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科学技術振興機構報 第443号

平成19年11月20日

東京都千代田区四番町5番地3
科学技術振興機構(JST)
TEL:03-5214-8404(広報・ポータル部広報課)
URL https://www.jst.go.jp

「人工関節術前計画システム」を研究開発するベンチャー企業設立

(JST大学発ベンチャー創出推進の研究開発成果を事業展開)

 JST(理事長 北澤宏一)は、平成15年度より大学等の研究成果をベンチャービジネスにつなげていくために、起業化に向けた研究開発を行う独創的シーズ展開事業「大学発ベンチャー創出推進」を実施してきました。
 その1つとして、平成17年度に開始した研究開発課題「人工関節術前計画システム」(開発代表者:土井章男、公立大学法人 岩手県立大学 教授、起業家:伊藤史人)の成果を基に、メンバー等が出資して、株式会社アイプランツ・システムズ(代表取締役社長:土井章男、本社:岩手県岩手郡滝沢村、資本金:600万円)を平成19年7月25日に設立しました。
 急激な高齢化社会を迎え変形性膝関節症等の発生件数が急増しており、患者のQOL(生活の質)の低下が問題になっています。外科的治療としては主に人工膝関節全置換手術(Total Knee Arthroplasty, TKA)が行われています。これまでのTKA術前計画では、レントゲン写真による定規と鉛筆による手作業での計画のため、正確なインプラント注1)の配置や骨切り線の決定には医師の技量により大きな差が生じていました。
 本研究開発では、2次元および3次元によるシミュレーションによって、最適なインプラントを正確に配置して、高精度な手術を可能にする人工関節術前計画システム(TXA Simula Ver.1.0)を開発しました。特徴は、2次元レントゲン画像や3次元CT画像から、全自動で大腿骨や頚骨の骨軸や膝の間隙を計算し、その情報を用いて、膝の置換手術において自動的にインプラントを配置する機能があることです。これらの機能を展開することにより、同様に増加している股関節やひじ等の変形性関節症にかかわる各部人工関節手術への対応をはじめ、骨折治療に利用するプレート手術注2)にも対応可能で、患者に対する医療の質向上に貢献するだけでなく、今後、手術ロボットを用いた新しい手術手法への発展も期待されます。
 株式会社アイプランツ・システムズは、今後マーケティング活動やシステムの完成度を高めていきます。また平成19年度10月から、人工関節術前計画システム(TXA Simula Ver.1.0)の主要構成モジュールである3次元画像可視化システム(Volume Extractor 3.0)とメッシュ形状編集ソフト(SMESH Ver.1.0)の販売、平成20年度前半には、人工膝関節術前計画システム (TXA Simula Ver.1.0)の販売を開始する予定です。平成20年度以降は、これまでに蓄積された研究・技術を利用し、医療用支援システムの受託開発を逐次開始します。平成25年度までに年間1億円の売り上げを目指します。
 今回の株式会社アイプランツ・システムズの設立により、大学発ベンチャー創出推進によって設立したベンチャー企業数は63社となりました。

■ 用語解説

注1)インプラント
 人工関節の部品のことで、人体内部で安定した素材である金属(チタンなど)からできています。

注2)プレート手術
 骨折した部分を補強するプレートをボルトで固定して、骨折を治療する手術です。プレートには、ボルト用の複数の穴が開いており、骨の大きさや形状に合わせて、さまざまな種類があります。

注3)DICOM
 DICOMは、Digital Imaging and Communications in Medicineの略で、医用デジタル画像と通信の標準規格です。DICOM規格を採用することで、異なった装置間で、医用画像の相互接続やデータベースの統一化が可能になります。

注4)高速VR
 VRは、ボリュームレンダリング(Volume Rendering)の略で、3次元画像を可視化する際によく使われるレンダリング(画像生成)方法です。本ソフトウェアでは、高速なボリュームレンダリングの手法を開発しました。

注5)入力フォーマット
 読み込むことが可能な、3次元画像のデータフォーマットやポリゴン形状のデータフォーマットを表します。DICOMは、DICOM規格で定められたデータフォーマットです。RAWは、生データや未加工であることを表しており、画像フォーマットとしては、画素値だけの画像データを表すシンプルなデータフォーマットです。TIFFは、Tagged Image File Formatの略で、汎用の画像データフォーマットとして、広く普及しています。STLはStereo Lithographyの略で、ラピッドプロトタイピング(Rapid Prototyping)でよく使用されている汎用データフォーマットです。

注6)出力フォーマット
 書き出すことが可能な、3次元画像のデータフォーマットやポリゴン形状のデータフォーマットを表します。3次元画像処理やセグメンテーションした処理や等値面生成により3次元再構成したポリゴン形状を出力することが可能です。MGF(Materials and Geometry Format)、VRML(Virtual Reality Modeling Language)も同様にポリゴン形状を表現するデータフォーマットの種類で、MGFはモデリングや可視化、VRMLはWEBなどでよく使用されています。

■製品例・実施例
■企業概要・事業形態

<本件お問い合わせ先>

株式会社アイプランツ・システムズ
〒020-0173 岩手県岩手郡滝沢村巣子152番地89
岩手県立大学 地域連携研究センター 研究室D
伊藤 史人(イトウ フミヒト)、土井 章男(ドイ アキオ)
Tel:019-694-3336 Fax:019-694-3336
E-mail:
URL:http://www.i-plants.jp/hp/

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