JSTトッププレス一覧科学技術振興機構報 第551号資料2 > 研究領域:「次世代エレクトロニクスデバイスの創出に資する革新材料・プロセス研究」
資料2

平成20年度 戦略的創造研究推進事業(CREST・さきがけ)
新規採択研究代表者・研究者および研究課題概要(第2期)


【CREST】
戦略目標:「新原理・新機能・新構造デバイス実現のための材料開拓とナノプロセス開発」
研究領域:「次世代エレクトロニクスデバイスの創出に資する革新材料・プロセス研究」
研究総括:渡辺 久恒((株)半導体先端テクノロジーズ 代表取締役社長)

氏名 所属機関 役職 研究課題名 研究課題概要
遠藤 哲郎 東北大学学際科学国際高等研究センター 教授 縦型ボディーチャネルMOSFETとその集積プロセスの開発  本研究では、デバイスのボディー領域全体を電流駆動領域とする新概念の縦型構造トランジスタのデバイス技術に加えて、その回路設計・材料・プロセス技術までを一貫して開発します。これにより、平面型MOSFETと比較して、駆動電流特性、リーク電流特性、集積密度を大幅に向上させた半導体LSIの新しいユニバーサル技術プラットフォームを提供することを目指します。
木下 博雄 兵庫県立大学高度産業科学技術研究所 教授 コヒーレントEUV光を用いた極微パタン構造計測技術の開発  X線回折顕微法をEUV領域に展開し、より高精度な露光パタンの寸法計測ならびに欠陥観察が可能な計測技術の確立を図ります。スタンドアロン型の極短パルスレーザの高次高調波レーザからのコヒーレントEUV光源とEUVスキャトロメトリー顕微鏡との融合により、サブナノ精度のパタン寸法計測および露光用マスク欠陥観察技術を構築します。
鳥海 明 東京大学大学院工学系研究科 教授 Ge High-k CMOSに向けた固相界面の理解と制御技術の開発  次世代微細化CMOSの駆動電流向上と低電圧動作を可能にする、電子、正孔ともに移動度の高い半導体材料であるGeをベースにしたデバイス構造が期待されています。しかしながら、Ge系材料に対するゲート絶縁膜および電極界面は熱的、電気的安定性が悪く、その原因究明と対策が求められています。本研究課題ではGe High-k CMOS形成に向けて、ゲート絶縁膜および電極界面の物性の精緻な解析と革新的な界面制御技術の開発を行います。
前川 禎通 東北大学金属材料研究所 教授 数値シミュレーションによる新材料・新機能の開発  次世代集積化デバイスには電流のみならずスピン流も活用することが期待されています。本研究課題では、スピン流の効果も加味した一般化方程式による数値シミュレーション技術を構築し、電流とスピン流の熱的性質および相互変換プロセスを明らかにし、新しいスピン流応用デバイスに適した新材料・新機能の開発に向けた探索・提案を行います。
松井 真二 兵庫県立大学高度産業科学技術研究所 教授 超高速ナノインプリントリソグラフィ技術のプロセス科学と制御技術の開発  次世代微細加工技術としてナノインプリント技術が注目されていますが、集積回路応用にはスループット、CDなどの課題があります。その解決には、ナノインプリントにおける材料・プロセスの科学的な解明と画期的な手法の提案が求められています。本研究課題では、実用性の高いナノインプリントリソグラフィに向けて材料・プロセス技術の開発を行います。
(五十音順に掲載)

<総評> 研究総括:渡辺 久恒((株)半導体先端テクノロジーズ 代表取締役社長)

 本プロジェクトの戦略目標は次世代エレクトロニクスにおける材料・デバイス・プロセスに関するテーマを幅広く想定しております。シリコン集積回路の性能向上は素子の微細化や動作周波数の向上を中心に進められてきましたが、近年これらの限界が顕在化しつつあります。一方で環境対策の一層の強化が望まれる中、さらなる微細化のほか新デバイスの導入による超低消費電力化や、新しいデバイスアーキテクチャの採用による高次の付加価値の付与なども要請されております。
 当研究領域では、限界に直面している課題を材料・プロセス科学の基礎に戻って徹底的に理解し新たなコンセプトを創出しようとする提案(Discovery Science)、あるいは画期的な材料・プロセス、デバイスの採用で従来技術の置き換えを追求する提案(Disruptive Technology)、さらに、異分野材料の物性や原理の異なるデバイスを半導体デバイスと融合させて上記課題を克服しようとする提案(Fusion Device)を募集しています。なお、提案における研究の遂行に関しては、産学連携を通して積極的に実用化に挑戦しようとする姿勢も重要視いたしております。
 今回の応募件数は33件でありました。上記方針に対して、非常にスペクトラムの広い提案をいただきました。大変興味深く科学的に高度なご提案が多いなかで選考審査には大きな困難を伴いましたが、最終的に次の5件、縦型MOS構造の集積化プロセス技術の開発、コヒーレントEUVを用いたパタン計測技術の開発、Ge High-k CMOSに向けた固相界面の制御技術の開発、数値シミュレーションによる新材料・新機能の開発、高速ナノインプリントリソグラフィのプロセス制御技術の開発、のテーマを採択いたしました。今回は、新材料界面の科学的理解やシミュレーションモデルによる、新材料・プロセス技術の開拓、革新的なデバイス技術や計測技術の創出を目指したご提案を優先的に選択させていただきました。来年度も基本方針は同じにするつもりですが、シリコンLSIの発展がいよいよ困難化、多様化するなか、新材料・新プロセスの革新的コンセプトの開拓や独創性溢れる破壊的技術のご提案を期待しております。