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別紙3

平成19年度申請課題に関する評価結果

<採択課題>

課題名:「食の高付加価値化に資する基盤技術の開発」
地域名:新潟県

(目的)
 食品加工分野において世界をリードする高圧に関する基盤技術を集積させ、新規イノベーションを創出することにより『食の高付加価値化』を推進することを目的として、以下の研究開発を行う。
(1)次世代型高圧プロセスによる高機能・高付加価値食品の開発
(2)高圧を利用した物性変換技術の開発
(3)高圧に係わるシステム安全性確保技術の確立

<事業の推進に関して>
 地域の大学、公設試、及び装置・食品メーカー等の企業が参画しており、高圧加工食材について基礎研究から企業化への移行が効率よくできる基盤・体制がすでに出来上がっている。本事業の推進にあたっては、企業間の連携を十分に取る仕組みを作り、研究開発が散漫にならないよう留意するべきである。

<研究開発に関して>
 地域において継続的な研究開発が実施されてきた食品高圧処理技術の活用であり、開発目標も具体的である。しかしながら、圧力による不必要な成分の蓄積等、圧力の影響がどう現れるかという生化学的知見がまだ不十分であることからこれを解決すべく取り組むとともに、研究の最終的な目標である製品の設定にはさらなる見直しが必要である。なお、一部の課題については本事業で取り組むべき必然性に欠けるものが見受けられるので選択と集中により絞り込んだ計画を立てるべきである。

<企業化・成果移転に関して>
 研究計画には妥当なものが多く、また既に一部実用化が進んでいる技術分野であることから、個別の特許出願やその企業化は可能と考えられるので基本特許となるような革新的な技術が創出されることを期待する。また、期待する付加価値が必ずしも高圧処理でなくても実現できるものが多いので、他の技術による製品と比して、品質・価格において十分な差別化を図るべく当初より十分に計画を練るべきである。

<地域による支援に関して>
 当県に対する日本をリードする食品の高圧処理基盤技術形成への期待は大きく、県の米関連食品産業を育成したいとの意思や長岡市の高圧を軸とする技術展開の構想を踏まえると、十分な支援が得られるものと考えられる。ただし、「高付加価値化」への具体的な戦略について地域としても検討するべきである。

(提案内容)
新潟県  食の高付加価値化に資する基盤技術の開発(ライフサイエンス分野)

○ 企業化統括:田村 巌(長岡商工会議所 会頭)
○ 代表研究者:鈴木 敦士(新潟大学農学部 名誉教授)

研究開発のねらい

 新潟県は、米を始めとする農林水産物の主要産地であり、特に、これを原材料とする米菓、無菌包装米飯、水産練製品などでは国内生産のトップシェアを占めている。一方、少子高齢社会を迎え、QOLの改善など予防・健康関連食品の市場規模は2兆円を超え、健康に対する社会的ニーズは高まっていることから、食品加工分野において本県が世界をリードする高圧に関する基盤技術を集積させ、新規イノベーションを創出することにより『食の高付加価値化』を推進する。
 具体的には、1『機能性成分の富化技術』や、2 『物性の変換技術』を開発することにより、食品素材そのものの機能性を活かした予防・健康関連の高付加価値食品・食材を創出する。併せて、3 『高圧に係わるシステム安全性確保技術』を確立し、実用・普及に必要なシステム安全手法に基づく小型・軽量・低コストの高圧装置を開発する。
 これらの実現に向けて、県内の大学、企業、公設試等による「地域結集型研究開発プログラム推進本部」を形成するとともに、食品、装置に加え医療への応用も含め全国規模で研究・開発・事業化を目指す「高圧基盤技術標準化機構」と連携することにより、国際市場への戦略的な進出を図る。

背景

 新潟県では平成18年7月に「新潟県"夢おこし"政策プラン」を策定し、今後、成長が期待される分野に重点を置いた施策展開を行うこととしており、「健康・医療・福祉産業の振興」や「食品産業の高付加価値化」は産業政策の重要な柱になっている。新潟県は米菓、米粉、無菌米飯などの米関連産業において全国有数の売り上げを誇っているが、食に対する社会ニーズとして、「安心」、「安全」に加え「QOLの改善」や「高齢化対策」などが強く求められていることから、食品加工技術分野においてこうしたニーズに基づく新たなイノベーションを創出することにより、地域経済の活性化と、我が国の産業競争力の強化への貢献を目指すものである。

研究開発テーマ

○テーマI 次世代型高圧プロセスによる高機能・高付加価値食品の開発
 高圧処理が誘引する食品素材の構造変化や酵素反応を利用した新しい食品加工技術、ならびに圧力を軸とした微生物及び酵素制御技術を開発する。
○テーマII 高圧を利用した物性変換技術の開発
 高圧処理による食品の物性制御技術を核として、高齢者用の高タンパク質食品や嚥下・咀嚼しやすい食品を開発する。
○テーマIII 高圧に係わるシステム安全性確保技術の確立
 世界初の試みとなるシステム安全手法に基づく高圧装置の設計を行い、安全性が証明された小型、軽量、低コストの高圧装置を開発する。また、高圧装置および高圧食品の安全認証、安全規格を確立する。

