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別紙2

平成19年度第2回 委託開発の採択課題の内容


課題名 頸部頸動脈狭窄症治療システム
新技術の代表研究者 日本大学理工学部 教授 青木義男
開発実施企業 株式会社グッドマン
新技術の内容
 本新技術は、頸部頸動脈狭窄症の治療システムに関するものである。
 従来、頸動脈に用いられるステントは、収縮・拡張や長軸方向の曲げや捩れの際に応力集中による歪みが発生しやすく、塑性変形を起こしにくい構造が求められていた。
 本新技術ではステントのメッシュ構造を見直し、また交点にS字型形状を採用することにより、機械的応力の吸収効果を付加するものである。合わせてステント設置時に発生する血管プラーク片を捕集する補助具の設計を見直し、プラーク捕集量が増しても血流を遮断しづらくすることを可能とする。
 これにより、ステントの長寿命化と手技時間の短縮が図られ、患者の負担軽減につながるものと期待される。

課題名 初期乳がんのイオントフォレシスを用いた治療システム
新技術の代表研究者 東京理科大学DDSセンター センター長 寺田弘
開発実施企業 大鵬薬品工業株式会社
新技術の内容
 本新技術は、初期乳がん(非浸潤性乳管がん:DCIS)の治療システムに関するものである。
 従来、DCISに対する治療法は外科手術あるいは放射線療法であり、大半が女性である患者への侵襲、副反応、精神的苦痛が問題となっていた。
 本新技術は、化学療法剤に比べて低毒性でイオン性を持つ抗エストロジェン薬を、電気泳動の原理を応用した投与方法であるイオントフォレシス法を用いて、乳頭部より非侵襲的に患部(乳管)に送達させるものであり、切除を必要とせず、局所に高濃度分布させることが可能となる。また、経口投与に比して循環血中薬物レベルが低く抑えられることから、全身性の副反応も軽微で、患者の負担の低い治療法に発展することが期待される。

課題名 自然免疫を利用した動物用ワクチン
新技術の代表研究者 大阪大学免疫学フロンティアセンター 拠点長 審良静男
開発実施企業 日本全薬工業株式会社
新技術の内容
 本新技術は、マラリア原虫由来ヘム代謝産物であるヘモゾインが自然免疫賦活化物質などとして作用する知見を基に、ヘモゾインの人工合成物であるβヘマチンを作成、最適化し、動物用ワクチンアジュバントとして用いる技術に関するものである。
 従来のトル様受容体9(TLR9)アゴニストである非メチル化CpGDNA断片を用いて免疫応答を活性化する手法では対象動物毎に配列を最適化する必要があったのに対し、βヘマチンは動物種を選ばないので汎用性が高い。また、βヘマチンには特異抗体を増加させるアジュバント機能もあり、これを活用すれば動物用感染症ワクチンの開発も可能となる。将来的には、免疫賦活作用を利用したアジュバント以外の用途での応用も期待される。

課題名 ディスプレイ用高耐熱高透明性粘土フィルム基板
新技術の代表研究者 産業技術総合研究所コンパクト化学プロセス研究センター
材料プロセッシングチーム チーム長 蛯名武雄
開発実施企業 株式会社巴川製紙所
新技術の内容
 本新技術は、粘土を主体とした透明で柔軟な自立膜を製膜するものであり、ガラスと樹脂フィルムの両方の長所を併せ持ち、ガラスと同等以下の価格で提供できる高耐熱高透明性粘土フィルム基板に関するものである。
 従来、液晶に代表されるディスプレイデバイス用基板としてはガラスが用いられているが、モバイル機器の更なる薄型軽量化ニーズに対し、より薄く軽い高耐熱性高透明度自立膜の開発が望まれている。
 本新技術により、液晶ディスプレイ用ガラス基板の代替だけでなく有機EL用フィルム基板、太陽電池用軽量基板、電子ペーパー用フレキシブル基板などへの応用も期待できる。

課題名 道路橋用アルミニウム床版
新技術の代表研究者 大阪大学大学院工学研究科 准教授 大倉一郎
開発実施企業 日本軽金属株式会社
新技術の内容
 本新技術は、アルミニウム合金床版を用いた疲労強度の高い自動車道路橋用床版に関するものである。
 従来の鋼床版では、補強用Uリブの隅肉溶接部の応力集中のために疲労強度が低下し、疲労亀裂が問題となっている。
 本新技術では、中空アルミニウム押出成形材の突出部同士を突合せて回転摩擦工具を押付け、軟化塑性流動を起こして接合するFSW工法(摩擦攪拌溶接)を適用して、疲労強度の高い道路橋用床版ユニットを製造する。床版ユニットは、アルミニウム合金と鋼の異種金属接触腐食を防止した方法で鋼桁に結合し設置される。
 本新技術により、疲労寿命の高いアルミニウム床版を提供でき、道路橋保全間隔の延長化が実現できることが期待される。