JSTトッププレス一覧科学技術振興機構報 第485号 > 資料1
資料1

平成19年度育成研究採択課題一覧

プラザ/サテライト 研究課題名 代表研究者 共同研究機関 共同研究企業 研究
期間(年)
研究概要
氏名 所属機関・部署 役職
北海道 デジタルレンズ電子顕微鏡の研究開発 郷原 一寿 北海道大学
大学院工学研究科
教授 - (株)日立製作所 3  現在の高分解能な電子顕微鏡は、電子線の加速電圧が数百kVに達し、生体組織等の試料が壊れ易く、また大型の設備となる。これに対し、デジタルレンズ電子顕微鏡は、物質に電子線を照射して得られる回折パターンをもとにして、レンズを用いずに位相回復アルゴリズムによって、物質の像を画像化するものである。
 申請者は、日立製作所と共同で、加速電圧が20kV以下で原子スケールの画像化を世界に先駆けて実現している。
 本研究では、デジタルレンズ電子顕微鏡の基盤技術を確立し、従来の電子顕微鏡と同等以上の分解能をもち、かつコンパクトな電子顕微鏡の実現を目指す。結晶化できない物質の構造の観測も可能であるため、ライフサイエンス(蛋白質、糖鎖、脂質等)をはじめとする最先端の研究分野での利用が期待される。
北海道 蛋白質大量発現細胞株の確立と産生蛋白質(バイオジェネリック医薬品等)の有効性評価 鈴木 定彦 北海道大学
人獣共通感染症リサーチセンター
教授 - 扶桑薬品工業(株) 3  申請者は、遺伝子情報から蛋白質への翻訳コードを変更し翻訳速度を減速させる手法を利用して、ゲノム上の遺伝子発現効率が非常に高い領域を特定し、同領域を用いて特定の蛋白質を高い生産性で発現させる事に成功している。
 本技術は、様々な蛋白質に応用可能で、従来の約10倍もの生産効率をもつ細胞の作出を可能とする。
 本研究では、上記技術を活用してバイオ医薬であるインターフェロン、エリスロポエチン等の蛋白質高発現細胞およびその培養系を確立する。更に、大量に生産される蛋白質の安定性・安全性等の評価による技術基盤を確立する。共同研究企業の扶桑薬品工業は、有効性評価、安価なバイオ医薬品の製造・販売に向けて社内体制を整備する。
 本技術は、医薬品以外の蛋白質の生産や更なる高発現化技術への応用へも期待が広がる。
宮城 タンパク質リン酸化ディスプレイ法の開発と創薬・診断ツールへの応用 石濱 泰 慶應義塾大学
大学院政策・メディア研究科/先端生命科学研究所
准教授 - ジーエルサイエンス(株)
ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ(株)
3  タンパク質リン酸化は、細胞内情報伝達ネットワークにおける主要な情報伝達手段であり、細胞外情報伝達物質によって誘因される細胞応答を媒介するため、特に創薬・診断分野で注目されている。リン酸化ペプチド特異的な濃縮法に基づくリン酸化プロテオーム測定技術開発と情報伝達ネットワーク解析等のインフォマティクスツールの開発を行い、タンパク質リン酸化の包括的定量解析システムを構築し、細胞外情報伝達物質とその受容体に対応した細胞内タンパク質リン酸化ネットワークを可視化する。キナーゼを標的とする分子標的薬創薬にこのリン酸化ディスプレイ法を応用し、薬剤の作用機序解明だけではなく、副作用回避や個別化医療への展開を目指す。
宮城 縦型構造の電荷蓄積膜方式セルを積層した超高密度不揮発性半導体メモリの製造技術の開発 遠藤 哲郎 東北大学
電気通信研究所
准教授 - 東京エレクトロン(株) 2  近年の高度情報化社会で取り扱う情報通信データ量は飛躍的に増大している。この大規模データを効率よくストレージするために、更なる高速化・大容量化が可能な半導体不揮発性メモリの製造が強く求められている。この要請に、微細化技術、多値化技術等で対応してきたが、それも限界に達してきている。この技術の壁を打破し、今後とも半導体不揮発性メモリのさらなる高速化・大容量化を実現するためには、新たな技術が必要とされている。
