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別紙3

平成20年度 採択研究課題の概要

※研究課題の並びは、応募受付順です。

環境・エネルギー分野 研究領域1【領域特定型】
「気候変動の適応又は緩和に資する研究」

研究課題名 気候変動に対する水分野の適応策立案・実施支援システムの構築 研究期間 5年間
研究代表者名
(所属機関・役職)
沖 大幹(東京大学 生産技術研究所 教授)
国内共同研究機関 東京大学、京都大学、国立環境研究所、農業環境技術研究所、東北大学
相手国名 タイ 相手国
研究機関
カセサート大学、王立灌漑局、タイ気象局
研究課題の概要
 グローバル社会の持続可能な開発を維持するため、途上国における水分野の適応策立案・実施支援システムの構築を行う。具体的には、水災害リスク評価、気候変動や土地利用変化に伴う水循環変動の継続的監視のための観測の整備強化、水災害予測・統合的水資源管理支援のための人間活動も考慮した水循環・水資源モデルの開発、そして観測とモデルを統合した水循環情報統合システムの構築を目指す。

研究課題名 海面上昇に対するツバル国の生態工学的維持 研究期間 5年間
研究代表者名
(所属機関・役職)
茅根 創(東京大学 大学院理学系研究科 教授)
国内共同研究機関 国立環境研究所、茨城大学、国土技術政策総合研究所
相手国名 ツバル 相手国
研究機関
ツバル国天然資源環境省環境局、太平洋島嶼応用地球科学委員会、南太平洋大学
研究課題の概要
 フナフチ環礁において、生態、リモートセンシング、海岸工学、地学調査を行って、サンゴと有孔虫による砂の生産、運搬(沿岸漂砂)、堆積速度を見積もり、「ハビタット・砂収支地図」をまとめる。同地図上で、人為活動による生産量の減少、運搬・堆積が阻害されている海岸を特定して、生態系の修復や養浜、運搬・堆積過程の人為的補助(堤防等を含む)によって、砂の堆積量がどのように促進されるかを、現状と海面上昇後のツバルについて予測・評価して、海岸侵食対策や海岸管理計画の策定を支援するとともに、モニタリングの体制を構築する。さらに生態系劣化により砂の生産の場でありながらその低下が著しいサイトを特定し、サンゴと有孔虫の移植・増殖による砂生産の再生と長期的な島の維持を図る。

研究課題名 サトウキビ廃棄物からのエタノール生産研究 研究期間 3年間
研究代表者名
(所属機関・役職)
坂西 欣也(独立行政法人 産業技術総合研究所 バイオマス研究センター センター長)
国内共同研究機関 なし
相手国名 ブラジル 相手国
研究機関
リオデジャネイロ連邦大学、サンタカタリーナ連邦大学
研究課題の概要
 バガスなどのサトウキビ産業から発生する非食用バイオマス資源を糖化して燃料用エタノールを生産するために、産業技術総合研究所が持つ微粉砕を中心とした前処理技術の適用化研究を行うとともに、ブラジルで開発されている糖化酵素の利用を中心とする糖化技術の研究開発を行う。また、効率的なエタノール発酵微生物の開発を行うとともに、バガス等に多量に存在するキシロースの発酵技術についての研究開発を行う。開発された技術に基づいてプロセス設計を行い、温室効果ガス削減効果などの解析、評価を実施する。

研究課題名 インドネシアの泥炭における火災と炭素管理 研究期間 5年間
研究代表者名
(所属機関・役職)
大崎 満(北海道大学 大学院農学研究院 教授)
国内共同研究機関 独立行政法人 宇宙航空研究開発機構、東京大学、愛媛大学
相手国名 インドネシア 相手国
研究機関
インドネシア研究技術省、パランカラヤ大学、インドネシア科学研究院、インドネシア国家標準局、インドネシア国立航空宇宙研究所、ボゴール農科大学
研究課題の概要
 インドネシアの熱帯泥炭には多量の炭素が蓄積されているが、最近開発が急速に進み、日本の年間排出量に相当するほどの膨大な量の二酸化炭素の放出源となりつつある。本研究は、インドネシアの熱帯泥炭地を対象として、(1)火災検知・制御システム、(2)炭素量評価システム、(3)炭素管理システム、(4)教育・実習システムより構成される統合的炭素管理システムを構築し、気候変動緩和への貢献を目指す。

