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資料2

平成19年度新規採択
研究開発プロジェクトおよびプロジェクト企画調査の一覧

【科学技術と社会の相互作用】

 総評 : 領域総括 村上 陽一郎(国際基督教大学 教授)

 今年度から新たに発足した公募のための研究開発プログラム「科学技術と社会の相互作用」は、科学技術、とくに科学が、科学者の共同体を超えて、社会あるいは公共的空間と益々密な関係を結ぶにいたった今日、単に科学や技術の専門家、あるいはそのクライアントたる行政や産業ばかりでなく、公共空間に関りを持つ様々な関与者が、同じプラットフォームの上に立って、問題を共有しながら解決していく方法の開発、あるいはその実践を目指すものです。そのパースペクティヴは広く、また視点も種々であること、また、このような課題設定そのものが必ずしも既成の枠組みに乗らないと思われることから、課題設定を十分に練り上げることを目的とした企画調査と、課題解決を目標に据えた研究開発プロジェクトという二つのカテゴリーに分けた公募の形となりました。
 結果は前者に22件、後者には45件という数の、しかも全体に質の高いご応募を戴き、関心の高さと、皆様の熱心さに、改めて責任の大きさを痛感した次第です。プロジェクトないしはその原型に、関与者をどの程度巻き込んだ提案とするか、という点は、今回の公募プログラムの一つの中心理念となっていましたために、提案書類を慎重に審査する過程において、その点がかなり重要な基準として反映されていたように思われます。第二次審査は、企画調査6件、プロジェクト13件に絞られた末に、二日間に亘ってプレゼンテーションによる審査が行われ、審査に当たったアドヴァイザー同士の間で、激しい討論と熱心な審議を経て、発表のような結果となりました。プロジェクト提案から企画調査へ変更をお願いする例もあり(残念ながら、このお願いは、提案者に受け入れて頂けませんでしたが)、また規模の縮小を依頼しなければならない事例も生まれましたが、第一年目として、興味深いラインアップになったと期待しています。なお三年目に入る「21世紀の科学技術リテラシー」というプログラムは、事実上、本新規プログラムに吸収された形になりましたが、本年度は、この関連の提案は少なかったことが少し残念に思っております。

採択研究開発プロジェクト
代表者氏名 所属機関 所属部署 役職 カテ
ゴリ
課題名 課題の概要
明石 圭子 長浜市 健康福祉部健康推進課 副参事 II 地域に開かれたゲノム疫学研究のためのながはまルール 「ながはま0次予防コホート事業」の主要素であるゲノム疫学研究において、個人情報保護や倫理問題に対処するための「ながはまルール」を作成する。
作成にあたり
1 研究協力者にとっての個人情報保護、
2 疫学研究の地域づくりへの活用、
3 長浜版バイオバンクの法整備の3点に視点を置き、
地域に開かれたゲノム疫学研究ルールの基準を提案する。
鈴木 達治郎 東京大学 公共政策大学院 客員教授 先進技術の社会影響評価(テクノロジーアセスメント)手法の開発と社会への定着 テクノロジーアセスメント(TA)は、技術の社会導入前にその正・負の影響を評価し、政策決定を支援する事を目的とする。日本では断片的評価等は行われてきたが、多様な社会影響を考慮した包括的TAが定着していない。そこでまず、政策過程論の観点から日本のTAの歴史を分析する。次に、多様な関係者の視点を組み込む問題構造化の概念に基づいたTA手法を構築する。最後に、新手法の社会定着に向けた制度構築・運用上の提言を行う。
那須 清吾 高知工科大学 社会マネジメント研究所 教授 II 森林資源のエネルギー化技術による地方の自立・持続可能な地域経営システムの構築 高知県のような高騰するエネルギー資源に依存し、衰退する林業・農業を抱える地域を対象に、地方の「環境経営」「農業と林業の活性化」「エネルギーの自立」による地方の自立・持続可能な地域社会の経営システムの構築を目的とし、かつ、様々な分野を統合したマネジメント機能の実践的方法論を提示することで、技術を社会に生かす「統合の科学」の発展を目指す。
平川 秀幸 大阪大学 コミュニケーションデザイン・センター 准教授 II 市民と専門家の熟議と協働のための手法とインタフェイス組織の開発 科学技術に関する多様な主体の「公共コミュニケーション」を支援するための「インタフェイス組織」を大学に設立し、他大学にも移転可能な事業モデルとして示すことを目的として、特に専門家と市民の関の「熟議」と「協働」のための手法を開発し、既存の手法と合わせて手法ライブラリを整備する。同時に、組織の運営基盤の研究開発を行い、総合的な公共コミュニケーション支援を行う体制を構築する。
採択プロジェクト企画調査
代表者氏名 所属機関 所属部署 役職 課題名
三宅 美博 東京工業大学 大学院総合理工学研究科 准教授 福祉機器の開発を介する市民と研究者の共創リテラシーと場づくり
柳下 正治 上智大学 大学院地球環境学研究科 教授 長期的なGHG大幅削減に向けた政策形成対話の促進
領域総括および領域アドバイザー
  氏名 所属機関 役職
領域総括 村上 陽一郎 国際基督教大学 教授
領域総括補佐 小林 傳司 大阪大学コミュニケーションデザイン・センター 教授
領域アドバイザー 大守 隆 UBS証券会社 チーフエコノミスト
奥山 紘史 日本電気株式会社 顧問
柿原 泰 東京海洋大学海洋科学部海洋政策文化学科 准教授
小林 悦夫 財団法人ひょうご環境創造協会 顧問
辻 篤子 朝日新聞社 論説委員
中島 秀人 東京工業大学大学院社会理工学研究科 准教授
萩原 なつ子 立教大学社会学部 准教授
藤垣 裕子 東京大学大学院総合文化研究科 准教授
渡部 潤一 国立天文台天文情報センター センター長