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科学技術振興機構報 第389号

平成19年3月28日

東京都千代田区四番町5−3
科学技術振興機構(JST)
電話(03)5214-8404(広報・ポータル部広報室)
URL http://www.jst.go.jp

優れた結晶品質を有する窒化アルミニウム単結晶の開発に成功

 JST(理事長 沖村憲樹)は、独創的シーズ展開事業・委託開発の開発課題「窒化アルミニウム単結晶の製造技術」の開発結果をこのほど成功と認定しました。
 本開発課題は、早稲田大学名誉教授 一ノ瀬昇らの研究成果を基に、平成15年12月から平成18年12月にかけて、株式会社フジクラ(代表取締役社長 大橋一彦 東京都江東区木場1-5-1、資本金 53,075百万円、電話:03-5606-1063)に委託して、企業化開発(開発費約310百万円)を進めていたものです。
 本新技術は、青色・紫外発光素子、および高耐圧・高周波素子の実現に有望な基板材料である窒化アルミニウム単結晶の製造技術に関するものです。
 巨大市場に成長しそうな青色・紫外、白色LED、および高耐圧・高周波電源ICなどの生産に必要なワイドギャップ化合物半導体注1)として、Ⅲ属窒化物半導体である窒化アルミニウム単結晶が非常に有望です。しかし、これを従来の昇華法注2)で成長させる場合、結晶欠陥が多数でるため、素子の実用化を困難にしていました。
 本開発では、炉内の温度プロファイル、昇華原料のガス・反応ガス・キャリアガスのガス導入からガス排出までの流れについて解析を行い、その結果を実験条件にフィードバックすることにより、単結晶成長に最適な条件を効率良く求めたことで、種子結晶の結晶成長温度に至る以前に生じる結晶欠陥の生成を抑制することができました。その結果、昇華装置の機構・機能の改良および各条件の最適化で、結晶欠陥密度を大幅に低減し、単結晶の結晶均一性を向上させた高品質な窒化アルミニウム単結晶自立基板の製造技術を確立しました。
 本技術により作成された窒化アルミニウム単結晶は、照明用の高出力白色光発光素子や消毒・殺菌装置用深紫外発光ダイオード、青色・紫外半導体レーザー、次世代・次次世代DVDなどの高密度記録用半導体レーザー、高温・放射線などにさらされる場所で使われる半導体素子、高耐圧かつ高周波で動作する電源ICなどの基板材料として、広い領域で利用が期待されます。


本新技術の背景、内容、効果の詳細は次の通りです。

(背景) IT社会を支える発光デバイス、パワーデバイス、高周波デバイスの特性向上や新たな用途開発のため、高品質な窒化アルミニウム(AℓN)単結晶の製造技術の確立が強く望まれてきました。

近年、

・青色〜深紫外で動作する発光素子
・超高耐圧で超高効率なパワーデバイス
・従来のSi(ケイ素)、GaAs(砒化(ひか)ガリウム)などの半導体材料では実現不可能な高周波数領域で動作する高周波デバイス
などの開発競争が国内外で非常に盛んに行なわれておりますが、従来、これらのデバイスを作るための材料として、サファイア基板などの上に窒化ガリウム(GaN)や窒化アルミニウム(AℓN)の単結晶薄膜を生成してエピウェハ注3)として用いる方法が主流でした。しかし、異種材料の上にGaN、AℓNの単結晶層を作製したエピウェハでは、高品質な単結晶薄膜を得ることが原理上難しいため、高性能・高信頼性のデバイスを得ることは困難でした。
 この問題を根本から解決する方法として、従来よりGaNやAℓNなどの窒化物単結晶を下地材料として用いる方法が提案されてきましたが、AℓNはこれらの材料の中でもとりわけ、高い耐圧特性・優れた電子特性を有し、深紫外領域まで透明な光学特性と高い熱伝導特性を持つことなどから、大きな期待が寄せられている材料です。
 しかし、AℓNの単結晶、特にデバイスの実用化に必要なサイズ・品質の単結晶を得ることは非常に困難であり、高品質なAℓN単結晶の製造技術の確立が強く望まれてきました。

(内容) 青色〜深紫外発光素子やハイパワー電子デバイスの性能向上に大きく寄与する、高品質でデバイス作製に足るサイズの窒化アルミニウム単結晶を製造するプロセスを開発することに成功しました。

 本新技術は、高品質でデバイス作製に足るサイズの窒化アルミニウムの単結晶を製造するプロセスに関わるものです。
 窒化アルミニウム(AℓN)の単結晶を製造する方法として、昇華法、HVPE注4)法などの技術を検討してきましたが、結局、原料のAℓN粉末を入れた坩堝(るつぼ)を2000℃付近の高温に保ち、原料粉末を昇華させ、原料部より低温部に配置した種結晶基板上にAℓN単結晶を成長させるプロセスを採用しました(図)
 本新技術では、炉内の温度プロファイル・圧力・ガスの流速などを細かく調整することにより、単結晶の成長温度に至る以前に生じる結晶欠陥の生成を抑制し、高品質なAℓN単結晶を得ることが出来るようになりました。開発においては、温度プロファイルとガスの流れおよび反応を解析し、昇華反応プロセスの改良、及び各条件の最適化を行いました。これにより、結晶欠陥を大幅に低減させ、単結晶の結晶性も向上させることに成功しました。

(効果) 青色〜深紫外発光デバイスやパワーデバイス、高周波デバイスなどを製造する際、本新技術により得られた窒化アルミニウム(AℓN)単結晶を基板材料として下地に用いることにより、従来実現不可能であった性能や、高い信頼性を持つデバイスを得られることが期待されます。

 本新技術により得られるAℓN単結晶は、下記のようなこれまでにない特性を有するデバイスを得ることが出来るものと期待されます。

1結晶欠陥が少なく、結晶性も良好であるため、このAℓN単結晶を基板材料として用いることにより、高性能・高信頼性のデバイスを実現できることが期待されます。
2AℓN単結晶自体が有する、高い耐圧特性・優れた電子特性・深紫外領域まで透明な光学特性・高い熱伝導特性などの優れた特性から、
・ 青色〜深紫外で動作する発光素子
・ 超高耐圧・超高効率パワーデバイス
・ 従来のSi、GaAs等の半導体材料では実現不可能な高周波数領域で動作する高周波デバイス
用語解説
図 本新技術において用いた坩堝(るつぼ)の構造、及びガスなどの流れ
開発を終了した課題の評価

<お問い合わせ先>

株式会社フジクラ 材料技術研究所
理事 真田 和夫(サナダ カズオ)
金属材料開発部 係長 石井 裕(イシイ ユウ)
〒135-8512 東京都江東区木場1−5−1
TEL: 03-5606-1063 FAX: 03-5606-1511

独立行政法人科学技術振興機構
産学連携事業本部 開発部 開発推進課
菊地 博道(キクチ ヒロミチ)、福富 博(フクトミ ヒロシ)
〒102-8666 東京都千代田区四番町5−3
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