 この認識に基づき、本育成研究では、申請者らが研究開発してきた縦型構造の電荷蓄積膜方式セルを積層した超高密度不揮発性半導体メモリの製造技術を開発する。具体的には、データを記憶する機能を有する電荷蓄積膜の製造技術、および電荷蓄積膜方式のセルを縦型構造化し、さらにそのセルを垂直方向に積層するために必要となる加工製造技術を開発する。そして開発した製造技術を搭載した新規製造装置の事業化を目指す。
宮城 糖尿病治療を目的とした革新的膵島分離システムの開発 後藤 昌史 東北大学
先進医工学研究機構
准教授 - 野村ユニソン(株)
(株)REO研究所
3  膵島移植は細胞療法という“患者に優しい”低侵襲治療法であるが、膵臓から膵島を分離する現行のシステムに技術的課題を有しているため、一般医療には至っていないのが現状である。
 本研究においては、酸素ナノバブル作製技術を導入し、保存中の膵組織の品質を向上させ、さらに膵島自身が発現する炎症起因性メディエーターである組織因子(Tissue Factor)を制御し、移植成績向上に繋がる新規膵島移植溶液の開発を行う。また、中空糸技術を至適化することにより、膵島のエネルギーステータスを向上し得る新規膵島分離回路の実用的開発を目指す。
石川 芳香族アミノ酸類縁体を用いた高性能成形材料の開発 金子 達雄 北陸先端科学技術大学院大学
マテリアルサイエンス研究科
准教授 - 旭化成せんい(株) 3  微生物から発酵生産できる芳香族アミノ酸類縁体であり多官能性分子種であるクマル酸類を重合することで、高耐熱性のグリーン高分子成形材料を作成する。得られる高分子は成形可能であり、かつ成形後処理で硬化させることができる。硬化に伴い得られる成形体の耐熱性は上昇し、耐熱温度が300℃を超えるものもある。そこで、自動車エンジン周りで使用できる高耐熱性バイオベース樹脂の開発を目指して研究を進める。
石川 環境に優しい産業機械部品化のための高密度ナノ炭素膜の開発 安井 治之 石川県工業試験場
機械金属部
専門研究員 豊橋技術科学大学
独立行政法人理化学研究所
神奈川県産業技術センター
(株)オンワード技研
日立ツール(株)
3  金属材料が過酷な条件で摺動し合う部品は、低摩擦係数、耐剥離性、表面平滑性、高寿命化が要求される。このような用途に対し、従来のDLC膜では対応できなく、さらなる高密度化を実現した膜の開発が急務である。
 本研究開発では、膜中の水素含有量を制御した高密度ナノ炭素膜を開発し、1自動車部品、2工具部品、3光学レンズ成形金型の各アプリケーションに対応させ、プログラム終了後の受託加工事業および装置販売を実現するものである。
東海 マルチカラーメッセージディスプレイ用高輝度酸化物蛍光体の研究開発 井上 幸司 三重県科学技術振興センター 研究員 名古屋工業大学 ノリタケ伊勢電子(株)
共立マテリアル(株)
3  次世代フラットパネルディスプレイの産業集積は日本の重要な施策の一つであり、特に、優れた蛍光体の開発がディスプレイ技術の中核となっている。
 これまで、申請者らは従来の青・赤色蛍光体の欠点(有害性と高コスト)を克服した酸化物系蛍光体を開発し、真空蛍光表示管(VFD)への適用を進めた。高輝度の蛍光体が緑色に限定されてモノクロのVFD が主流であったことから、本研究では、マルチカラーVFD の開発を目的として、青・赤色蛍光体の輝度向上を目指す。
東海 ナノシリカ中空粒子内包断熱薄膜用塗料の開発および実用化研究 藤 正督 名古屋工業大学
セラミックス基盤工学研究センター