○ 中核機関:(財)にいがた産業創造機構
○ 行政担当部署:新潟県産業労働観光部産業振興課
○ コア研究室:ながおか新産業創造センター

<採択課題>

課題名:「次世代電磁力応用機器開発技術の構築」
地域名:大分県

(目的)
 独自技術であるベクトル磁気特性理論に基づき、新しい材料活用設計技術を発展させ、電磁力応用機器開発のための次世代技術を確立し、電磁力応用機器開発支援拠点を構築し、新技術・新産業の創出を図ることを目的として、以下の研究開発を行う。
(1) モータの高効率高出力
(2) 磁気駆動伝達要素の高機能化
(3) 材料活用支援技術の構築

<事業の推進に関して>
 電磁界解析に関する高いポテンシャルを有する大分大学を中核として、当該分野の有力企業の参画もあり、大分県の熱意も感じられるなど、強力な推進が期待できる。県内の産業インフラのバランスも取れており、シーズ創生力とニーズ発掘力のレベルの高さがうかがえる。各参画機関の担当する技術内容も明確であるが、事業の推進にあたっては、産・学・官を繋ぐ仕組みを明確にし、実質的に統括できる体制作りにも留意すべきである。

<研究開発に関して>
 ベクトル磁気特性という視点から開発設計を行うという計画は画期的である。我が国の強みである磁気材料技術を産業に活かすという観点で重要な取組といえ、自動車やロボットなど日本の基幹産業を支える基礎技術の発展に寄与するものと期待される。基本的学理の新規性は高いとはいえないが、高精度な解析という点は評価できる。ただし研究手法としては、さらなる新規電磁材料データの蓄積が不可欠と思われる。

<成果移転・企業化に関して>
 業界大手企業の参画もあるなど、産学官の連携による、電磁力応用技術を基盤とした新技術・新産業の創出が期待される。企業化という意味では、即効性にやや疑問があるもの、地元の中小企業への波及効果など将来的な展開も期待される。ただし、実用化・企業化の計画については、参画企業等のなお一層の協力を仰ぎながら、綿密に進めていくことを心がけるべきである。

<地域による支援に関して>
 地域の研究ポテンシャルを活用した計画であり、自治体の意気込みも感じられるなど、十分な支援が見込まれる。地域結集型プログラム推進本部(本部長:知事)、電磁力応用機器産業創出本部の設置などは評価できる。ただし、磁気計測の拠点形成を維持発展させるためには自治体からの継続的な支援も課題の一つといえる。

(提案内容)
大分県  次世代電磁力応用機器開発技術の構築(ものづくり技術分野)

○ 企業化統括:戸高 信義(大分県工業団体連合会 副会長)
○ 代表研究者:榎園 正人(大分大学工学部 教授)

研究開発のねらい

 今世紀の重要課題である環境・エネルギー問題の解決のために、今後開発される機器には、利用資源の削減と省エネルギー設計が欠かせない。動力・駆動機構にとって不可欠な電磁力応用技術の展開により、高効率・省エネルギー設計を実現することは、この目的に係る重要な技術となっている。高機能電磁材料技術は日本の誇る技術であり、これと組み合わせて、電磁力応用技術の最適活用をし、電磁力応用機器の高効率化と同時に小型化高出力化を飛躍的に向上させることが求められる。しかし、現状の機器設計理論では材料の有効活用ができていない。本研究は、大分大学の独自技術であるべクトル磁気特性理論に基づき新しい材料活用設計技術を発展させ電磁力応用機器開発のための次世代技術を確立し、大分に電磁力応用機器開発支援拠点を構築し、産業の創出を図る。

背景

 本県では、「おおいた産業活力創造戦略」のもとに、21世紀型の産業集積に向けたものづくり産業の振興を進めている。特に、半導体や自動車産業など先端ものづくり産業を県経済を牽引する産業と位置づけており、これらの高度加工組立型産業を支える高機能部品や部材の製造供給拠点、研究開発拠点づくりに力を注いでいる。その中で、モータの小型化や高出力化などの次世代電磁力応用機器開発技術の構築、さらには技術支援拠点の構築は本県産業政策の核となり得るものである。本プログラムでは、大分大学を中心とした県内外の大学の電磁力応用技術シーズを発展させ、その成果を活用して企業ニーズの解決を図ることを通じて、本県における電磁力応用技術産業の創出を目指す。

研究開発テーマ

 次世代電磁力応用機器の開発技術を構築するため、地域の産業応用分野のニーズを把握し、県の産業政策との整合等も勘案し、開発すべき動力機構の高効率化、省資源効率化を課題とした。その核となる技術シーズは、磁気駆動伝達要素技術であり、べクトル磁気特性理論に基づく新しい設計技術である。また、支援技術として、高耐圧電線等の部材開発も課題となる。
○テーマI モータの高効率高出力化
1 産業用ロボット用モータの低慣性化
2 産業・家電用モータの高速回転化
○テーマII 磁気駆動伝達要素の高機能化
1 磁気カップリング、磁気歯車の高機能化
2 車用シートの磁気バネ・磁気ダンパーの高機能化
3 リニアアクチュエータの高速・高出力化
○テーマIII 材料活用支援技術の構築
1 高出力電磁力応用機器用高耐圧電線の開発
2 極小局所ベクトル磁気特性プローブの開発
3 応用ベクトル磁気特性技術の構築
4 ハイブリッドコンピューティングシステムの構築

○中核機関:(財)大分県産業創造機構
○行政担当部署:大分県商工労働部産業技術開発室
○コア研究室:大分県産業科学技術センター