平成20年度「日本-ドイツ研究交流」採択課題一覧
課題名 | 日本側研究代表者 | 課題概要 | |
---|---|---|---|
ドイツ側研究代表者 | |||
1 | シリコンナノスピントロニクス素子実現につなげる不純物量子状態の解明と制御 | 伊藤 公平 (慶應義塾大学 理工学部 教授) |
本研究交流は半導体の性質を制御するために添加されるシリコン中の不純物(ドーパント)の電荷依存現象およびスピン依存現象の解明を目的とする。 具体的には、日本側の同位体工学および電子スピン共鳴、核スピン共鳴測定技術と、ドイツ側の半導体構造の磁気共鳴およびパルス電気検知磁気共鳴(EDMR)装置の開発技術を組み合わせ、従来の電荷依存現象に加えて、ナノシリコン中の少数そして最終的には単一のドーパントのスピン依存現象を明らかにする。 日独が本研究交流を通じて相互補完的に取り組むことで、シリコン中の各種ドーパントの振る舞いの解明が進み、電気・磁気・光学素子としてのナノシリコン技術の新しい概念の創出が期待される。 |
Martin S Brandt (Technische Universitaet Muenchen Walter Schottky Institut 教授) | |||
2 | 室温で動作するスピントロニクスナノデバイスの設計:スピン分解硬X線光電子分光による磁性体界面の研究 | 猪俣 浩一郎 (物質・材料研究機構 磁性材料センター フェロー) |
本研究交流は磁性体のバルクおよび界面におけるスピン分極率の測定を可能にする、スピン分解硬X線電子分光技術の開発を目的とする。 具体的には、日本側の強磁性トンネル接合技術を用いたホイスラー合金薄膜試料作製技術とSPring8における硬X線光電子分光の技術および装置(HAXPES)と、ドイツ側のホイスラー合金バルク材料の開発技術とスピン分解分光技術を組み合わせ、スピン分解HAXPES(SPINHASXPES)装置を開発し、磁性体のバルクおよび界面の評価を行う。 日独が本研究交流を通じて相互補完的に取り組むことで、スピントロニクスデバイスの高性能化に寄与されることが期待される。 |
Claudia Felser Gerd Schönhense (Johannes Gutenberg Universitaet Mainz Institut fuer Anorganische Chemie und Analytische Chemie 教授) | |||
3 | 半導体スピントロニクスにおける揺らぎの相関 | 内海 裕洋 (東京大学 物性研究所 助教) |
本研究交流はスピントロニクス素子における揺らぎの相関にまつわる物理を研究し、将来のスピントロニクス量子情報処理素子実現へ指針を与えることを目的とする。 具体的には、日本側の非平衡系の場の理論的解析技術と、ドイツ側の縮約密度行列に関するKeldysh実時間ダイアグラム展開法を組み合わせ、スピントロニクスを舞台に非平衡Keldyshの場の理論の研究を行う。 日独が本研究交流を通じて相互補完的に取り組むことで、スピンの自由度の測定や制御を基本とした、次世代のセンサーやメモリ、また量子情報処理素子が実現されることが期待される。 |
Gerd Schoen (Universitaet Karlsruhe Institut fuer Theoretische Festkoerperphysik 教授) | |||
4 | 近接場光相互作用を介した光励起移動の探求:デバイスと評価 | 大津 元一 (東京大学 大学院工学系研究科 教授) |
本研究交流はナノ領域での近接場光相互作用の理解をさらに深め、光励起移動の詳細解明を目的とする。 具体的には、日本側の近接場光相互作用を介した光励起移動の理論ならびにデバイス・材料作製技術と、ドイツ側のナノ領域での光物質相互作用に関する素過程の理論および超高速分光分析に代表される分析技術を組み合わせ、ナノ領域における光励起移動の理解をさらに深めるとともに、光励起移動の素過程を実験的に明らかにする。 日独が本研究交流を通じて相互補完的に取り組むことで、光デバイスや光システムの微細化や機能化などの革新に結び付き、ひいてはさまざまな産業並びに社会に貢献することが期待される。 |
Christoph Lienau (Carl von Ossietzky Universitaet Oldenburg Institut fuer Physik 教授) | |||
