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資料2

平成19年度新規採択
研究開発プロジェクトおよびプロジェクト企画調査の一覧

【犯罪からの子どもの安全】

 総評 : 領域総括 片山 恒雄 (東京電機大学 教授)

 このような名前の研究がスタートするというと、国の内外を問わず100%の人が、「興味深く、意義のある分野ですね」という。それぞれが無限の将来を持ちながら、子供というハンディを背負うグループの人たちを犯罪から守ることが大人の責務であることは、説明するまでもない。問題は、これが研究開発のテーマとして適切かであり、文科省等がすでに政策的に投資してきた部分と重複しないかという点である。これらに関しては、開発テーマを取上げることを決めていただいた場でも、多くの意見があったことは承知している。
 今回の公募に対しては、1年目から本格プロジェクトを始めたいというもの27件、本格プロジェクトの準備研究をしたいという6ヶ月の企画調査16件、合計43件の応募があった。応募グループは、現場で見守り活動などを行ってきた民間のグループ、各種機器から安全システムの開発までソフト・ハードの幅広い研究者、都市計画や犯罪の専門家まできわめて広い分野にわたった。審査は、12人のアドバイザリー・コミッティーのメンバーが行い、本格プロジェクトに対しては4人、企画調査に関しては3人が提案書を読み、全員でその査読結果を持ち寄り、議論の上で面接対象として前者13件、後者7件を決定した。プロジェクト研究では、「社会への実装を意図していること」「その成果が見込めること」「単なる取り組み事業に留まらず研究開発要素があること」を中心に審査を行った。結果的に、他のグループとの統合、プロジェクト研究の一部の企画調査への移行、予算の大幅な精査等を含め、プロジェクト研究4件、企画調査6件を採択した。
 審査の段階では幾つかの問題点も明らかになった。ある程度は予想していたが、子供の居場所を捕まえる各種機器の開発研究の数が多く、今後、プライバシーの問題とともにこのテーマをどう扱うかには、検討の余地がある。また、今回は対象外としたが、子供の虐待や子供が加害者となる場合などを、このテーマで扱うかどうかもはっきりさせる必要がある。いずれにせよ、多種多様なグループの研究が始まるわけだが、研究者グループとアドバイザリー・コミッティーが共通の考えを持ちつつプロジェクトを展開することが不可欠であり、そのような場を積極的につくっていきたい。

採択研究開発プロジェクト
代表者氏名 所属機関 所属部署 役職 カテ
ゴリ
課題名 課題の概要
池﨑 守 特定非営利活動法人 さかいhill-front forum   理事長 II 子どもの見守りによる安全な地域社会の構築 ハート・ルネサンス 現在、我が国で重要な命題となっている教育再生・地域再生に対して、地域の子どもの安全をテーマに広く人をつなぎ、討論を重ね地域社会の新しい形態を見つけ出す。普及する携帯電話やインターネットのツールを活用し、日本型オリジナリティーに富んだ安全なまちづくりを進めていく中で、価値観の違う人と人のネットワーク・世代を越えた人と人のネットワークを構築し、理想とする地域社会を創る。
坂元 昂 社団法人 日本教育工学振興会   会長 II 系統的な「防犯学習教材」研究開発・実践プロジェクト 「幼児」「小学生」をおもな対象とした、発達の段階に合わせた系統的な「防犯学習カリキュラム・教材等」および「防犯リーダー、防犯教育コーディネータ用カリキュラム・教材等」を開発する。さらに、実証活動を通じて、家庭、学校、地域の実情に合わせた改善・運用が継続的に行われていることを検証する。並行して、これらの活動を支援する「防犯支援システム」を構築する。
日本教育工学振興会の幅広い教育現場、研究者などとのネットワークを活用し、防犯、教育学、教育工学、心理学など、各分野の専門家や当事者からの科学的知見や手法を導入した、防犯のための研究開発、実証活動を行う。
原田 豊 科学警察研究所 犯罪行動科学部 部長 II 子どもの被害の測定と防犯活動の実証的基盤の確立 信頼性と妥当性を備えた尺度によって子どもの犯罪被害の時間的・空間的分布を測定し、被害の情勢や地域社会・個々の住民の特性に即した、効果的で持続可能な対策を立案・評価する手法を確立する。
また、防犯NPO 関係者の情報共有のための携帯型GIS ツールの開発および防犯GISポータルサイトの構築、これらを用いた防犯教育プログラムの開発を行う。
これにより、犯罪から子どもを守る取り組みの実証的基盤の確立をめざす。
藤田 大輔 大阪教育大学 学校危機メンタルサポートセンター/
附属池田小学校
教授/
学校長
II 犯罪からの子どもの安全を目指したe-learningシステムの開発 3段階予防説に基づいて、1 子どもの防御反応・行動解析、2 子どもの犯罪被害の実態、3 安心・安全への信頼構築の3つの観点から、子どもたちに防犯に関わる主体的な意識と行動を芽生えさせる上で効果的な安全教育のe-learning教材を開発する。その後、教材の使用効果について検証しつつ内容の充実をはかり、犯罪からの子どもの安全を目指したe-learning システムを完成させ、Web上での無償公開を目指す。
採択プロジェクト企画調査
代表者氏名 所属機関 所属部署 役職 課題名
清永 賢二 日本女子大学 人間社会学部教育学科 教授 子ども中心の体験型安全教育プログラムの開発
下田 博次 群馬大学 社会情報学部 教授 子どものネット遊び場危険回避、予防システム開発の提案
松本 勉 横浜国立大学 大学院環境情報研究院 教授 ITを用いた子どもの安全確保の研究開発
山中 龍宏 産業技術総合研究所 デジタルヒューマン研究センター内 CIPEC CIPEC 代表 インテンショナル・インジュリー予防のための情報技術
山本 俊哉 明治大学 理工学部建築学科 准教授 地域の防犯まちづくり活動計画策定推進支援ツールの開発
渡邉 正樹 東京学芸大学 教育学部 教授 幼稚園・保育所等における幼児の安全管理手法確立のための研究開発
領域総括および領域アドバイザー
  氏名 所属機関 役職
領域総括 片山 恒雄 東京電機大学未来科学部 教授
領域アドバイザー 石附 弘 財団法人国際交通安全学会 専務理事
国崎 信江 危機管理対策アドバイザー
坂元 章 お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科 教授
新谷 珠恵 社団法人東京都小学校PTA協議会 会長 / 世田谷区立小学校PTA連合協議会 顧問
杉井 清昌 セコム株式会社 執行役員 / IS研究所所長
仙田 満 放送大学 教授 / 株式会社環境デザイン研究所 会長
高橋 邦夫 千葉学芸高等学校 校長
戸田 芳雄 国立淡路青少年交流の家 所長
奈良 由美子 放送大学教養学部 准教授
南 哲 関西福祉科学大学健康福祉学部 教授
三輪 真 松下電器産業株式会社 理事 / パナソニックシステムソリューションズ社 技術総括/CTO