教授 - グランデックス(株) 3  ナノサイズの中空シリカ粒子を内包する断熱性薄膜形成用の塗料を開発・製品化する。この断熱薄膜はナノサイズの空孔を有しているため、空隙率が50 体積%程度であるにも関わらずバルクの空気と同等の低い熱伝導率を有し、かつ透明性、耐候性、強度に優れたものであり、各種基材表面にコーティングすることで、たとえば窓ガラス等への断熱フィルム、車両用の合わせガラスの中間層としての使用等の応用が期待される。
東海 高品質コロイド単結晶を用いた分光素子および超小型分光光度計の開発 山中 淳平 名古屋市立大学
大学院薬学研究科
准教授 光産業創成大学院大学
独立行政法人物質・材料研究機構
富山大学
富士化学(株)
TAKシステムイニシアティブコーポレーション
3  分光素子として実用化可能な光学特性を持つ荷電コロイド結晶を、新規手法(一方向加熱成長法)により作成する。これを高分子ゲルにより固定し、その弾性変形を利用することで、回折波長が可変な光学素子を作成する。さらに、本光学素子を利用し、超小型(万年筆サイズ)で低コストの分光光度計を試作する。
京都 プラスチック表面活性化-接合技術の開発とマイクロ流路プレート製造への展開 杉村 博之 京都大学
大学院工学研究科
教授 - アルプス電気(株) 2  バイオや医用分野で切望されている、安価なディスポーザルタイプのプラスチック製マイクロ流路プレートを開発する。現在、マイクロ流路プレートの素材にはガラスが使われており、高価なため用途が限定されている。
 本研究では、プラスチック表面を光化学的に活性化して接着し、必要に応じて剥離も可能な接合技術を開発することで、プラスチックマイクロ流路プレートの製造技術を確立する。
 研究成果は、μ-TASなど機能性マイクロデバイスの基盤生産技術としても幅広く応用展開が期待できる。
京都 細胞増殖因子保持型新規人工真皮の実用化と皮膚欠損、皮膚潰瘍に対する応用 鈴木 茂彦 京都大学
大学院医学研究科
教授 - グンゼ(株) 3  皮膚欠損、皮膚潰瘍の治療に著効を示す人工真皮を開発する。代表研究者、共同研究企業等により開発、臨床応用されている人工真皮ペルナックは、真皮様組織形成に数週間要し、感染の危険性の高い難治性潰瘍症例に適用する場合は、感染予防に十分注意しなければならない。
 本研究は、独自に細胞増殖因子(bFGF等)を保持させる機能があることを見出している新規基材を応用し、組織形成期間短縮により糖尿病性潰瘍等にも効果が期待される人工真皮を新たに開発し、治療効果を確認することを目的とする。
京都 オーダーメイド手術ナビゲーションシステムの開発 中尾 恵 奈良先端科学技術大学院大学
情報科学研究科
助教 - パナソニックAVCメディカル(株) 3  次世代の安全かつ効率的な医療を実現するオーダーメイド手術ナビゲーションシステムを開発する。CTやMRIなどの患者個々の実測データから構築される三次元人体・臓器モデル上で手術をシミュレートし、さらに手術中に内視鏡や手術器具の操作と同期して計画内容を提示する。脂肪組織の裏に隠れている臓器や血管を確認しつつ正確かつ迅速な手術を施すなど、いわば施術者に第二の目を与えるナビゲーションシステムの実現を目指す。
大阪 電子部品の高速・高精度マイクロ二次元・三次元同時形状検査ユニットの開発 藤垣 元治 和歌山大学
システム工学部
准教授 - YASUNAGA S&I(株) 3  電子部品の品質検査に必要なマイクロ二次元・三次元同時形状検査技術を開発する。とくに車載用や航空機用の電子部品は人の安全を支える部品であり、高度な検査が必要とされる。電子部品は年々微細化されていくが、実用化のためには微細化に対応した精密な検査技術が不可欠である。しかし、従来の技術では数年後の電子部品の検査に要求される速度と精度を得ることはできない。
