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開発を終了した課題の評価

課題名 「除熱機構を搭載した制震装置」
所有者 上原春男
研究者 NPO法人海洋温度差発電推進機構 理事長 上原春男
委託企業 三協オイルレス工業株式会社
開発費 約280百万円
開発期間 平成17年3月~平成19年9月
評価  本新技術は、摩擦熱を取り除く除熱機構を搭載することによりねじ部の焼き付けを防止し、振動時間の長い長周期地震や強震度余震による振れに対して長時間制震効果を維持できる制震装置に関するものである。
 制震装置は、風などによる構造物の不快な揺れを、ねじ部が摩擦することによって防ぐものであるが、地震の大きな揺れにはねじ部の摩擦熱が過大に発生し制震装置の正常な動作を妨げていた。特に、長周期型の地震振動から高層ビルなどの大型構造物の被害を防止するためには、長時間、構造物の変形に応じたエネルギーを吸収する必要があるが、従来の制震装置はねじ部の摩擦熱により制震効果が劣化する問題があった。
 本新技術では、まず初めに振動をオイルレスねじによって回転運動に変換し、その回転体と粘性体の接触により地震の揺れを減衰させる400kN制震装置を製作した。この制震装置を水で冷却しながら加振試験を行い、装置の減衰力と装置各所の温度の計測し、除熱機構の設計に必要な熱工学的パラメーターを算出した。この結果をもとに、ねじ部の温度を所定の温度以下に抑え、且つ、摩擦熱を効果的に除去するための冷媒循環用のポンプや配管、貯蓄用タンクの設計を行い、これら除熱機構を一体化した1200kN制震装置を製作した。本装置を水冷却条件下で加振試験した結果、長時間制震効果を維持し、目標を上回る吸収エネルギー量を達成した。
 本技術による制震装置は、今後発生が予想される巨大地震から構造物の安全を確保し、人や構造物の被害を最小限に止めることが期待される。特に、大振幅長周期の大きな振動に対して長時間制震能力を発揮することが期待される。
評価者 独創的シーズ展開事業 委託開発
プログラムディレクター  今成 真
プログラムオフィサー  中川 威雄、吉村 進、桐野 豊
評価日 平成19年11月5日