本新技術の背景、内容、効果は次の通りです。

(背景) 血管関連医用デバイスには、生体内に容易に挿入できる低摩擦性(易滑性)と、生体成分の付着を抑制できる抗血栓性(血液適合性)が同時に求められています。

 外科手術は、患者に多大な苦痛を与え、治療期間が長いことから、近年、カテーテル等を血管等に挿入し、局所的な治療を施すインターベンション治療が大きな注目を集めています。この治療には、カテーテル、ガイドワイヤー、ステント等の血管関連医用デバイスが使用されているが、いずれも表面特性として、疼痛、癒着、感染等の生体組織の損傷を軽減するため、生体内に容易に挿入できるよう低摩擦性(易滑性)があることと、長期に生体内留置する場合には、血栓等の生体成分の付着を抑制できる抗血栓性(血液適合性)が求められています。しかし、これまで医用デバイスの表面に易滑性と血液適合性を与える方法は、それぞれ独立して開発され、適用可能な医用デバイスに制限を受ける問題点を有していますので、易滑性と血液適合性を同時に付与できる血管関連医用デバスの表面処理法が求められています。

(内容) 医用デバイス表面に易滑性と血液適合性を同時に付与可能なポリテトラフルオロエチレン(PTFE)と、エチレン-アクリル酸共重合体(EAA)との複合微粒子からなるコーティング剤に関するものです。

 本新技術は、医用デバイス表面に易滑性と血液適合性を同時に付与するコーティング剤として、易滑性を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE)と血液適合性に優れたエチレン-アクリル酸共重合体(EAA)との複合微粒子からなるコーティング剤に関するものです。複合微粒子の調整方法は、いわゆるケミカル粉砕法を応用したもので、PTFEを取り込んだ複合微粒子を生成させ、イソプロピルアルコールなどにこの複合微粒子を分散させることで、安定したコーティング剤がえられます。

(効果) 医用デバイス表面に容易に易滑性と血液適合性を同時に付与できる医療用技術で、安全性試験の実施や治験としての臨床データの蓄積を行い、医療用具製造業界に広く利用が期待されます。

 本新技術で得られたコーティング剤は、ディッピング法等の一般的な塗装技術によって、医用デバイス表面に均一に容易にコーティングが可能であり、コーティング後の加熱処理により、PTFE微粒子が膜表面に移行し、医用デバイス表面に易滑性を与えると共に、PTFE/EAAの形成膜が高い血液適合性を発揮するものです。
 更に、EAAは接着性に優れるため、医用デバイス表面にPTFE微粒子を強固に固定させる役割をも担うものです。すでに、動物実験を含めて、最適な複合微粒子サイズやその割合などの基本条件は明確となり、易滑性と血液適合性を同時に満足した結果を得ています。
 本新技術は、容易に易滑性と血液適合性が得られる優れた技術であり、その将来が期待できる医療用技術です。今後は、医療デバイスメーカーと協力し、臨床への実用化に向けた安全性試験の実施、治験としての臨床データの蓄積を行い、効果と安全性を確認し、医療用具製造業界に広く利用が期待できます。

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This page updated on March 25, 2004

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