 そこで本研究では、和歌山大学で研究を進めてきた全空間テーブル化手法と位相解析技術を用いて高速かつ高精度な新しい形状計測技術を確立し、それを利用してマイクロメートルの精度で、例えばはんだボール径、位置、平坦度のような二次元・三次元の検査を同時に行うことができる次世代の形状検査ユニットを開発する。
大阪 溶液構造制御によるタンパク質結晶化技術の開発 松村 浩由 大阪大学
大学院工学研究科
助教 - (株)創晶 3  タンパク質の結晶化は、ゲノム創薬研究における構造解析にとって重要なステージであるが、結晶化の確率が低いこと、解析装置に結晶を移動することが困難なこと、また、解析のための凍結により結晶が破壊され十分な精度で解析できないことなど問題が多々ある。
 これらの問題の解決を目指し、本研究では、1溶液構造制御によるタンパク質結晶化技術の確立、ならびに 2その技術を様々な種類のタンパク質の結晶化に展開するための製品開発を行う。
広島 埋め込み式バイオ人工膵臓による新規糖尿病治療の開発 小林 直哉 岡山大学
医学部/歯学部附属病院
講師 京都大学
岡山理科大学
東京農工大学
独立行政法人国立環境研究所
メディカルサイエンス(株)
(株)スリー・ディー・マトリックス・ジャパン
(株)NeoCel
3  免疫隔離能を有する埋め込み式バッグ型バイオ人工膵臓デバイスと各種インスリン分泌細胞を組み合わせることで新規糖尿病治療システムを開発する。
 このシステムは、生きた細胞の血糖感知能力を利用することで良好な血糖コントロールが可能となる。本システムでは、ラット膵島、胚性幹細胞から分化誘導されたインスリン分泌細胞、ヒトインスリン分泌細胞株を使用し、細胞提供システムの確立、人工膵臓デバイス内の細胞環境の至適化、デバイスサイズと形状を検討を行う。開発したシステムを用いて、初めに糖尿病犬の人工膵臓による治療から行い、その安全性と有効性を検証する。将来的に、ヒトの治療への展開を目指す。
広島 先端的分子標的技術としてのpeptide-based RNAデリバリーシステムの開発 近藤 英作 岡山大学
大学院医歯薬学総合研究科
准教授 - (株)三菱化学生命科学研究所
シグマアルドリッチジャパン(株)
神戸天然物化学(株)
3  RNA干渉薬(small RNA)の細胞内への効率的導入技術として、従来にない高機能性、標的細胞選択性および低侵襲性を発揮する、機能性アミノ酸配列数十残基からなるsmall RNA導入ベクターを開発・製品化し、分子標的医療の新基盤技術としての確立を目指す。
 本ベクターは、提案者らがすでに開発した蛋白導入ベクターの考え方を応用し、「細胞内浸透ドメイン」+「スペーサー」+「small RNA結合ドメイン」を基本骨格とする。高性能化を目指した「細胞内浸透ドメイン」と「small RNA結合ドメイン」のデザインの最適化、基本骨格からなるプロトタイプベクターのin vitro、in vivo での性能評価と改良、完成プロトタイプによる製品化実施可能性の検討と改良を行う。
広島 次世代高性能有機半導体材料の開発 瀧宮 和男 広島大学
大学院工学研究科
教授 - 日本化薬(株) 2  標準的な有機半導体材料であるペンタセンは、高価であり、空気に触れると劣化するという課題があった。
 本提案のジナフトチエノチオフェン(DNTT)は、大気中でも極めて安定で高い電界効果トランジスタ特性を示す有機半導体材料であり、本材料をポスト・ペンタセン候補と位置付け、次世代の有機トランジスタ技術の発展や産業応用に展開するため大量製造法の確立を行う。その上で、デバイス作成条件の最適化による高移動度化や種々の基材適合性を検討し、DNTTの更なるポテンシャルを明らかにし、DNTTの実用化を図る。
