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資料2

平成20年度 戦略的創造研究推進事業(CREST・さきがけ)
新規採択研究代表者・研究者および研究課題概要(第2期)


【CREST】
戦略目標:「花粉症をはじめとするアレルギー性疾患・自己免疫疾患等を克服する免疫制御療法の開発」
研究領域:「アレルギー疾患・自己免疫疾患などの発症機構と治療技術」
研究総括:菅村 和夫(東北大学大学院 医学系研究科 教授)

氏名 所属機関 役職 研究課題名 研究課題概要
岩倉 洋一郎 東京大学医科学研究所ヒト疾患モデル研究センター センター長、教授 IL−17ファミリー分子、C型レクチンを標的とした自己免疫・アレルギー疾患の発症機構の解明と治療薬の開発  感染によりTLRやC型レクチンなどの病原体認識機構が活性化されると、種々のサイトカインが産生され、免疫系を活性化して病原体を排除します。しかし、この機構の過剰な活性化は、アレルギーや自己免疫も引き起こします。本研究では、関節リウマチなどの自己免疫疾患やアレルギー、感染症などに関与すると考えられるDectin−1/2やDCIRなどのC型レクチン、IL−17A/Fなどのサイトカインの機能を解析し、これらの疾病に対する治療法の手がかりを得ることを目指します。
樗木 俊聡 秋田大学医学部 教授 樹状細胞制御に基づく粘膜免疫疾患の克服  粘膜組織は抗原の主たる侵入の場であり、固有の樹状細胞(DC)群によって構成されるDCシステムによるユニークな免疫応答・免疫寛容誘導機構が存在します。本研究課題では、粘膜DCシステムによる恒常性の維持機構を明らかにし、同機構の破綻による粘膜免疫疾患発症メカニズムの解明へ繋げます。これらの成果に基づき、DCシステムを介した免疫疾患の予防・治療技術の開発を目指します。
高井 俊行 東北大学加齢医学研究所 教授 受容体制御による新しい免疫療法の構築  IgGおよびMHCクラスIの抑制性受容体であるFcgRIIBとLILRBなど免疫制御性受容体を標的としたアレルギー、自己免疫疾患の新たな治療法を構築します。γグロブリン大量静注療法のポリッシュアップ、アゴニスティックリガンドなどの開発を通じて自己寛容力をエンハンスし、さらに免疫系ヒト化マウスNOGにおいてこれら前臨床研究を成熟させ、ヒト免疫系の制御に活用できるレベルにまで展開します。
長田 重一 京都大学大学院医学研究科 教授 アポトーシス細胞の貪食・分解とその異常  生体内では毎日、数十億の細胞がアポトーシスにより死滅し、マクロファージによって貪食・分解されます。また、毎日100億近く産生される赤血球の分化段階で核は放出されマクロファージに貪食されます。この過程の欠陥は、自己免疫疾患や貧血・リウマチ性関節炎をひき起こすと考えられます。本研究は、死細胞の貪食やDNAの分解異常がどのようにして自己免疫疾患や関節リウマチを発症させるかを明らかにしようとするものです。
平野 俊夫 大阪大学大学院生命機能研究科 教授 臓器特異的自己免疫疾患・炎症疾患の制御機構の理解とその人為的制御  自己免疫疾患や慢性炎症性疾患の発症機序として、我々は、非免疫系細胞がサイトカイン依存的に免疫系細胞の活性化を増幅させて悪循環を誘導している機構が存在する事を見いだしました。本研究では、1.本悪循環に関与する、更なる因子の同定、2.悪循環の標的分子の同定、3.臓器特異的に悪循環を抑制する方法の開発――を行います。本研究により、自己免疫疾患、アレルギーの治療、さらに、癌治療、効率的なワクチン開発の基盤技術確立を目指します。
福井 宣規 九州大学生体防御医学研究所 教授 細胞骨格制御シグナルを標的とした免疫難病治療の新戦略  免疫応答の根幹を為す種々の細胞高次機能は、いずれも細胞骨格の再構築により巧妙に制御されています。本研究では、細胞骨格制御に重要な役割を演じるCDMファミリー分子群の機能・構造・シグナル伝達機構を包括的に解析し、その成果に立脚して免疫応答を効果的に抑制し得る低分子化合物を同定します。この成果は、自己免疫疾患や移植片拒絶といった免疫難病の画期的な治療法の開発につながるものと期待されます。
吉村 昭彦 慶應義塾大学医学部 教授 細胞内シグナル制御による免疫リプログラミング  ヘルパーT細胞は免疫の司令塔と言われ、正のエフェクターT細胞と負の抑制性T細胞に分化し、免疫応答のバランスを決定します。その制御破綻がアレルギーや自己免疫疾患に直結します。我々はT細胞分化の方向性を決定するSOCS遺伝子群を発見しました。本研究においてさらにT細胞分化を維持する分子機構を解明し、エフェクターを抑制型T細胞へ転換する、すなわち正を負にリプログラムする方法論の開発と免疫疾患治療への応用を目指します。
(五十音順に掲載)

<総評> 研究総括:菅村 和夫(東北大学大学院 医学系研究科 教授)

 本研究領域は、アレルギー疾患や自己免疫疾患を中心とするヒトの免疫疾患を予防・診断・治療することを目的に、免疫システムを適正に機能させる基盤技術の構築を目指す研究を対象としています。
 アレルギー疾患や自己免疫疾患には国民のQOLを低下させ、日常生活に多大な影響を与えるものから重篤な場合には死に至るものまであり、これら疾患の克服には、これまでの分子、細胞、組織レベルにおける免疫制御機構に関する理解を個体レベルの高次調節免疫ネットワークシステムの理解へと発展させなければなりません。このような戦略目標の下に本年度から本研究領域が公募されました。
 本領域の公募に対し、47件の提案がありました。研究課題を大別すると、自然免疫系の構築機構、制御性細胞やサイトカインによる適応免疫系の調節機構、胸腺の形成と免疫寛容機構、免疫系細胞の動態制御、粘膜免疫系の制御技術の開発、ヒト免疫疾患ならびに疾患動物モデルの病態制御機構、感染・がん制御免疫機構など、その多くは免疫疾患制御の基礎的研究から治療法開発までを視野に入れた極めてレベルの高い内容でした。
 これらの中から、領域アドバイザーの協力を得て先ず始めに書類選考を行い、種別Ⅰおよび種別Ⅱをそれぞれ7課題選び、面接選考を行いました。なお本領域は「免疫制御療法の開発」を謳っていることから、領域アドバイザーには基礎から臨床応用までの幅広い研究者に参加していただきました。利害関係者が審査に関与しないよう十分配慮して選考を行った結果、種別Ⅰから3課題、種別Ⅱから4課題を最終的に採択するに至りました。採択課題は、いずれも本領域において独創的且つ優れた研究実績を基盤として、革新的な治療法の開発に結びつくような内容となっています。具体的には、アポトーシス細胞の貪食・分解の異常と免疫疾患、サイトカイン機能異常と免疫疾患、細胞骨格制御を標的とする免疫疾患制御、免疫細胞リプログラミングによる疾患制御、免疫系の正と負の制御機構と免疫疾患、粘膜免疫制御と疾患、などです。いずれの課題でも研究代表者が世界をリードしてきた研究成果を基に計画されおり、今後の本領域の発展に大きく寄与するものと考えます。
 本年度不採択であった課題の中にも本領域の発展に大きく貢献することが期待されるものが見受けられました。来年度も可能な限り継続して公募する予定ですので、革新的発展に繋がる課題提案を期待いたします。