の探索と食品素材への応用やストレス測定機器などの開発を進めてきた。フォトンバレープロジェクトでは、レーザー、LEDの産業応用技術や、光検出技術を活用した、動物用PET装置や、光制御による植物栽培のノウハウなど、光・バイオ技術を融合した研究を進めてきた。これらの研究成果を集結し、既存の食品産業や化成品産業の活性化につながる科学的なエビデンスを創出し、機能性が高く、誰にも飲みやすい世界市場を視野に入れた世界を結ぶ新世代茶飲料と素材の開発をする。

研究開発テーマ

○テーマ1「光技術を活用した機能性成分の体内挙動の解明に関する基盤研究」
○テーマ2「光とバイオを融合した機能性成分の増幅や効率的生産方法の開発に関する研究」
○テーマ3「食薬融合技術によるおいしく安全な茶飲料と素材の開発に関する研究」

○中核機関:(財)しずおか産業創造機構
○行政担当部署:静岡県産業部商工業局技術振興室
○コア研究室 :静岡県工業技術研究所