福岡 革新的核酸-酵素ハイブリッド化技術の開発 神谷 典穂 九州大学
大学院工学研究院
准教授 徳島大学 アロカ(株) 3  遺伝子発現解析では、細胞・組織レベルでの遺伝子発現パターンの決定のために、in situハイブリダイゼーション(ISH)法が汎用されている。従来法では、抗原標識核酸を抗原-抗体反応により検出する手法が採られており、周辺特許を保有するスイス ロシュ社が世界市場を占有している。
 本研究では、酵素反応を利用して蛋白質(酵素)と核酸を部位特異的に共有結合させるという、新たな発想のISH法を開発する。高温条件となるハイブリダイゼーション過程における酵素の失活を抑え、検出感度を飛躍的に向上させる。さらに、酵素とDNAの連結に産業用酵素を利用し、革新的かつ低コストな新規ISHシステムを創出する。
福岡 毒性のないHSP誘導薬の化粧品、医薬品としての開発 水島 徹 熊本大学
大学院医学薬学研究部
教授 - (株)再春館製薬所
サニーヘルスホールディングス(株)
(株)LTTバイオファーマ
3  申請者らは強い熱ショック蛋白質(HSP、蛋白質が正しい高次構造をとるのを助ける一群の蛋白質)誘導作用を持つにも関わらず、毒性を示さない生薬を発見し特許を出願した。また、HSP47が肌のコラーゲンを量的、質的に向上させることや、HSP70がメラニンの合成を抑制することを見出した。
 本研究では、このHSP誘導薬(生薬)を用いて、シワ・シミの軽減に有効な新しいタイプの化粧品を開発する。また、既存のある医薬品においてもHSP誘導能があること、およびこの医薬品がアルツハイマー病などの神経変性疾患への有効性を示していることから、この医薬品よりHSP誘導能が強い本生薬からHSP 誘導物質を単離・同定し、医薬品としての開発を目指す。
岩手 強磁性-反強磁性転移を誘起するイオンパターニングによるビット・パターンド・メディアの開発 石尾 俊二 秋田大学 理事/副学長 秋田工業高等専門学校
秋田県産業技術総合研究センター
(株)山形富士通
日東光器(株)
3  ビット・パターンド・メディア(BPM)は直径10~20nm の強磁性ドットを非磁性媒質中に配列した記録媒体であり、テラビット/ 平方インチを越える次世代超高密度磁気記録メディアとして期待される。その作製手法には微細加工あるいは自己組織化を利用した化学的手法等が検討されているが、技術的難しさや製造コストなどの多くの点で実用性に難がある。
 本研究では、これらを解決するために、ビットを構成する強磁性体の周囲を反強磁性体で囲む新たな強磁性-反強磁性型BPM を開発する。この新しいBPMの方式と作製プロセスでは、パターンの切り込み、埋め込みなどの複雑な工程がなく、プロセスが容易で作製コストも非常に低減できるなど、次世代超高密度磁気記録メディアの基盤技術となると期待される。
岩手 蛍光ブドウ糖トレーサー法の実用化技術の開発 山田 勝也 弘前大学
大学院医学研究科
准教授 東京農工大学 (株)ペプチド研究所 3  ブドウ糖(正式名グルコース)は大腸菌から哺乳類まで、細胞の生存維持に欠くことのできない最も重要なエネルギー源である。しかし、従来の研究で用いられてきた放射性元素で標識したグルコースの限界から、細胞レベルでのグルコースの挙動には不明の点が多かった。
 本研究では、有機合成技術を活かしてグルコースに蛍光分子を結合した「蛍光グルコース誘導体」を合成し、単一細胞内へのグルコース取り込みをリアルタイムに観察するトレーサーとして用いる方法を開発する。
 本成果は、ガンの悪性度診断などの医療分野や食品衛生分野に応用可能な基盤技術となることが期待される。
茨城 高機能性鉄磁性体微粒子を用いた乳癌に対する新しい低侵襲・個別化診断・治療法の開発 上田 政和 慶應義塾大学
