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開発を終了した課題の評価

課題名 「粒子界面構造制御による燃料電池低温作動セル」
所有者 野城 清、株式会社 ホソカワ粉体技術研究所
研究者 大阪大学接合科学研究所 教授 内藤 牧男
委託企業 株式会社 ホソカワ粉体技術研究所
開発費 約1億6000万円
開発期間 平成17年3月~平成20年3月
評価  本新技術は、固体酸化物型燃料電池(SOFC)セルの空気極材料として検討されてきたセラミック材料について、加圧力と剪断力を原理とする粒子界面構造制御技術を用いた製造方法を適用して低温合成を可能にするものである。
 SOFCとして有力視される材料は、電解質がジルコニア系セラミック材料(YSZ)、空気極がLSM(ランタンストロンチウムマンガナイト)、燃料極がNi-YSZサーメットなどで構成された全固体式のものである。従来のSOFCは作動温度が800℃以上と高く、耐久性、作動性、コストの観点から実用化が困難となっていたため、作動温度を下げる努力が各方面で行われてきた。また、一方で、700℃以下の作動温度でセルの内部抵抗が増大し、発電性能が急激に低下することが問題となっていた。
 本新技術は、素原料粒子に機械的に加圧力、剪断力を加えてメカノケミカルな界面反応を起こし、ナノ微細化・多孔構造の最適化を図ることにより、従来のような高温での熱処理を必要としない低温合成プロセスで、高活性な単相セラミック材料を製造する手法を実現した。これにより空気極材料の量産プロセスが確立された。
 また、燃料極と電解質の共焼結・連続製造を開発し、燃料電池の製造コストを大幅に低減した。空気極にLSCF(ランタンストロンチウムコバルト鉄)を用いた面積100cm2のセルについて評価した結果、作動温度700℃において期待された出力特性が得られることを確認した。
 本新技術は、今後長期安定性の確認を行った上で、SOFCの実用化に広く適用されることが期待される。
評価者 独創的シーズ展開事業 委託開発
 プログラムディレクター  今成 真
 プログラムオフィサー  中川 威雄、吉村 進、桐野 豊
評価日 平成20年6月4日