資料1

戦略的創造研究推進事業 総括実施型研究
(平成15年度発足)

研究領域「複雑数理モデル」研究総括

合原 一幸 氏
(東京大学生産技術研究所 教授)

■ 研究領域「複雑数理モデル」の概要
 20世紀後半以降,決定論的カオスを典型例とする非線形現象の研究が大きく進展した。そして,自然や人工を問わず,世の中に実在する複雑な非線形システムを理解するためには,分岐理論をはじめとした普遍性を追求する分野横断的基礎理論と個々の現象の個別性の本質に踏み込んだ深い洞察の双方が,重要であることが明らかになってきた。
 本研究構想では,非線形システムモデル構築とその応用に関するカオス工学や数理工学の研究をベースとして,非線形科学,生命科学,情報科学,工学および社会科学などの多くの分野と関連する「複雑数理モデル」の基礎理論およびその数理解析手法を構築する。そして,その成果を各分野へ適用して応用研究を展開するとともに,その結果をさらに基礎理論にフィードバックして「複雑数理モデル」論の体系化を目指す。具体的な応用研究に関しては,特に重要性と緊急性が高いと思われる,(1) 生命科学分野における遺伝子・タンパク質ネットワークやニューラルネットワークなどの生命情報ネットワークの動的情報処理原理,(2) 情報科学分野における複雑系コンピューティングの理論と応用・実装技術および(3) 社会システム分野における新型感染症 (たとえば,重症急性呼吸器症候群SARSなど) の流行予測・防御方法の研究に重点的に取り組む。
 本研究構想における「複雑数理モデル」の基礎研究と応用研究は,数理的方法論が有する普遍性,横断性,そして多分野への応用可能性に基づく、新しい分野横断的科学技術のひとつの具体的成功例を呈示するとともに,「複雑系で計算する」という新しい計算原理に基づく複雑系コンピューティングの研究開発を通じて,戦略目標「新しい原理による高速大容量情報処理技術の構築」に資するものと期待される。
■ 研究総括 合原一幸氏の略歴等
1. 氏名 (現職) 合原 一幸 (あいはら かずゆき)
(東京大学 生産技術研究所 教授)  49歳

2. 略歴
昭和48年 3月ラ・サール高校卒業.
昭和52年 3月東京大学工学部電気工学科卒業.
昭和57年 3月東京大学大学院工学系研究科電子工学専攻 博士課程修了 (工学博士).
昭和57年 4月日本学術振興会奨励研究員 (東京大学 工学部 計数工学科).
昭和58年 4月東京電機大学工学部電子工学科 助手.
昭和61年10月東京電機大学工学部電子工学科 専任講師.
昭和63年10月東京電機大学工学部電子工学科 助教授.
平成 5年 4月東京大学大学院工学系研究科計数工学専攻 助教授.
平成10年 4月東京大学大学院工学系研究科計数工学専攻 教授.
平成11年 4月東京大学大学院新領域創成科学研究科複雑理工学専攻 教授.
平成15年 4月東京大学大学院情報理工学系研究科数理情報学専攻 教授 (兼任).
平成15年10月東京大学生産技術研究所 教授
 (東京大学大学院新領域創成科学研究科(兼任))

 この間,北海道大学電子科学研究所客員助教授,西オーストラリア大学数学科客員教授,放送大学客員教授などを歴任するとともに,
平成元年 4月 平成14年 3月 (社) 日本電子工業振興協会 (現在,(社) 電子情報技術産業協会) 「バイオ・カオス応用技術専門委員会」委員長,
平成 8年 4月 平成12年 3月 科研費特定領域『高次脳機能のシステム的理解』「記憶の形成と保持」研究代表者,
平成 8年10月 平成13年 3月 未来開拓学術研究推進事業 (日本学術振興会) 複合領域『生命情報』「神経回路モデルと学習ニューロチップの研究」コアメンバー,
平成 9年11月 平成14年10月 戦略的基礎研究推進事業 (科学技術振興事業団) 『脳を創る』領域「脳の動的時空間計算モデルの構築とその実装」研究代表者.

3. 研究分野
数理工学,カオス工学,生命情報システム論,複雑系科学技術

4. 主な学会活動等
Editors: Neural Networks (1992〜), IEICE (1993〜1997), Neural Processing Letters (1994〜), International J. of Chaos Theory and Applications (1996〜), Neural Computing & Applications (1998〜), Artificial Life and Robotics (2000〜), J. of Nonlinear Science (2001〜), Chaos & Complexity Letters (2002〜)
日本神経回路学会理事 (1993〜1996)
電子情報通信学会・非線形問題研究会・専門委員長 (2000〜2001)
The 7th TOYOTA Conference 組織委員 (1993)
International Symposium on Nonlinear Theory and its Applications, アドバイサリー委員 (1997〜)
International Symposium on Artificial Life and Robotics, プログラム委員会副委員長 (1998〜)
産業技術総合研究所 外部評価委員 (2001〜)
脳の世紀推進会議世話人 (2002〜)
2003年 日本国際賞:分野検討委員会委員,審査委員

5. 業績等
 複雑系科学技術の重要性にいち早く着目し,大学院生時代の故 松本 元 博士とのヤリイカ巨大神経軸索のカオスダイナミクスの発見 (J. Theor. Biol. 1984; J. Theor. Neurobiol. 1984; Phys. Lett. A 1985, 1986, 1987, 1992) を出発点に,ニューラルネットワーク (Neural Computation 2001, 2002, 2003a, 2003b; Phys. Rev. Lett. 2002),音声システム (Inter. J. of Bifurcation and Chaos 1996, 2000; J. Acoustic. Soc. America 2001),遺伝子・タンパク質ネットワーク (IEEE Trans. CAS 2001, 2002a, 2002b; J. Theo. Biol. 2003),機械振動システム (Proc. Roy. Soc. London A 1998, 2002; Phil. Trans. Roy. Soc. 2000),高炉システム (Physica D 2000) など自然や人工の多様な実在複雑ネットワーク・システムの時空間ダイナミクスを数理的および実験的に解明してきた。そして,カオス,フラクタル,そして複雑系と関連した工学基礎理論の構築およびその工学応用技術の開発を目指して「カオス工学 (Chaos Engineering)」を提唱・推進して (Communications of the ACM, 1995; Proceedings of the IEEE, 2002),カオスコンピューティングの基礎理論 (Phys. Lett. A 1990; IEEE Trans. CAS, 1999, 2000) および応用技術 (Phys. Rev. Lett. 1997; Neural Networks 1995, 1997a, 1997b, 1997c, 2002; Euro J. of Oper. Res. 2002) などを構築するとともに,(社) 日本電子工業振興協会 (現在,(社) 電子情報技術産業協会) におけるバイオ・カオス応用技術専門委員会などを組織して産業界と共同でカオス工学の応用技術を開拓してきた。これらの研究成果は,カオス・複雑系の科学研究のみならず,カオス・複雑系の応用技術研究を産業応用まで視野に入れて推進した点で,世界をリードするユニークでオリジナルな成果を上げた。

受賞等
平成 3年日刊工業新聞,技術・科学図書優秀賞.
平成 4年(財) 国際 AI 財団・AI 学術研究賞.
平成 9年日本神経回路学会論文賞.
平成12年東京テクノフォーラム 21 ・ゴールドメダル賞.
平成15年AROB (Artificial Life and Robotics) Academic Achievement Award.

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This page updated on October 22, 2003

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