医学部
准教授 東京工業大学 メビオファーム(株) 3  乳癌症例の進行度に応じた、低侵襲で個別化した診断・治療の開発を目指す。すなわち、センチネルリンパ節に特異的に滞留し、高い1MRI造影効果、2磁気音響効率、3高周波磁界による発熱特性を示す鉄磁性体粒子(平均粒子径約100nm)を開発する。
 これを用い(1)MRIを用いた造影剤として企業化し、(2)磁気音響効果によるフェライト検出器による手術時センチネルリンパ節同定法を開発・企業化し、(3)高効率の高周波磁界発生装置によりセンチネルリンパ節転移の温熱・焼灼療法を確立する。
茨城 8インチウエハ用めっきプロセス及びアニール技術革新による低抵抗Cu配線の形成と次世代LSIへの展開 大貫  仁 茨城大学
工学部
教授 東北大学
独立行政法人物質・材料研究機構
日立化成工業(株)
日立協和エンジニアリング(株)
(株)ルネサス テクノロジ
2  次世代高速LSIの実現には、微細化とともに増大するCu配線の抵抗率を低減する技術開発が不可欠である。
 上記のことを実現するため、これまでの研究の結果をもとに、次の研究開発を実施する。
 1高純度めっき材料を用いた最小線幅32nmの配線溝を有する8インチウエハへの均一めっき技術の確立。
 2高速アニール技術の最適化により、配線長さ方向において均一・粗大粒を有するCu配線形成技術・プロセス要素技術を確立し、抵抗率を本質的に低減させる。
新潟 熱帯熱マラリアの予防と診断を革新的に進化させる、人工抗原ペプチドと関連デバイスの合成的研究 奥 浩之 群馬大学
大学院工学研究科
准教授 国立国際医療センター 東京CRO(株)
プライムデルタ(株)
3  マラリアは熱帯地域を中心に年間2~3億人が感染する世界最大の寄生虫感染症であり、予防ワクチンの開発が期待されている。
 申請者らのワクチン開発の新規性と独創性は、(a) 疫学調査によって発見された、感染からの回復に関与する抗原を用いること、(b) 免疫研究のみならず材料化学的な視点を融合した新しい研究手法、の2点にある。
 本研究では、1高品質、大規模で安定的な人工抗原ペプチドの合成法の確立、2人工抗原を微粒子化した新しい診断デバイスの開発を行う。将来的には、革新的なマラリアの予防と診断技術の確立、および連携企業の協力を得てマラリアワクチンの臨床試験と企業化の実現を目指す。
新潟 米・米糠タンパク質の新規機能性の解明と食品開発 門脇 基二 新潟大学
自然科学系(農学部)
教授 県立新潟女子短期大学
京都府立大学
亀田製菓(株)
築野食品工業(株)
3  本技術開発は、未開発・未利用資源である米および米糠タンパク質の機能性を研究し、これを評価することで高付加価値の健康食品素材として商品化を目指すものである。
 これまでに開発したタンパク質精製技術を改良し、最良の商品形態を模索する。これら米由来タンパク質は他の植物性タンパク質(大豆、小麦、そば等)と比べ、アレルギーの発生や遺伝子組み換え品の混入の心配が少なく、時流に適した食品素材である。これらのタンパク質はその生理機能についてはまだ不明な部分が多く、ヒトの臨床データもほとんどない。大豆をはじめとする植物性タンパク質が脚光を浴びる中で、米由来のタンパク質に新たな生理機能が見いだされれば、米自体の大きな需要喚起となる。また、米糠タンパク質は年間約10 万tが産出される膨大な未利用資源であり、これを高付加価値素材に転換することにより、新産業創出も期待される。
静岡 ペーパースラッジを原料とする高速・高収率バイオエタノール生産技術の開発 佐古 猛 静岡大学
大学院創造科学技術研究部
