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別紙

平成20年度「日本-デンマーク研究交流」採択課題一覧

課題名 日本側
研究代表者
課題概要
デンマーク側
研究代表者
2型糖尿病の人種的差異 門脇 孝
(東京大学 医学部附属病院 教授)
 本研究は、インスリン分泌とインスリン感受性における人種的な違いを詳細に検討することで2型糖尿病の発症に関する新たな知見を得ることを目的とする。
 具体的には、日本側のこれまでの2型糖尿病発症の分子機序とその感受性遺伝子を解明する発生工学的手法から得られた知見と、デンマーク側の全生体内代謝機能に関する従来の疫学および遺伝疫学に基づいた分子生物学的手法からの知見をまとめ、日本とデンマークに在住する健常者および糖尿病患者を対象とした臨床試験を実施する。ここから人種的因子を考慮した糖代謝を解析するための新たなコンピュータモデルを開発し、これによりグルコース摂取後のインスリンおよびグルコースの動的変化を明らかにし、さらに生活習慣および遺伝因子の相対的な影響度を検討する。
 本共同研究で日本-デンマークが交流を通じて相互補完的に取り組むことで、人種的因子と糖尿病発症・耐糖能の相関が明らかになることにより、今後世界各国のさまざまな人種に応じた新薬開発の迅速化に寄与することが期待される。
Bente Klarlund Petersen

(University of Copenhagen Department of Infectious Diseases and CMRC 教授)
刺激追求型人格特性におけるドパミン合成能の役割 熊倉 嘉貴
(東京大学 先端科学技術研究センター 特任助教)
 本研究は、神経伝達物質ドパミンと精神神経機能異常との関連を解明することを目的とする。
 具体的には、ポジトロン断層撮像法(PET)による画像データから、脳内ドパミン合成能やドパミン代謝産物流出速度やドパミン貯蔵能といった機能指標を正確でかつ理解しやすい定量画像にできる日本側の解析技術と、病的賭博といった刺激を追求する人格特性に関する知見、および充実したPET設備を持つデンマーク側の研究環境を統合し、病的賭博が精神疾患と類似のドパミン系異常を伴うのか否かを判定する。
 本共同研究で日本-デンマークが交流を通じて相互補完的に取り組むことで、高度刺激追求型の人格特性を持つ人々のドパミン機能の異常の仕組みを解明し、薬物などによる治療への進展につながることが期待される。
Albert Gjedde

(Aarhus UniversityPET Center 教授)
筋・筋膜性疼痛のトランスレーショナルリサーチ
―動物における基礎研究からヒトにおける実験的および臨床研究―
水村 和枝
(名古屋大学 環境医学研究所 教授)
 本研究は、多くの人が苦しんでいる筋・筋膜性疼痛症候群のトリガーポイント(痛みの原因となるポイント)の発生・維持機構の解明を目的とする。
 具体的には、筋・筋膜性疼痛のトリガーポイントの機構解明に向け、日本側は動物モデルを作成して研究を行い、デンマーク側はヒトにおける実験的研究、さらには患者を対象とした研究へと展開し、得られた知見を再度動物実験へと戻すというトランスレーショナルなアプローチを両国の相互補完的な取り組みによって進める。
 本研究交流により、現在多くの製薬会社にとって重要課題である、慢性の筋骨格系の痛みに関する治療法の進展に貢献することが期待される。
Thomas Graven-Nielsen

(Aalborg University, Center for Sensory-Motor Interaction 教授)