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別紙2

委託開発の採択課題の内容


課題名: 低温化固相エピタキシャル成長技術
新技術の代表研究者: 筑波大学数理物質科学研究科 教授 村上浩一
開発実施企業: HOYA CANDEO OPTRONICS株式会社
新技術の内容:
 本技術は固相エピタキシャル成長技術により、プロセス温度の低温化及び高品質シリコン結晶の作成を可能とする技術である。
 シリコンナノ結晶材料はナノエレクトロデバイスやケミカル/バイオセンサー等の応用が期待されているが、従来の高温プロセスではドーパントが拡散する問題などがあり、研究開発の妨げとなっていた。
 本技術によればシリコンナノ結晶を低温で作成できるため、ナノエレクトロデバイスの研究開発への寄与が期待され、さらに半導体MOSプロセスの極浅接合形成等半導体プロセスへの適用も可能であるなど幅広い展開が期待される。

課題名: 窒化アルミ複合材料
新技術の代表研究者: 明星大学理工学部 准教授 清宮義博
開発実施企業: 柳河精機株式会社
新技術の内容:
 本技術はAlインゴットをベースに、常圧窒素雰囲気下、従来より低温で熱処理する低コストなAl合金-AlN合成及びこの材料を半凝固鍛造などで加工し、高強度、高靱性な機構部品を造る技術である。
 従来の機構部品はAl合金が主流であり、強度的に不満があった。本技術では従来品に比べ数十%以上の強度が向上、軽量化が可能となる。本開発により工業的な量産化技術の確立を図る。
 本技術によれば、工業的に低コスト・高品質なAl合金-AlNの生産を可能にし、更に自動車以外の他分野の機構部品への幅広い展開が期待される。

課題名: 抗癌剤治療効果遺伝子診断キット
新技術の代表研究者: 千葉大学大学院医学研究院 教授 丹沢秀樹
開発実施企業: 高信化学株式会社
新技術の内容:
 本技術は抗癌剤シスプラチン(CDDP)耐性関連遺伝子群を利用し、治療前に治療効果の有無を遺伝子診断する新規の体外診断薬に関するものである。
 CDDPは癌化学療法の中心的な薬剤であるが、耐性にともない治療効果にばらつきや、一部の患者には奏効せず重篤な副作用に苦しめられる場合があり、患者へ治療効果を事前に予測できることが求められていた。
 本技術では、耐性機構に関連する共通の遺伝子群において、発現増強及び発現減弱遺伝子群を明らかにし、遺伝子の発現量とCDDP耐性との高い相関関係から、治療効果を予測する。
 本技術により、患者の遺伝子からCDDP治療前に耐性または感受性の有無を診断することが可能となり、患者のQOLの向上とともにトータル的に医療費削減にもつながることが期待される。

課題名: 癌スクリーニング用癌自己抗体測定試薬
新技術の代表研究者: 千葉大学大学院医学研究院先端応用外科 講師 島田英昭
開発実施企業: 株式会社医学生物学研究所
新技術の内容:
 本技術は早期癌検出を可能とする癌自己抗体を利用したスクリーニング試薬を開発するものである。
 従来の分泌性癌抗原を検出する腫瘍マーカー測定試薬では癌の早期診断が困難であり、がん検診に用いられることはなかった。一方、最近の研究から、癌抗原に対する免疫反応は癌化初期から惹起されることが知られており、癌自己抗体を測定することにより、より早期の癌を検出できる可能性が示唆されている。本技術では複数の癌抗原に対する自己抗体をターゲットとし、ELISA技術を用いることによりスクリーニング検査に適した試薬を開発する。
 開発された試薬は、がん検診等スクリーニング検査での使用を目指し、従来の検診により検出される癌より、より早期の癌が検出されることにより、癌を死因とする死亡者減少や治療費削減に貢献することが期待される。

課題名: 先天性顔面疾患に用いるインプラント型再生軟骨
新技術の代表研究者: 東京大学医学部附属病院口腔外科 教授 高戸毅
開発実施企業: 富士ソフト株式会社
新技術の内容:
 本技術は患者から採取した軟骨細胞を増殖させ、力学的強度と三次元形態を有するインプラント型再生軟骨を作製するものである。
 従来の再生軟骨は軟骨細胞懸濁液あるいはハイドロゲルの混和物であったが、形態や強度の面で適用範囲が制限される欠点があった。本技術はハイドロゲルと多孔体を併用した足場素材を作ることにより、三次元形態と力学的強度を有する自家軟骨組織を組み立て、さらに再分化誘導培地により脱分化した軟骨細胞を再分化させて、軟骨基質を集積することを可能とした。
 本技術により、先天性顔面疾患などの患者に対して新しいバイオデバイスを提供することが可能となり、QOLの向上などが期待できる。