教授 富士工業技術支援センター (株)巴川製紙所 3  製紙工場等から大量に排出され、現在その殆どが焼却処分されているペーパースラッジから、バイオエタノールの原料となるグルコースの生産と、およびその残渣から製紙用原料となる無機材料を回収する技術開発である。亜臨界水と揮発性触媒による方法、および高活性セルラーゼ酵素による方法の低環境負荷2段階糖化プロセスを用い、高速(12時間以内)で高収率(グルコースとして80%以上)の糖化技術の確立と、白色度70%以上で炭酸カルシウム並みの硬度に抑えた再生製紙用無機原料へのリサイクルを行うための連続処理システムの開発を目指す。原料は木質(セルロース)系廃棄物であるため食料や飼料と競合しない上に、安価で安定的な供給が可能になる。
静岡 ディーゼルエンジン用超高圧コモンレールの開発 杉本 公一 信州大学
工学部
教授 - 野村ユニソン(株) 3  本研究は、ディーゼルエンジン用超高圧コモンレール実現のための鉄鋼材料の開発と加工に関するものである。申請者は、成形性と強度の両立に優れる低合金TRIP鋼をさらに改良したTBF鋼を開発し、その最適化学組成と最適熱処理法、および成形性を高める機構を明らかにしてきた。
 本研究では、これをさらに発展させて、より高い疲労強度を実現する化学組成と熱処理法を確立する。さらに、試作鋼をコモンレール等に加工した後の特性を評価し、実用化に必要な実証を行う。超高圧コモンレールは、現状では適用可能な鉄系材料がないことから、環境に優しい新世代ディーゼルエンジンの実現に寄与することが期待される。
滋賀 ナノダイヤモンドを用いたマルチモーダル分子イメージングプローブの創生 小松 直樹 滋賀医科大学
医学部
准教授 - トーメイダイヤ(株)
(株)イオン工学研究所
和光純薬工業(株)
3  本研究では、蛍光、磁気共鳴の両者で検知が可能であり、さらに、特定の生体部位に親和性の高いイメージングプロ-ブの創生を目指す。
 イメージングプローブには、ナノダイヤモンド(ND)を用い、さらに、常磁性イオンをND内部に閉じこめることから、他の多くのイメージングプローブが抱える毒性の心配がない。また、プローブの表面化学修飾に、有機合成化学的な方法論を適用することにより、水溶性や特定部位への親和性といった、多種の機能を付与することが容易となり、機能拡張性に富む。さらに、蛍光、磁気共鳴とで相補的な可視化が可能であるので、実用性が極めて高いものである。
滋賀 UHF帯高性能MEMS発振器の研究開発 鈴木 健一郎 立命館大学 理工学部 教授 - 三洋電機(株)電子デバイスカンパニー 3  無線(RF)を利用した次世代ワイヤレス端末機器等に応用する発振器の研究開発を行う。MEMS技術を利用することにより、高周波ダイレクト発振および周波数可変機能をもつ新規デバイスの実現が期待できる。また、この研究分野は今後も発展を続け、「ワイヤレス集積機械回路」と呼ばれる新たな分野の形成が期待される。
徳島 高機能・高強度な新規アパタイトグラスアイオノマーセメントの開発 有田 憲司 徳島大学
大学院ヘルスバイオサイエンス研究部
准教授 - (株)ジーシー 3  申請者は、グラスアイオノマーセメント(GIC)に超微細なハイドロアパタイト粉末を添加する方法を考案し、特許出願をおこなって、従来型GICに比べて曲げ強さが2倍以上、フッ素化イオンの徐放量が2倍以上となる高強度・高機能な歯科用ハイドロキシアパタイト添加GICを開発した。
 本研究では、この技術を用いて各種材料の化学的・物理的諸条件の検討とその特性評価を行い、医療材料としての基本要件基準に適合する新規の接着性歯科用セメントの開発を行い、商品化を目指す。
 この新しいGICが製品化されれば、痛くて怖い歯の切削中心の歯科医療から予防中心の新しい歯科医療への改革が促進されることが期待できる。また、歯科機器の設備のない在宅療養高齢者および入院患者や、発展途上国でもう蝕治療が可能となる。
