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別紙
報告書「学校と社会が一体となって小学校理科教育の新たな展開を」の概要

1.これからの小学校理科教育の在り方

 「生きる力」としての科学的リテラシーの育成と科学技術系人材の育成が、今日の理科教育に課せられた使命であり期待である。その実現に最も影響力を持つのは、理科を教える教師であるが、学校だけの限られた人的・物的教育環境下では困難であり、社会からの様々な支援を得ることで、理科教育は充実したものとなる。

2.今日の小学校理科教育で解決すべき課題

○小学校現場が極めて多忙で授業準備や研修の時間が十分に取れない
○理科に苦手意識を持っている教員が多い(6割以上の小学校教員が理科が苦手であるとの調査結果あり。また高校時代に物理や地学などを履修していない教員も多い)
○団塊世代教員の大量退職に伴う大量採用の時代に入り、都市部では若手教員の指導力不足が深刻化している。
○学校経営の諸事情の中で、理科が得意とは限らない教員が「理科専科」となる場合も少なからず存在
○財政難により教材・設備費なども十分でなく、理科の教員研修や授業支援の拠点だった理科教育センターなどの衰退により、地域の理科教育研究会機能が低下し、効果的な理科授業のための情報の共有化が図られていない状況がある。
○学校と地域・社会との連携が希薄で地域の人材や環境も生かしきれていない。また、子どもの能力・適性・興味などに応じて意欲や才能を見いだし、伸ばしていく機能を地域・社会で担う体制も不十分である。

3.課題解決のための方策

 上記2.で概観した小学校理科教育の課題を解決するために、国やJST、地方自治体及び現場の学校、保護者、地域・社会が一体となって取り組むべき方策は次の通り。
◇ 地域拠点(コアスクール)創設による教員研修の充実とネットワーク形成
地域に拠点(コアスクール)を設け、研修機能や研究会を活性化する機能を持ち、教員の資質向上やリーダーの育成などを行うとともに、地域全体で理科教育の活性化を図っていく必要がある。( コアスクールのイメージ図については別記
◇ 多忙な教員を支援する環境整備と地域・社会との連携づくり
地域社会が学校をバックアップする仕組みとして、大学生及び教員OB・OGなど、地域人材の発掘や活用について理科支援員制度を活用しつつ検討していく必要がある。
◇ 教員の資質・能力の向上につながる小学校教員養成の充実
大学の教員養成課程における、単位数の充実とともに、講義の内容面においても、実験実習能力の養成に十分配慮した内容を確保する必要がある。加えて、平成21年4月に導入される教員免許更新制により教員の研修機会が増大するので、この機会を現職教員の理科の資質能力向上に生かすための工夫が必要である。
◇ 理科が得意な教員の確保につながる教員採用試験の改善
理科が得意な教員を確保するために、採用試験に際して、理科に関する実験実技を取り入れるなどの配慮が必要である。
◇ 特別免許の活用や人事交流などを通じた優秀な理科専科教員の確保
特別免許などの活用により、理系出身者の小学校教員への登用をさらに推進することや、中学校などとの人事交流の推進などを図っていく必要がある。
◇ 理科教員の顕彰制度の創設による理科に対する指導力向上
理科に対する指導力向上の意識を醸成させるためには、優良理科教員などの顕彰制度の創設や、優れた指導実践を全国に広めていく方策を検討する必要がある。

 なお、ほかにも実現するべき多くの課題が残されており、包括的に解決していくためには、国家戦略の樹立に向けた十分な検討と、法律の制定なども含めた、抜本的かつ迅速な対策が求められている。
 また、JSTについては、今後以下について、実施に向けて検討すべきである。
◇ 理科教育支援拠点校(コアスクール)の設置支援
◇ 理科支援員の効果的な活用及び人的支援の拡充
◇ 教員間の理科関連ネットワークの育成と科学情報の提供支援
◇ 地域社会の理科教育資源の小学校理科教育への活用促進
◇ 教員免許更新講習の実施
◇ 理科教育の向上に貢献した教員、地域人材の表彰制度の創設
◇ 理科好きの子どもをさらに伸ばすための支援体制の構築

別記

地域の拠点づくりイメージ図(コアスクール)


地域の拠点づくりイメージ図(コアスクール) 地域の拠点づくりイメージ図(コアスクール)