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資料1

JSTサテライト茨城、静岡、滋賀、徳島 平成18年度育成研究 採択課題一覧

サテライト 研究開始年度 研究課題名 申請者 研究
期間
(年)
研究概要
代表研究者 共同研究機関 共同研究企業
茨城 H18 ドライプロセスによる3次元高密度微細配線要素技術及び電子モジュール実装技術の開発 茨城大学 工学部 教授 前川 克廣 茨城大学
茨城県工業技術センター
ハリマ化成(株)
御田技術士事務所
(株)ピーエムティー
3 金属ナノペーストのインクジェット印刷による微細配線、レーザ焼結による機能膜形成、及び積層造形技術による積層化と封止を要素技術として、3次元高密度微細配線電子モジュールをすべてドライプロセスで製造するための基盤技術の研究と実装装置開発を実施する。
茨城 H18 介護予防リハビリ体操インストラクター補助ロボットの開発 産業技術総合研究所 知能システム研究部門 副研究部門長 比留川 博久 産業技術総合研究所
茨城県立健康プラザ
ゼネラルロボティックス(株) 2 受講者の好奇心を呼び起こし、介護予防リハビリ意欲を高めることを目的として、インストラクターとともに介護予防リハビリ体操を実行する人間型ロボットを開発する。このロボットは、身長は50cm程度、関節数は20程度で、立位、座位、仰臥位でリハビリ体操を実行し、音声による比較的簡単な対話を行う。
茨城 H18 大面積電子デバイス用基盤技術のための大気圧マイクロプラズマ処理装置の開発 埼玉大学大学院理工学研究科 物理機能系 機能材料工学コース 助教授 白井 肇 埼玉大学
埼玉県産業技術総合センター
理化学研究所
北野精機(株)
日本電鍍工業(株)
3 サブミリメーターからメートル級の範囲において均一な処理を行いうる大気圧マイクロプラズマジェットの生成およびそのアレイ化を利用した製造処理技術を開発する。これにより、液晶駆動用薄膜トランジスターおよび薄膜太陽電池等の製造プロセスにおいて最も重要な基盤要素技術である1非晶質薄膜の短時間結晶化技術、2局所領域におけるマスクレス金属・機能性薄膜高速形成技術、3Siの高精度・高速エッチング技術を大気圧で実現する。
茨城 H19 抗癌剤徐放性アパタイトによる骨腫瘍局所治療システムの開発 筑波大学大学院人間総合科学研究科 臨床医学系整形外科 講師 坂根 正孝 筑波大学
物質・材料研究機構
(株)イソメディカルシステムズ 3 医療ニーズの高い、転移した骨腫瘍の局所治療を目的とし、骨組織への適合性と薬剤(抗癌剤)の徐放性を併せ持つアパタイト系の局所滞在型製剤の開発とその骨患部への注入システムを確立する。
茨城 H19 多重ガンマ線による迅速・非破壊・高感度微量元素分析法の開発 日本原子力研究開発機構 原子力基礎工学研究部門 研究主席・Gリーダー 大島 真澄 日本原子力研究開発機構 (株)東レリサーチセンター 3 原子炉から外部へ取り出した中性子を試料に照射し、核反応と同時に放出される複数のガンマ線を同時計数測定することにより、迅速・非破壊で、多くの元素を微量定量することに成功した。本研究では、ガンマ線検出器と定量ソフトウェアを開発して同分析法を実用化し、食品分析等への適用を可能にする。
静岡 H18 光電子分光法の深さ方向分析用帯電液滴衝撃エッチング装置 山梨大学
クリーンエネルギー研究センター
教授 平岡 賢三 山梨大学 日本電子(株) 3 帯電した微細氷滴を電位加速して有機物の表面に衝突させ、単分子層レベルで剥離するスパッタ技術に関するものである。