徳島 窒化ガリウム基板を用いた固定型遷移金属触媒の開発 塚本 史郎 阿南工業高等専門学校
地域連携・テクノセンター
特別研究教授 - 日亜薬品工業(株) 3  遷移金属触媒を用いた医薬品合成では、生成物と有害な遷移金属触媒を分けるのに、莫大な労力がかかる。
 そこで、本研究では、毒性が無く、取扱いの容易な窒化ガリウムに遷移金属を固定することで、従来の機能性を保ちつつ、分離作業なしに生成物だけを収集可能な触媒を開発する。
 本触媒は、リサイクルが可能なため環境に優しく、医薬品合成の大幅なコスト削減も期待される。
高知 近赤外蛍光を捕捉する術中ナビゲーションカラーイメージングシステムの開発 佐藤 隆幸 高知大学
医学部
教授 - 三洋半導体(株)
タイコヘルスケアジャパン(株)
2  体表面から皮下のリンパ管(節)・リンパ流、および軟部組織(筋肉や脂肪)内血管・血流あるいは血管内腔をインドシアニングリーン(ICG)から発せられる近赤外蛍光像によって捕捉し、同時に周辺組織を可視光像として描出することができるカラー動画撮像装置および画像処理装置からなる術中ナビゲーションシステムのプロトタイプを開発する。
高知 植物工場におけるスピーキング・プラント・アプローチで生育を担保した植物部位別温度制御システムの開発 仁科 弘重 愛媛大学
農学部
教授 香川大学
高知大学
愛媛県農業試験場
愛媛県工業技術センター
井関農機(株) 3  地球温暖化および最近の原油価格高騰にも対応可能な高い生産性を実現する省エネルギー型植物工場を普及させる。
 具体的には、各種センサを用いて植物生体情報を直接取得し、その時の植物の状態を診断し、この診断結果および予測モデルも含めた知識ベースに基づいて環境を制御するスピーキング・プラント・アプローチ(Speaking Plant Approach:)と、根圏冷却、生長点細霧冷房、生長点暖房などの植物部位別温度制御装置技術を組み合わせることによって、省エネルギーと良好な植物生育の両方を実現するシステムを構築する。
宮崎 C型肝炎に対する治療薬の研究開発 馬場 昌範 鹿児島大学
大学院医歯学総合研究科
教授 東京大学 オンコリスバイオファーマ(株) 3  C型肝炎ウイルス(HCV)は、感染すると高率に慢性化し、肝臓がんの原因となるウイルスであるが、有効なワクチンがなく、副作用の少ない治療薬の開発が強く望まれている。
 申請者らは、HCVと同じフラビウイルス科に属するbovine viral diarrhea virus(BVDV)を用いて、BVDVに対する抗ウイルス効果を持つγ-カルボリン誘導体を発見した。
 本研究では、このγ-カルボリン誘導体を中心に、種々の新規物質についてHCVに対する抗ウイルス効果を調べ、安価で有効性の高い新規抗HCV薬の実用化を目指す。
宮崎 術中運動野同定・機能的ナビゲーションシステムの開発研究 藤木 稔 大分大学
医学部
教授 - (株)ミユキ技研
ブレインラボ(株)
3  脳神経外科手術において運動機能を担う部位の損傷を最低限度に留めるためには、手術前の検討・設計とともに、手術中の情報取得も重要となる。
 申請者は、脳神経外科手術中、大脳皮質上の画像マーカーを基準に大脳運動野の位置を同定するとともに、電気刺激に対する運動神経系の電気応答を読み込み、運動野の位置ずれ、運動機能の変化を機能的に同定する技術を開発してきた。
 本研究では、この技術を用いて脳の機能状態を経時的に監視し、事前に確実かつ安全な手術方法を計算・指示するナビゲーションシステムを製品化する。
 従来のナビゲーションシステムでは手術部位が持つ重要な機能の情報、術中変化したリアルタイムな運動機能の損傷または保全情報を欠く。