別紙 2

委託開発事業の採択課題の内容

○一般枠(5件)
課 題 名 超低損失GaN系パワーデバイス
新技術の研究者 湘南工科大学工学部 教授 寺嶋一高
委 託 企 業 古河電気工業株式会社
新技術の内容:
 本技術は、シリコン基板上にリン化硼素および窒化ガリウム系エピタキシャル半導体結晶を積層したパワーデバイスに関するものである。従来、シリコン系デバイスが用いられているが、性能は理論限界に達している。また、窒化ガリウムは、電力変換効率を高めることが可能だが、シリコン基板との整合性が悪く、クラックが生ずるため、実用化が困難であった。
 本技術では、シリコン基板と窒化ガリウム系素子の間に、シリコンと結合しやすくかつ窒化ガリウムとも格子整合するバッファ層を設けることにより、クラックフリーの窒化ガリウム系パワーデバイスが可能となる。素子形成にあたっては、まずシリコン基板上に、バッファ層であるリン化硼素を有機金属化学堆積気相成長法で成膜し、その上に窒化ガリウムと窒化ガリウムアルミニウムのヘテロ構造を形成する。このヘテロ接合は、電子移動度および絶縁破壊電界強度が高いため、低損失かつ高耐圧のパワーデバイスができる。
 本技術による窒化ガリウム系パワーデバイスは、電力変換装置、一般電源機器、スイッチング装置等への応用が期待される。
課 題 名 カーボンナノチューブを用いた熱交換器複合材料
新技術の研究者 大阪府立産業技術総合研究所  材料技術部
主任研究員 垣辻 篤
委 託 企 業 住友精密工業株式会社
新技術の内容:
 本技術は、熱伝導性や機械的強度等に優れた熱交換器伝熱面複合材料に関するものである。従来、熱交換器伝熱面材料を薄板加工したフィンを高密度で実装することにより熱交換特性を向上させているが、微細加工は限界にきている。また、比較的熱伝導率が高い銅などを適用する試みもあるが、重量増加や高コストとなり実用化製品としての普及には至っていない。
 本技術では、熱伝導性に優れるカーボンナノチューブを金属あるいはセラミックスと適切な条件で複合化させることにより、現在の熱交換器の伝熱面材料として多用されているアルミニウムや耐熱金属などと比較して、熱伝導性を向上させることができる。
 本技術によるカーボンナノチューブを用いた熱交換器複合材料は、小型軽量化が望まれる自動車や航空機などの熱交換器や今後大きな市場が期待されるマイクロガスタービンやコージェネレーションシステム用の高温廃熱回収用熱交換器への適用が期待される。
課 題 名 炭素繊維強化アルミニウム基複合材料の製造技術
新技術の研究者 福井大学工学部 助教授 荻原 隆
委 託 企 業 サカイオーベックス株式会社
新技術の内容:
 本技術は、ポリアクリルニトリル(PAN)系炭素繊維の表面にアルミナセラミックス膜を均一にコーティングし、その後にアルミニウムを含浸させる高強度複合材料の製造に関するものである。従来は、アルミニウム含浸時に、高温のアルミニウムと炭素繊維が界面反応を起こして炭素繊維が劣化し、機械的強度が低下するという問題があるため、実用化が困難であった。
 本技術では、コーティングされたアルミナセラミックス膜が、炭素繊維とアルミニウムの接触を防止することにより、界面反応が抑止され、高強度複合材料が得られる。また、アルミナセラミックスのコーティングには、金属アルコキシド溶液に炭素繊維を浸漬する方法を用いるため、安価に製造することが可能となる。
 本技術により、軽量かつ高強度の材料が安価に製造可能となるため、自動車用部品または風力、波力ブレード等への利用が期待される。
課 題 名 フォトサーモダイナミックバルーンカテーテル
新技術の研究者 慶應義塾大学 理工学部 教授 荒井恒憲
委 託 企 業 日本ライフライン株式会社
新技術の内容:
 本技術は、血管狭窄部のバルーン拡張時に最適な温度を短時間だけ加えることにより、生体に大きな損傷を与えることなく充分な拡張を可能にするカテーテルに関するものである。狭心症や心筋梗塞等の治療では、先端にバルーンがついたカテーテルを挿入し、狭窄部でバルーンを拡張する方法等が行われているが、術後に高い確率で再狭窄を生じるため問題となっている。
 本技術では、ファイバーでカテーテル内に導入されたレーザー光により、カテーテル内を還流する造影剤を短時間照射することで、血管壁のコラーゲン成分を軟化させ滑らかに血管を拡張し、さらにその後急速に冷却するため、患部への負担の少ない拡張法となっている。
 本技術は、血管に必要以上の大きな力学的、熱的侵襲を与えないことから、損傷が少なく、再狭窄なども殆ど起こらないと考えられ、従来の治療法に代わる新しい治療法になることが期待される。