環境・エネルギー分野 研究領域2【領域非特定型】
「地球規模の環境課題の解決に資する研究」

研究課題名 熱帯地域に適した水再利用技術の研究開発 研究期間 5年間
研究代表者名
(所属機関・役職)
山本 和夫(東京大学 環境安全研究センター 教授)
国内共同研究機関 東京大学、東北大学、立命館大学、早稲田大学
相手国名 タイ 相手国
研究機関
タイ国環境研究研修センター、 チュラロンコン大学、カセサート大学
研究課題の概要
 熱帯地域に適した水再利用技術として、省エネルギー型個別循環水再生利用技術と維持管理システムの開発、工場排水中のバイオマス廃棄物或いは太陽光を利用したエネルギー自立型あるいは資源生産型水再生利用技術開発、地域コミュニティーにおける水質情報プラットフォームの整備と、分散型水循環システムの構築のための雨水-地下水管理方法の提示、再利用水の健康リスク評価とそのためのモニタリング手法の開発を行う。

研究課題名 熱帯林の生物多様性保全および野生生物と人間との共生 研究期間 5年間
研究代表者名
(所属機関・役職)
山極 壽一(京都大学 大学院理学研究科 教授)
国内共同研究機関 京都大学、山口大学、中部学院大学
相手国名 ガボン 相手国
研究機関
ガボン共和国科学技術開発省熱帯生態研究所
研究課題の概要
 近年の開発に伴う熱帯林地域の生物多様性の急激な低下を阻止するためにキーストーン種やアンブレラ種のモニタリングを実施して季節による動態を把握し、生態系の保全を図るとともに、エコ・ツーリズムや環境教育などの自然資源の持続的利用による地域振興、それにともなう野生動物と人間との安全な接触と共生のための対策を検討する。

研究課題名 ナイル流域における食糧・燃料の持続的生産 研究期間 5年間
研究代表者名
(所属機関・役職)
佐藤 政良(筑波大学 大学院生命環境科学研究科 教授)
国内共同研究機関 鳥取大学、三重大学
相手国名 エジプト 相手国
研究機関
カイロ大学、国立水資源研究センター水管理研究所(水資源・灌漑省)
研究課題の概要
 ナイルデルタにおける広域水収支、用水の配分管理、用水の反復利用、農地における塩類集積、農民の耕地利用・生産システム、水質汚濁の分析を行い、持続性の視点から現在のデルタがどのような状況にあるかを評価する。また、節水灌漑が導入できるための条件を検討するとともに、導入した場合に食糧・エネルギー生産の効率性を維持し、システムの持続性を確保する方法について、水管理改善、消費水量の抑制、農民水管理組織の形成、農業生産システムの改善に向けた方策を示すとともに、気象・水文・水質条件に応じた不毛地の緑化・バイオ燃料生産の可能性を示す。

防災分野 研究領域 「開発途上国のニーズを踏まえた防災科学技術」

研究課題名 ブータンヒマラヤにおける氷河湖決壊洪水に関する研究 研究期間 3年間
研究代表者名
(所属機関・役職)
西村 浩一(名古屋大学 大学院環境学研究科 教授)
国内共同研究機関 独立行政法人 海洋研究開発機構、独立行政法人 宇宙航空研究開発機構、立教大学、新潟大学、日本大学、弘前大学、広島工業大学、北海道大学、慶應義塾大学、帝京平成大学、財団法人 リモートセンシング技術センター、株式会社 地球システム科学
相手国名 ブータン 相手国
研究機関
ブータン王国経済省地質鉱山局
研究課題の概要
 近年ヒマラヤで決壊洪水が危惧されている氷河湖について、主に衛星データの解析によって氷河湖の危険度に関する客観的な再評価を行う。このデータを元に、特に調査・対策が遅れているモンデ・チュー流域を対象として現地調査を行い、決壊時のハザードマップを作成するとともに、早期警戒システムの構築に関する予備的調査を行い、現地機関に対して氷河湖決壊洪水に対する防災技術の移転を進める。

