資料4

選定した研究領域及び研究総括の評価

研究領域
   
1. 複雑数理モデル
2. 非平衡ダイナミクス
3. 高機能性反応場
4. アクチンフィラメント動態
研究総括
   
1. 合原 一幸    (東京大学生産技術研究所 教授)
2. 腰原 伸也 (東京工業大学大学院理工学研究科 教授)
3. 小林 修 (東京大学大学院薬学系研究科 教授)
4. 前田 雄一郎 (理化学研究所播磨研究所 主任研究員)
評価結果
1. 研究領域「複雑数理モデル」は、非線形科学、カオス工学等をもとに、世の中に実在する様々なシステムを普遍的に記述する複雑数理モデリングの基礎理論を構築し、これを個別の実在システムに適用したモデル作成を行い、これら双方の成果を相互補完的にフィードバックすることにより、普遍性を有し、かつ複雑な諸システムに適用可能な個別性を兼ね備えた複雑数理モデリング理論の体系化を目的とするものである。
 本研究領域において、複雑数理モデリングの理論構築を行うとともに、遺伝子・タンパク質ネットワークやニューラルネットワークなどの生命情報ネットワークの数理情報構造の解明、複雑系コンピューティングの理論と応用・実装技術の開発、新型感染症流行の予測と防御の研究など具体的な実在システムへの応用を図ることにより、複雑系で計算する新しい情報処理技術を確立することが期待される。これにより本研究領域は戦略目標「新しい原理による高速大容量情報処理技術の構築」に資するものと期待される。
 合原一幸氏は本研究領域に関連するカオス・複雑系科学等の先導的な研究を行ってきており、研究総括として相応しいと認められる。
2. 研究領域「非平衡ダイナミクス」は、格子構造と電子状態との強い相互作用により、光電的機能に劇的な変化を誘起する可能性を秘めた非平衡強相関材料について、原子スケールの動的構造変化の解析手法の確立、及び新規な光電的物性を有する材料探索を目的とするものである。これを実現するために、ピコ秒分子動画観測システムを構築し、原子スケールでの構造変化をミリ秒〜ピコ秒領域に亘る幅広い時間領域で観測できる動的構造観測技術の開発を目指す。
 本研究領域において、動的構造変化解析手法を確立することにより、非平衡強相関材料の基礎物性の解明を図るとともに、超高速かつ高効率の新規光デバイス実現のための光電的機能材料の創出が期待される。これにより本研究領域は戦略目標「情報処理・通信における集積・機能限界の克服実現のためのナノデバイス・材料・システムの創製」に資するものと期待される。  腰原伸也氏は本研究領域に関連する光誘起協力現象等の先導的な研究を行ってきており、研究総括として相応しいと認められる。
3. 研究領域「高機能性反応場」は、合成反応の要素である反応媒体、反応空間及び触媒を広く反応場として捉え、この反応場を制御したプロセスにより高機能性物質等の創製を目的とするものである。これを実現するために、水を中心とする有機溶媒以外の反応媒体使用、マイクロチップによる微小反応空間の活用及びナノスケールの触媒開発等を目指す。
 本研究領域において、反応場を制御したプロセスを構築することにより、新規な医薬品候補化合物あるいは高機能性物質の創出のみならず、既存の化合物を工業化規模で効率的に製造する方法論を提供することが期待される。また、高活性な固定化触媒を組み込んだ反応系の確立により、実用レベルの循環可能な製造プロセスの構築への寄与が期待される。これにより本研究領域は戦略目標「環境負荷を最大限に低減する環境保全・エネルギー高度利用の実現のためのナノ材料・システムの創製」に資するものと期待される。
小林修氏は本研究領域に関連する水中での有機合成反応等の先導的な研究を行ってきており、研究総括として相応しいと認められる。
4. 研究領域「アクチンフィラメント動態」は、筋組織を構成するアクチンフィラメント複合体を対象に、その構造解析結果を基に複合体の種々の運動パターンを算出・抽出する方向と、変異たんぱく質等の機能解析からその機能の基となるメカニズムを導き出す方向との両面から研究を遂行し、両者を熱力学的準安定状態の実測を通して関連づけるなどの新たなアプローチによって、筋収縮に係るカルシウム調節メカニズムの全貌解明を目的とするものである。
本研究領域では、心疾患の診断・治療の足がかりとなる重要な筋収縮調節メカニズムに係る知見が得られることが期待される他、たんぱく質の構造解析・動態測定技術、バイオインフォマティクス・シミュレーション技術など、たんぱく質解析に有用な技術の進展に寄与することが期待される。これにより本研究領域は戦略目標「遺伝子情報に基づくたんぱく質解析を通した技術革新」に資するものと期待される。
前田雄一郎氏は本研究領域に関連する筋収縮に関した構造解析等の先導的な研究を行ってきており、研究総括として相応しいと認められる。
評価者
新技術審議会 基礎研究部会 部会長    井上 祥平
新技術審議会 基礎研究部会 委員 岩渕 雅樹、大泊  巌、小柳 義夫、郷  通子
古賀 憲司、榊  佳之、鈴木 紘一、竹内  伸、
中西 準子、森  健一、柳田 博明、吉村  進
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This page updated on October 22, 2003

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