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科学技術振興機構報 第471号

平成20年1月31日

東京都千代田区四番町5番地3
科学技術振興機構(JST)
TEL:03-5214-8404(広報課)
URL http://www.jst.go.jp

エンジニアリングプラスチック並みの耐衝撃値と成形性をもつ
木質成形体の開発に成功

 JST(理事長 北澤 宏一)はこのほど、独創的シーズ展開事業・委託開発の開発課題「プラスチック代替木質成形体」の開発結果を成功と認定しました。
 本開発課題は、名古屋大学名誉教授 木方 洋二の研究成果を基に、平成17年3月から平成19年9月にかけて中日精工株式会社(代表取締役会長 森久 博 本社・愛知県豊川市穂ノ原3-14-1、資本金 3,000万円)に委託して、企業化開発(開発費約125百万円)を進めていたものです。 本新技術は、木質材料を主原料として、合成樹脂を混合することでエンジニアリングプラスチック注1)と同等の性能を持つ木質成形体の製造に関するものです。
 エンジニアリングプラスチックは自動車部品や機械部品、電気・電子部品のような工業用途に耐えられる優れた機械的性質を持っていますが、将来の原油枯渇や廃棄処分での環境負荷問題などから、より環境にやさしい代替材料の開発が望まれています。
 本新技術では、木質材料自体が持っている自己接着性や流動性などを蒸気処理注2)によって引き出し、処理後の原料に相溶化剤注3)などの添加剤を加え、さらに合成樹脂を要求強度に応じて配合することで木質成形体の物性値を改善しました。その結果、エンジニアリングプラスチック並みの強度と成形性を有する木質成形体の量産技術が確立されました。
 新技術で作られるプラスチック代替成形体は、家電製品やOA機器、自動車などに使われているプラスチック部品への使用が可能であり、エコマテリアルとして石油資源の枯渇延命、CO2発生削減に貢献することが期待されます。

本新技術の背景、内容、効果の詳細は次の通りです。

(背景) 地球温暖化対策として求められるエンジニアリングプラスチック代替技術

 エンジニアリングプラスチックは優れた機械特性を持っていますが、原料である原油の節減や地球温暖化対策としてのCO2排出削減が今日における課題であり、環境負荷が少ない代替材料の開発が必要となっています。
 合成樹脂に木質材料を混入した複合材料はフローリング材やエクステリア部材としてすでに使われていますが、耐衝撃性や成形性の面からエンジニアリングプラスチックのように工業用機械部品として使用することは困難です。
 一方、100%木質の材料は特に成形性に問題があり、エンジニアリングプラスチックのような複雑な形状体を製作することは困難です。

(内容) 必要強度に応じた樹脂配合により耐衝撃性に優れた木質成形品

 本新技術による木質成形品は、木質材料を主原料として必要な強度に応じて選定した樹脂材料を配合することでエンジニアリングプラスチック並みの機械的性質を持つとともに、100%木質材料ではできない射出成形などによって成形可能なため、工業用機械部品への使用が可能になりました。
 本新技術では、まず主原料となる木質材料の蒸気処理を行い、接着性や熱流動性を発現させます。これに数種の合成樹脂を加えることで強度や流動性、吸水率などをデザインします。強度を増すために相溶化剤を加えて木質材料と合成樹脂の結合を促進し、さらに強度劣化の原因となる木質材料の成形時の分解を抑制するために添加剤を加えました。
 その結果、木質材料では得ることができなかったエンジニアリングプラスチックに匹敵する熱流動性、耐衝撃性、疎水性を実現することができました。また、これら添加物の質・量をあらかじめコントロールすることにより、成形品の性質(強度や吸水性、不燃性)などの設計が可能となり、木質材料の用途が拡大しました。

(効果) 廃木材の再利用と量産技術の確立による低コスト化を実現

 本新技術では、主原料の木質材料は間伐材や廃バットなどの廃棄物を利用するので材料費を低減、また一般のプラスチックの射出成形に使われる量産技術も適用できるため工業製品に求められる低コスト化も可能となります。
 これにより強度をあまり必要としない家電部品の筐体や自動車用内装品などのプラスチックのみならず、エンジニアリングプラスチックの代替材料として利用することが可能となり、プラスチック材料のニーズと木質材料の特性を結びつける材料として応用展開が期待されます。

図1 木質成形体の製作工程
図2 木質成形体の例
開発を終了した課題の評価

<用語解説>

注1)エンジニアリングプラスチック
 自動車部品や機械部品、電気・電子部品のような工業用途に耐える強度と強靭性、耐熱性を備えたプラスチック。自動車部品、電子機器、OA機器、建設材料、医療機器から日用品まで数多くの用途に使用されています。

注2)蒸気処理
 製材所や木工所から排出されたオガコや鉋屑を密閉された圧力容器内で高温の蒸気にさらして、木材の組織を形成しているリグニンやヘミセルロース、セルロースなどの結合を分断して低分子化する操作工程。

注3)相溶化剤
 木材と合成樹脂の分散性や接着性を向上させるための添加剤。

<お問い合わせ先>

中日精工株式会社 研究開発室
〒442-8510 愛知県豊川市穂ノ原3丁目14番地1
近藤 泰人(コンドウ ヤスト)
TEL: 0533−84−1411 FAX:0533−84−1415

独立行政法人科学技術振興機構 産学連携事業本部 開発部 開発推進課
〒102-8666 東京都千代田区四番町5−3
三原真一(ミハラ シンイチ)、室賀 薫(ムロガ カオル)
TEL: 03-5214-8995 FAX: 03-5214-899