5 | 原子操作により形成したナノ構造による半導体表面における量子コヒーレンス現象の走査トンネル分光法による研究 | 蟹澤 聖 (NTT 物性科学基礎研究所 量子電子物性研究部 主任研究員) |
本研究交流は原子精度のナノ構造制御技術による新しい量子構造に関わる物性研究を半導体で実現することを目的とする。 具体的には、日本側のⅢ-Ⅴ族化合物半導体材料の分子線エピタキシャル成長(MBE)技術とそれら材料の低温走査トンネル分光法(STS)による評価に於ける専門知識と、ドイツ側の低温STMを用いた原子マニピュレーションと、金属上で金属原子を1つずつ組み合わせて作製したナノ構造のSTS評価に於ける専門知識を組み合わせ、半導体における量子コヒーレンス現象の理解と応用を実現する。 日独が本研究交流を通じて相互補完的に取り組むことで、量子情報技術の発展において新しいタイプの半導体機能への道を拓くことが期待される。 |
Stefan Fölsch (Paul-Drude-Institut fuer Festkoerperelectronik 主任研究員) | |||
6 | 固体電解質原子スイッチ動作における電荷移動と交換に関する研究 | 長谷川 剛 (物質・材料研究機構 原子エレクトロニクスグループ グループリーダー) |
本研究交流は固体電解質中における金属フィラメントの形成と消滅により動作する固体電解質原子スイッチについて、その動作メカニズムの詳細を原子スケールで解明することを目的とする。 具体的には、日本側の硫化物系薄膜作成技術、電子線描画法を用いた素子構造作製技術、SNOM/STMなどのスイッチング過程解析手法と、ドイツ側のアモルファス系薄膜や電極構造の作成技術、電気化学計測と分子動力学法を用いたモデリング手法を組み合わせ、スイッチング過程における様々な現象の相関関係を明らかにし、固体電解質原子スイッチの物理動作限界や、その材料依存性などの重要なデバイス設計指針を得る。 日独が本研究交流を通じて相互補完的に取り組むことで、次世代デバイス候補のひとつである固体電解質原子スイッチの実用化に貢献することが期待される。 |
Rainer Waser (Rheinisch-Westfaellische Technische Hochshule Aachen IWE2 教授) | |||
7 | 次世代情報通信システムのためのナノワイヤ/CMOS異種技術集積化の研究 | 和保 孝夫 (上智大学 理工学部 教授) |
本研究交流は高機能ナノワイヤ集積回路を実現し、CMOS大規模集積回路上に集積化させ、アナログ/デジタル(A/D)・インターフェイスを実現するための基板を構築することを目的とする。 具体的には、日本側の高電子移動度トランジスタ(HEMT)や共鳴トンネルダイオード(RTD)のような最先端化合物半導体デバイスを用いた回路応用技術と、ドイツ側のMBE法やMOVPE法で作製したⅢ-Ⅴ族化合物半導体を用いた最先端電子デバイス、光デバイスに関する知見を組み合わせ、InAsナノワイヤを用いたMISFET技術をSi CMOS技術プラットフォームに融合させる。 日独が本研究交流を通じて相互補完的に取り組むことで、次世代情報通信システム開発へのブレークスルーをもたらし、新規産業分野を開拓することが期待される。 |
Werner Prost (Universitaet Duisburg-Essen Fakutaet fuer Ingenieurwissenschaften 研究員) | |||
8 | 銅酸化物超伝導体中の固有ジョセフソン接合を用いた原子スケールのテラヘルツ・エレクトロニクス | WANG Huabing (物質・材料研究機構 ナノシステム機能センター 主幹研究員) |
本研究交流はテラヘルツ放射の機構を解明し、それをもとに出力の最大化を図ることを目的とする。 具体的には、日本側の固有ジョセフソン接合回路を1つの単結晶に微細加工する技術と、ドイツ側の超伝導体回路パターンにおける電流・電解分布のイメージング技術を組み合わせ、実用領域(~mW)の高強度テラヘルツ波光源を、固有ジョセフソン接合列を用いて実現する。 日独が本研究交流を通じて相互補完的に取り組むことで、非破壊検査・医療診断・分子などの分光分析に新規な学術・技術分野が拓かれることが期待される。 |
Reinhold Kleiner (Eberhard Karls Universitaet Tuebingen, Fakultaet fuer Physik 教授) |