研究課題名 インドネシアにおける地震火山の総合防災策 研究期間 5年間
研究代表者名
(所属機関・役職)
佐竹 健治(東京大学 地震研究所 教授)
国内共同研究機関 東北大学、名古屋大学、京都大学、アジア防災センター
相手国名 インドネシア 相手国
研究機関
インドネシア科学研究院、バンドン工科大学、火山地質災害軽減センター、インドネシア技術評価応用庁、インドネシア研究技術省
研究課題の概要
 インドネシアにおいて(1)地震・津波の予測および(2)火山噴火の予測に関する基礎的研究、災害に強い社会を作るための(3)液状化対策などのハード的対策、(4)情報伝達手法などのソフト的対策についての研究を行う。さらに、これらを社会に還元するための(5)社会文化的背景を考慮した教育・研修手法の研究開発を実施し、政府・自治体関係者等を含む研究者コミュニティを創設して総合的な地震火山防災力の向上を図る。

研究課題名 クロアチア土砂・洪水災害軽減基本計画構築 研究期間 5年間
研究代表者名
(所属機関・役職)
丸井 英明(新潟大学 災害復興科学センター 教授)
国内共同研究機関 特定非営利活動法人 アイシーエル(ICL:国際斜面災害研究機構)/京都大学
相手国名 クロアチア 相手国
研究機関
スプリット大学、リエカ大学、ザグレブ大学
研究課題の概要
 クロアチアは、アドリア海に面した断層・褶曲帯にあり、複雑な地形・地質構造を有し、地震も多い。特に石灰岩、砂岩・頁岩互層(フリッシュ)、泥灰岩(マール)地域で、土砂災害・局所的洪水災害(フラッシュ・フラッド)が多発している。開発地域・社会的価値の高い地域を対象として、地盤構造・水文特性の科学的解明に立脚した、信頼しうる危険度判定方法を確立し、それに基づく災害軽減のための国土利用基本計画を構築する。

感染症分野 研究領域 「開発途上国のニーズを踏まえた感染症対策研究」

研究課題名 デング出血熱等に対するヒト型抗体による治療法の開発と新規薬剤候補物質の探索 研究期間 4年間
研究代表者名
(所属機関・役職)
生田 和良(大阪大学 微生物病研究所 教授)
国内共同研究機関 大阪大学、国立感染症研究所、株式会社 医学生物学研究所
相手国名 タイ 相手国
研究機関
タイ保健省・医科学局
研究課題の概要
 大阪大学 微生物病研究所とタイ保健省医科学局を中心としたグループによる国際連携型共同研究を通して、タイにおいて重要な新興・再興感染症の制圧に向け、有効な治療製剤の開発を進める。特に、デング出血熱などに対して有効なヒト型単クローン中和抗体、タイ原産微生物・ハーブに由来する抗病原体物質の開発を進め、得られた候補についてタイの臨床サイドへの実用化を目指す。

研究課題名 結核及びトリパノソーマ症の新規診断法・治療法の開発 研究期間 5年間
研究代表者名
(所属機関・役職)
鈴木 定彦(北海道大学 人獣共通感染症リサーチセンター 教授)
国内共同研究機関 鳥取大学
相手国名 ザンビア 相手国
研究機関
ザンビア保健省、ザンビア大学
研究課題の概要
 結核およびトリパノソーマ症等を研究対象として、収集した臨床分離株から得られた遺伝学的・免疫学的情報を基に新規診断法を確立・評価し、普及させる。また、新規診断法を基盤として対象感染症のサーベイランスネットワークを構築する。さらに、北海道大学の独自技術を用いて合成した病原体抑制効果を有するリード化合物から系統的に誘導体を合成して、その効果を培養レベルで評価した後、動物実験を実施し、臨床試験の足がかりとする。