JSTトッププレス一覧科学技術振興機構報 第547号 > 用語解説
<用語解説>

注1)ボース・アインシュタイン凝縮(BEC)
 複数の粒子が同じ1粒子状態をとることができる「ボース粒子」を絶対零度付近まで冷却すると、系を構成するボース粒子のほとんどが同じ1粒子状態に存在するようになります。この状態をBECと呼び、全く同じ状態を取るようになったマクロ(巨視的)な数の粒子の波が重なりあって、あたかも1つの巨大な波のように振る舞う特異な現象として知られています。この現象は、多くの場合、超伝導や超流動を引き起こすものとなっています。

注2)ボース・ノヴァ
 BEC状態になったボース粒子が、引力の相互作用によってさらに収縮していくと、密度が高い中心部分の原子が3体衝突によって失われ、やがて内部の圧力に耐えられなくなり爆発的に原子が広がる現象のことです。

注3)3体衝突
 3つの粒子が同時に衝突する過程です。3粒子分のパラメーターがあるため、2体の衝突時に比べて衝突前後の状態の記述が複雑になります。また、この過程でエネルギーや粒子などの損失などを起こすことがあります。

注4)レーザー冷却
 気体原子に原子の共鳴に近いレーザー光を当てると、原子がその光を吸収して、速度が変わります。温度とは原子や分子のランダムな運動エネルギーを表す量で、温度が高いと運動エネルギーが大きく、原子や分子が激しく動き回っていることを示し、逆に温度が低いと運動エネルギーが小さく、原子や分子の動きが遅いことを示しています。このことを利用して、レーザー光の波長などを高精度に制御して原子に照射し、その速度を遅くしていくことによって温度を下げることが可能です。さらに蒸発冷却などの技術も併用することで、原子をほとんど停まった状態、10-8Kという超低温に冷却することができます。

注5)s波衝突
 s波対称性という空間対称性を持つ衝突。
 s波対称性は中心対称性で、気体密度の形が球形になります。このs波対称性やd波対称性(注6参照)などの対称性は、超流動や超伝導の性質にも影響を与えます。

注6)d波対称性
 軌道角運動量がh/π(hはプランク定数)の場合に波動関数が示す空間対称性で、気体密度の形が4葉のクローバのようになります。酸化物高温超伝導体の電子対の対称性も d波対称性として知られています。