課 題 名 微小電気化学セルを利用した重金属分析装置
新技術の研究者 筑波大学 物質工学系 助教授 鈴木 博章
委 託 企 業 積水化学工業株式会社
新技術の内容:
 本技術は、微小電気化学セルを利用した重金属分析装置に関するものである。微小な電気化学セル中に導入する試料溶液に含まれる重金属物質の電流応答を計測することにより、重金属を精度よく、迅速に計測できる。人体への有害性が高く、移動性がなく長い年月蓄積される重金属汚染は、深刻な社会問題になっている。
 本技術により、有害重金属類の同定及び定量を従来にない簡便な手法にて実現出来ることから、各種環境アセスメントへの広範な利用が期待出来る。
○返済特例枠(中堅中小企業対象)(6件)
課 題 名 超極細繊維を用いた低漏血性人工血管
新技術の研究者 横浜市立大学 医学部 講師 野一色 泰晴
委 託 企 業 新道繊維工業株式会社
新技術の内容:
 本技術は、素材を生体内での安全性が認められているポリエステルから逸脱することなく、単にその形態を変化させただけで、漏血を少なくした安全性の高い人工血管に関するものである。現在、漏血防止には、ポリエステルに牛由来のコラーゲンを被覆した人工血管が使用されているが、アレルギー反応や最近のBSE(牛海綿状脳症)の発生により、安全性について懸念されている。
 本技術では、ポリエステルの通常繊維間隙に超極細繊維を絡ませることで、細胞に良好な足場を提供して、血液の凝固を促進し漏血を防止することが可能である。
 本技術による人工血管は、ウシ由来のコラーゲン被覆品に代わる安全な人工血管として、患者のQOLの向上や医療費の削減などが期待される。
課 題 名 可視化遺伝子診断キット
新技術の研究者 浜松医科大学 医学部 教授 椙村 春彦
委 託 企 業 株式会社常光
新技術の内容:
 本技術は、同一細胞上の癌特異的蛋白質と癌特異遺伝子の増幅を同時に検出する診断キットに関するものである。これまでは癌特異的蛋白質の標識を行うと二次的変化による夾雑物や変性物等の影響で癌特異遺伝子をその標本から検出するのが困難であった。
 本技術では、癌特異遺伝子の検出処理時にマイクロ波照射を行い、さらに蛍光色素を抗原とする抗体に可視域の色素を結合させた抗体を用いることで、同一細胞の癌特異的蛋白質の過剰発現と癌遺伝子の増幅を光学顕微鏡で同時に検出することが可能となる。
 本技術による遺伝子診断キットは、多くの癌に対して有効であることから、簡易で高精度な癌の診断システムとして広く利用が期待される。
課 題 名 ディジタルサーボ地震計
新技術の研究者 横浜市立大学 理学部 教授 木下 繁夫
委 託 企 業 株式会社東京測振
新技術の内容:
 本技術は、扱う信号すべてをディジタル化することにより、ダイナミックレンジ(振動上限値と下限値の比率をdB単位で表したもの)を広くし、微小な地震から強大地震まで広範囲の振動を1台で計測できる地震計に関するものである。従来のアナログ式地震計では、扱う信号電圧の制限から、ダイナミックレンジには限界があった。
 本技術では、地震により揺れる振り子を振れた分サーボで微小な電流により0の位置に戻すのであるが、電流が流れた時に1をカウントし、この繰り返しにより、地震の波を数値化させることが可能となる。
 本技術による地震計は、広範囲の振動のデータ取得を1台の地震計で可能とし、地震予知などの研究に有用である各種震源情報の取得など広く利用が期待される。
課 題 名 低温・高速スパッタリング成膜装置
新技術の研究者 金沢大学 工学部 教授 畑 朋延
委 託 企 業 株式会社ライク
新技術の内容:
 本技術は、耐熱性の低いプラスチックの樹脂の基板上に低温かつ高速で無機材料等を成膜させる装置に関するものである。耐熱性の低い材料にスパッタ成膜すると、プラズマ中の電子流とプラズマ輻射エネルギーが下地材料に作用して下地温度を上昇させてしまい、70℃以下での成膜は困難であった。
 本技術では、プラズマの広がりを制限し、かつプラズマから流れ出る電子流が下地に作用しないように特殊電極を設けて吸収除去することで、輻射とジュール熱による下地温度の上昇を抑制することにより、低温かつ高速での成膜を可能とするものである。
 本技術による成膜装置は、平面ディスプレイ画面表面への反射防止膜の装着の外、他の金属膜、導電性酸化膜の成膜にも広く利用が期待される。
課 題 名 振動による褥瘡治療用具
新技術の研究者 金沢大学 医学部 教授 真田 弘美
委 託 企 業 マツダマイクロニクス株式会社
新技術の内容:
 本技術は、振動を利用して継続的な虚血状態を解消することにより褥瘡の早期治癒を図る用具に関するものである。これまでは体位変換と除圧を施して血流の停滞を防止していたが、患部を治癒させることが難しい場合もあった。
