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科学技術振興機構報 第401号

平成19年6月1日

東京都千代田区四番町5−3
科学技術振興機構(JST)
電話(03)5214-8404(広報・ポータル部広報課)
URL http://www.jst.go.jp

柔軟な関節と柔らかい皮膚を持つヒューマノイドロボットを開発

(人との関わりによって発達するロボットをめざして)

 JST(理事長 沖村憲樹)は、子供の体の大きさで、全身に柔軟な関節(51カ所の可動部分に空気アクチュエータを使用)と柔らかな皮膚(シリコン製皮膚の下にある約200個の高感度触覚センサで全身の触覚を実現)を持つという、これまでにない機能を備えたヒューマノイドロボット「Child-robot with Biomimetic Body (CB2)」を開発しました。
 ロボットが人と関わるためのコミュニケーションの発達原理を探求するためには、人からロボットへの介助など人とロボットの密接な関わりが重要です。従来開発されてきたヒューマノイドロボットでは、人との関わりを持つための機構的に重要な要素が見落とされてきました。つまり、全身の柔らかな皮膚と柔軟なアクチュエータ(筋肉に相当する駆動装置で一般的には電気モータ)が欠落していました。これらの要素を備えることにより、人はロボットと自然に関わることができ、人と密接に関わりながら発達するロボットを実現することができます。
 今回開発されたヒューマノイドロボットCB2はこれらの要件を満たし、柔軟で躍動的な全身運動を実現することができます。これにより人は「ロボットを抱きかかえながら起こす」、「ロボットの手足を直接動かして教える」などの関わりを持つことができます。CB2を用いることで、人と関わることによるロボットの発達を研究することが可能となります。またロボットを発達させることにより、人間社会において適応的に振る舞うことができるロボットの実現が期待されます。
 この研究は、戦略的創造研究推進事業 ERATO型研究「浅田共創知能システムプロジェクト」(研究総括:浅田稔 大阪大学大学院工学研究科 教授)の一環として、社会的共創知能グループ(グループリーダー:石黒浩 大阪大学大学院工学研究科 教授)が行ったものです。

<研究の背景>

 複雑な人間社会において人と共存するロボットを実現するためには、ロボットが人と関わるためのコミュニケーションの発達原理を明らかにすることが重要です。本研究グループは、人の知能創発過程の理解・構成に基づいて、人と関わる知的なコミュニケーション機械の原理、さらには人の社会発達の原理を探求しています。そうした原理を探求するには、人と自然に関わることのできるヒューマノイドロボットが必要です。
 従来開発されてきた人間大のヒューマノイドロボットは、硬い金属の体と強力な電気モータによって駆動される関節を有していますが、それらは安全面や見た目が与える印象において、人との自然な関わりを阻害してしまいます。また、人との関わりにおいて重要な感覚である視覚、聴覚、触覚のうち、触覚については重要視されていませんでした。

<本研究の成果>

 本研究では、全身の可動関節が柔軟な空気アクチュエータ(圧縮空気の圧力を利用したアクチュエータ)で駆動され、全身が柔らかなシリコン製で触覚センサを有する皮膚で覆われた人間大のヒューマノイドロボットCB2を開発しました。CB2は身長130cm、全身が56個のアクチュエータで駆動され、様々な全身運動だけでなく、表情を作ることも可能です。人との自然な関わりを実現するため、眼球駆動用以外の51個のアクチュエータに、柔軟な空気アクチュエータが用いられ、全身は柔らかなシリコン製の皮膚で覆われています。またセンサとして、頭部に2つのカメラ、2つのマイクロフォン、そして全身の皮膚の下に197個の触覚センサを備えており、これらを用いて周囲の状況を認識することが可能です。CB2が柔らかな体を持つことにより、従来の人間大のヒューマノイドロボットでは困難であった「ロボットを抱きかかえながら起こす」、「ロボットの手足を直接動かして教える」など、人とロボットとの密接な関わりを実現することができるようになります。

<今後の展開>

 ロボットが人とコミュニケーションを成立させる発達過程を実現するためには、その発達を導くために、人によるロボットへの介助が必要不可欠です。そこでCB2を用いて、人と関わることによるロボットの発達について研究を行います。上述したように、人はCB2と密接な関わりを持つことができます。またCB2の子供らしい大きさ・見かけにより、子供と養育者の関わりを再現することができます。 日常生活におけるCB2と、養育者としての人との関わりを実現するための対人反応機能・運動機能・感覚−運動統合機能について研究します。また人の乳幼児のコミュニケーションの発達過程の観測を通して、人の対人関係における発達過程をモデル化します。この2つを融合させ、コミュニケーション能力において発達するロボットを実現しつつ、人間の発達を理解する研究に取り組みます。

(写真)開発したロボット「Child-robot with Biomimetic Body (CB2)」

<研究領域>

戦略的創造研究推進事業 ERATO型研究
研究領域:「浅田共創知能システムプロジェクト」
研究総括:浅田 稔 大阪大学大学院工学研究科教授
研究期間:平成17年度〜平成22年度

<お問い合わせ先>

浅田 稔(あさだ みのる)
 独立行政法人科学技術振興機構
 ERATO浅田共創知能システムプロジェクト 研究総括
 大阪大学大学院工学研究科教授
 〒565-0871 大阪府吹田市山田丘2-1
 大阪大学大学院工学研究科フロンティア研究棟1号館4階
 Tel: 06-6876-8884 Fax: 06-6876-8994
 E-mail:

黒木 敏高(くろき としたか)
 独立行政法人科学技術振興機構
 戦略的創造事業本部 研究プロジェクト推進部
 〒102-0075 東京都千代田区三番町5 三番町ビル
 Tel: 03-3512-3528 Fax: 03-3222-2068
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