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<用語解説>

(注1)ゼーベック効果
 金属や半導体の棒に温度差を与えると、両端の化学ポテンシャル(電位)に差が生じます。この化学ポテンシャルの差が熱起電力(電圧)となりn型材料では電子が、 p型材料では正孔が、それぞれ電位差を解消する方向に動きます。熱起電力は温度差に比例して変化することが知られています。単位温度差あたりの熱起電力はゼーベック係数と定義され、熱電変換材料の性能を表す重要な因子の一つです。ゼーベック(1770~1831)は、エストニア生まれの科学者です。

(注2)ペルチェ効果
 ゼーベック効果の逆効果で、金属や半導体の棒に電流を流すことによって、棒の片端が冷える物理現象です。電子冷却とも言われ、フロンなどの冷媒を使わず、振動や騒音が出ないという利点があります。携帯型クーラーバックやコンピュータの冷却に応用されています。ペルチェ(1785~1845)は、フランス生まれの科学者です。

(注3)チタン酸ストロンチウム
 人工宝石としても知られるペロブスカイト型(単位格子0.4ナノメートル)の酸化物結晶です。元々は電気を通さない絶縁体ですが、不純物として少量のニオブを添加したり、酸素を引き抜くことで電子が生成し、電気を通すようになることが知られています。構成元素の地表付近に存在する割合(クラーク数)は酸素(49.5%)、チタン(0.46%)、ストロンチウム(0.02%)であり、最も少ないストロンチウムにおいてもビスマス(0.00002%)の1000倍です。また、融点は2080℃であり、フッ酸以外の酸やアルカリには溶けないため、非常に安定です。

(注4)ニオブ
 原子番号 41の元素で、元素記号はNb、のバナジウム族元素の一つです。チタン酸ストロンチウムに添加することにより、電子が発生します。チタン酸ストロンチウム中では、+5価のニオブイオンが、+4価のチタンと入れ替わり、別のチタンが+3価に還元されます。ニオブ1個に対して電子が1個生成し、この電子がキャリアとなって、チタン酸ストロンチウムの結晶中を動きます。

(注5)熱起電力
 金属や半導体の棒の両端に温度差を与えることによって発生する電圧のことです。温度差1度あたりの熱起電力はゼーベック係数と呼ばれ、熱電変換材料の性能を示す因子の一つであり、電池における電圧に相当します。

(注6)二次元電子ガス
 異種半導体の接合界面に溜められた高濃度の電子層のことです。狭い二次元の空間に強制的に閉じ込められた電子は、三次元の状態と比較して運動の自由度が制限されるため、量子サイズ効果と呼ばれる様々な特異現象を引き起こします。今回の巨大熱起電力もこうした量子サイズ効果の一つだと考えています。