 本技術では、患部に振動を与えることにより血液の環流を促進させて、圧迫によって血流が低下している状態を解消させることで、早期の褥瘡に対する治療効果が期待できる。
 本技術による褥瘡治療用具は、寝たきりの人の褥瘡の重症化を最小限にとどめるため、病院、介護施設、一般家庭まで広く利用が期待される。
課 題 名 表面をゼオライト化した機能性発泡ガラスの製造技術
新技術の研究者 佐賀大学 低平地研究センター副センター長 教授 荒木 宏之
委 託 企 業 日本建設技術株式会社
新技術の内容:
 本技術は、発泡ガラスの表面にゼオライトを坦持させることにより、用途に応じて水分や重金属を吸着できる機能性発泡ガラス製造に関するものである。
 現在、リユースが難しい有色廃ガラスびんの大部分は埋立て処理が行われてきたが、近年、埋立て処分場の逼迫に伴いリサイクル用途の拡大が急務となっていた。
 本技術ではマイクロ波加熱によりガラス表面を覆ったアルカリ分の表面溶解を促し、ゼオライトあるいはゼオライト類似の吸着能を有する物質を表面に形成する。
 本技術により製造された人工ゼオライト並みの保水性・吸着能を有する機能性発泡ガラスは、環境に安全な浄化資材として海水・湖沼浄化や屋上緑化など幅広い用途への展開が期待できる。
○返済特例枠(新規企業対象)(3件)
課 題 名 薄膜抵抗内蔵マイクロ波増幅素子
新技術の研究者 電気通信大学 電子工学科 助教授 内田 和男
委 託 企 業 株式会社ナノテコ
新技術の内容:
 本技術は、無線や携帯電話をはじめとする通信機器の小型化に対応するために、その構成部品であるマイクロ波増幅器素子に関するものである。従来製品は、電流集中による破壊を防止するための金属抵抗体をトランジスタの外部に設置しているために、機器の小型化を阻害する要因となっている。
 本技術では、イオンビームスパッタリング法によりトランジスタ上に金属抵抗体を直接積層させ素子面積の縮小化を可能とすることや、均質な抵抗膜形成によりマイクロ波増幅特性の劣化を防止できる。
 本技術による薄膜抵抗内蔵マイクロ波増幅素子は、振幅変調成分の大きい次世代デジタル無線方式で使用する各種通信機器への適用が期待される。
課 題 名 テーラーメイド前立腺癌ペプチドワクチン
新技術の研究者 久留米大学 医学部 教授 伊東 恭悟
委 託 企 業 株式会社グリーンペプタイド
新技術の内容:
 本技術は、末期の前立腺癌の個々の患者に対して、最適なペプチドワクチンを診断して投与するテーラーメイドの癌ペプチドワクチンに関するものである。ワクチン療法は新規治療法として待望されており、さらに、画一医療から個々人に最適なテーラーメイド医療も21世紀医療として強く期待されている。
 本技術では、前立腺癌細胞に強く発現していることがわかっているペプチドワクチンの候補パネルの中から、個人に最適なペプチドを選択して投与することで、免疫細胞がそのペプチドを認識して活性化され、同じ目印(ペプチド)を持つ癌細胞を選択的に破壊することが可能である。
 本技術により、ペプチドそのものが直接的に癌細胞を攻撃することなく、自己の免疫力を高めて治療することが可能となるため、副作用も少なく、患者のQOLの向上が期待される。
課 題 名 C型肝炎高周波加温治療装置
新技術の研究者 和歌山県立医科大学 名誉教授 湯川 進
委 託 企 業 医療電子精工株式会社
新技術の内容:
 本技術は、C型肝炎ウイルスに感染した肝臓に高周波を加えて、肝臓を加温することにより、肝臓内のウイルスを排除するC型肝炎治療用の高周波加温装置に関するものである。C型肝炎の治療では、インターフェロンを中心とした薬物療法があるが、その有効率は低く、治療期間も半年から2年間を要し、また多くの副作用も伴う。
 本技術では、体外から電極により肝臓を挟み込み、高周波で非侵襲的に肝臓を加温することで、感染細胞を熱による攻撃と免疫力の活性化によってウイルスの減少・排除が期待できる。
 本技術は、薬物療法ではなく物理療法によるC型肝炎の治療法であり、非侵襲的であるため、外来による日帰り治療が可能であり、重篤な副作用も無いと考えられることから、何度でも反復治療が可能で広く病院、診療所への普及が期待される。
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This page updated on March 26, 2004

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