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科学技術振興機構報 第528号

平成20年6月20日

東京都千代田区四番町5番地3
科学技術振興機構(JST)
Tel:03-5214-8404(広報課)
URL http://www.jst.go.jp

従来にない多くの特徴を持つユニークな静電エンコーダを開発

(JST大学発ベンチャー創出推進により企業を設立)

 JST(理事長 北澤 宏一)は産学連携事業の一環として、大学・公的研究機関などの研究成果をもとにした起業のための研究開発を推進しています。
 平成17年度に開始した研究開発課題「静電アクチュエータを用いたアクアリウム・ロボットの開発」では、静電アクチュエータ注1)の研究から生まれた静電エンコーダ注2)を開発しました。また、これらの成果をもとに平成20年4月28日に「株式会社 青電舎」を設立しました。
 本研究開発チームは、軽量、しなやかなど多くの特徴を持つ静電アクチュエータの開発過程で、静電アクチュエータの技術が距離センサーとしても利用できることを発見しました。そこで、第1号製品として、センサーとして使える静電エンコーダを開発しました。
 この静電エンコーダは、土台となるスケール部分とスケール上で移動するヘッド部分が薄いフィルムでできているため、厚さが約0.2mmと薄く、回転シャフトなどに円周状に配置することが可能です。またヘッド部分に信号線を接続する必要がなく、断線する危険性がなくなるとともに、ケーブル処理が不要になるなど他のエンコーダにはない大きな特徴をもっています。
 株式会社 青電舎は今後、このユニークな静電エンコーダをもとにリニア型と回転型エンコーダの商品化を進めていきます。
 今回の「株式会社 青電舎」設立により、プレベンチャー企業および大学発ベンチャー創出推進によって設立したベンチャー企業数は70社となりました。

今回の企業の設立は、以下の事業の研究開発成果によるものです。
 独創的シーズ展開事業 大学発ベンチャー創出推進
研究開発課題 「静電アクチュエータを用いたアクアリウム・ロボットの開発」
開発代表者 樋口 俊郎(東京大学 教授)
起業家 権藤 雅彦
研究開発期間 平成17〜19年
 独創的シーズ展開事業 大学発ベンチャー創出推進では、大学・公的研究機関などの研究成果をもとにした起業および事業展開に必要な研究開発を推進することにより、イノベーションの原動力となるような強い成長力を有する大学発ベンチャーが創出され、これを通じて大学などの研究成果の社会・経済への還元を推進することを目的としています。

<開発の背景>

 移動変位を測定するセンサーはエンコーダと呼ばれ、工作機械などに多数使用されています。特に最近の進展が目覚しいリニアモーター位置決め装置においては必須のセンサーとなっています。従来式のセンサーでは、ヘッド部分が信号線につながれている光学式エンコーダが使われていますが、ヘッド部分に信号線がつながれていないエンコーダの開発が望まれています。
 本研究開発では、静電アクチュエータの駆動電圧をゼロにして外部から移動子フィルムを動かしたところ、同アクチュエータが高精度で移動変位をキャッチするセンサーになることを発見しました。(図1)

図1

図1.アクチュエータとエンコーダの比較

<研究開発の内容>

 本研究開発では、小型の信号処理回路と高速表示カウンターを製作してエンコーダとともにリニアモーターに組み込みました。応答性や消費電力、取り付け、耐環境特性などの実証試験を行い、測定分解能がμmオーダーのエンコーダを開発しました。この静電エンコーダは、その固定子と移動子がフィルム状であるために柔軟性があるうえ、厚さが0.2mmと薄いので、今まで搭載できなかったような薄い隙間に設置することが可能になりました。(図2)

図2

図2.柔軟性のある静電エンコーダ

<今後の事業展開>

 株式会社 青電舎は今後、ヘッド部分に信号線が不要な特徴を生かすべく、リニアモーターへの組み込みを主な用途としたリニア型静電エンコーダの製品化を進める計画です。また、高温などに対する耐環境特性や磁束の影響を受けない、超薄型などの特徴を生かした回転モーター用の静電エンコーダを、FA用や自動車分野などを視野に入れながら開発をしていく予定です。

<原理および特徴>

 スケールとなるフィルム状の固定子電極の上に、同素材のヘッド部の移動子電極が乗った単純な構造となっています。固定子電極にはレール状の誘導電極があり、これから静電誘導の原理により移動子の櫛歯状電極にプラスとマイナスの電荷が交互に誘起されます。この電荷の分布を4相からなる固定子電極で検出し、これを信号処理回路の差動アンプで増幅して「REAL」と「IMAG」の複素数成分として取り出します(図3)。これをベクトルとして処理すると、その位相量が移動子の変位距離に相当するので、これを信号処理により細かく検出してAB2相パルスを出力します。櫛歯状電極の1周期の長さが0.8mmになっており、この間で位相が360度1回転します。
 このようにセンサーは電極のみで構成された単純なものですが、複素数成分を取り出すときに差動アンプを用いるため、外部からのノイズ信号はキャンセルされ、ノイズの影響を受けにくくなっています。また、光学式エンコーダなどと異なり、多数の電極配列で信号を検出しているため、部分的にゴミなどが混入しても全体的に平均化されて、ゴミなどの影響を受けにくい構造となっています。
 また従来の他のエンコーダと異なり、信号線は移動子からでなく固定子電極から引き出しているので、ケーブルの処理が簡単になります。

図3

図3.静電エンコーダの検出原理

<用語説明>

注1)静電アクチュエータ
 静電気の力で機械的な運動を起こす駆動源のこと。移動子と固定子にそれぞれレール状電極と櫛歯状電極を配置して、高電圧を印加すると静電気による吸引・反発力が生じて移動子を横方向にスライドさせる駆動源となっている。

注2)静電エンコーダ
 モーターなどに取り付ける位置を検出するセンサーの一つで、静電気の作用により距離を精度よく測定するセンサーの一種。一般的には光学式エンコーダが良く知られている。

<本件お問い合わせ先>

株式会社 青電舎
〒229-1131 神奈川県相模原市西橋本5−4−30
        さがみはら第2産業創造センターSIC2 404号
権藤 雅彦(ゴンドウ マサヒコ)
TEL:042-770-9588 FAX:042-770-9688 E-mail:

独立行政法人 科学技術振興機構 産学連携事業部 技術展開部 新規事業創出課
〒102-8666 東京都千代田区四番町5番地3
徳山 亜季(トクヤマ アキ)、薄井 一司(ウスイ カズシ)
TEL:03-5214-0016 FAX:03-5214-0017