図1
(図1)
 DNAに損傷が生じた場合、塩基除去修復機構によって損傷が取りのぞかれる。しかし損傷が除去される前にDNAの複製が始まってしまった場合、通常のDNAポリメラーゼは損傷部位で立ち往生してしまう。(I) TLS機構では制御因子であるRad6/Rad18複合体が損傷部位付近に結合して、立ち往生したDNAポリメラーゼを取りのぞき、特殊なDNAポリメラーゼ(損傷乗り越えDNAポリメラーゼ)を呼び寄せる。この過程は複製ポリメラーゼの活性を促進する因子であるPCNAにユビキチンが付加され、分解されることが契機になる。損傷乗り越えDNAポリメラーゼは損傷部位が鋳型であってもDNA複製を行うことができるが、もととは異なる塩基を挿入してしまうことがあるので、突然変異の原因となる。この経路は出芽酵母での解析から明らかになったもので、動物細胞ではRad6/Rad18複合体に依存しない経路もある。(II) TLS機構が低下すると、損傷部位にDNA二本鎖切断が生じる。切断されたDNA末端同士を再結合させる機構が非相同末端結合である。非相同末端結合では再結合部分の塩基配列が不正確であったり、もとのパートナーとは異なるもの同士が再結合することがあるため、染色体異常の原因となる。(III) また損傷の下流で複製が再開した場合は、損傷部位近辺にギャップが生じ、相同DNA組換えによって修復される。タモキシフェンや女性ホルモンによって生じたDNA損傷は、TLS、DNA非相同末端結合や相同DNA組換えによって染色体断裂から守られている。(図中の太線は複製前のDNA鎖、細線は複製後の新生鎖を示す。)
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