微小氷滴は、帯電した液滴を真空下に放出し、急冷することで形成する。表面の剥離は、氷滴と有機物の衝突に伴う衝撃波により生じるため、試料内部を破損・汚染することなく、有機物を極めて薄くスパッタすることが可能である。
本技術により、損傷に弱い有機物薄膜の深さ方向分析性能が格段に向上することが見込まれるため、有機EL素子のような電子デバイスの研究開発などに活用されることが期待される。
静岡 H18 廃油脂資源からリボフラビン生産技術の開発 静岡大学
創造科学技術大学院 統合バイオサイエンス部門
教授 朴 龍洙 静岡大学 水澤化学工業(株) 3 製油工場から排出される廃白土に含まれる植物油を炭素源として、効率よくリボフラビンを製造するリボフラビン(ビタミンB2)生産菌を活用したリボフラビン製造技術を確立する研究である。
廃白土には35%程度油脂分が残存しているがこれまで廃棄物として廃棄処分されていた。申請者は新たに見いだしたリボフラビン生産菌による動植物油を炭素源としたリボフラビンの製造方法に関する特許を既に有している。本技術を活用し、さらに工業化するためのリボフラビン生産収率の向上、高効率分離・抽出技術の確立を目指している。
静岡 H19 簡易型プラズマ低温滅菌機の開発 静岡大学
創造科学技術大学院 ナノビジョンサイエンス部門
創造科学技術研究部長、教授 永津 雅章 静岡大学
浜松医科大学
ジーマ(株) 3 マイクロ波発振器を駆動源として用いた低圧放電プラズマ滅菌機の開発に関する研究である。
殺菌作用は空気中に含まれる酸素と窒素の放電によって生成される酸素ラジカルによる細菌のエッチング効果と励起窒素分子から放射される紫外線による効果によって達成される。中小医科・歯科医院向けの安価な殺菌装置であり、我が国における初めてのプラズマ殺菌装置の実用化を目指している。
静岡 H19 新規食品成分を用いた高機能食品と植物成長調節剤の開発 静岡大学
創造科学技術大学院 統合バイオサイエンス部門
教授 河岸 洋和 静岡大学 焼津水産化学工業(株)
フジ日本精糖(株)
三井農林(株)
3 キノコ、マコモダケ、イヌリン、茶について生理活性成分の精製・単離と作用機序の解明を進めるとともに、効率良い成分抽出技術を確立し、機能性を利用した食品や植物成長活性を利用した商品の開発をおこなう。
申請者はこれまで、農水産物をはじめとする静岡県の食品関連資源の中から生理活性成分の検索を行い、抗菌、抗炎症、抗糖尿病、抗認知症、抗骨粗鬆症効果等、健康に有益な効果のある成分や植物の成長調節(促進・抑制)効果を持つ成分があることを見いだし、その有用性についても実証されつつある。
本研究により、高齢化社会に向けた生活習慣病予防やゴルフ場、住宅や道路などの緑化管理などを通して社会的貢献が可能と考える。
滋賀 H18 セリシンを利用した新しい細胞培養のための添加剤の開発 福井大学
大学院工学研究科 生物応用化学専攻
助教授 寺田 聡 福井大学 セーレン(株) 3 現在、ほ乳類細胞の培養によって様々なバイオ製品が生産されており、さらに多くが開発中である。これらの生産の効率向上が重要であるが、ほ乳類細胞培養におけるコスト高の主因は、(1)培地、(2)生産物の濃度が低いことに起因する分離精製プロセス、があげられている。とくにバイオ製品は医薬品として利用されるものが多いため(3)高い安全性、も重要である。申請者らは、絹の精練過程で廃棄されてきた絹由来のタンパク質セリシンに牛胎仔血清と同様の細胞増殖および物質産生促進活性があること、および細胞死滅を抑制する効果を見いだしている。加えて、セリシンは高圧蒸気滅菌が可能なため、安全性も高い。この成果を基に、「セリシンと他の栄養因子からなる細胞培養添加剤」を開発する。
滋賀 H18 パルスレーザー照射表面ナノ加工による低フリクション自動車摺動部品の製造技術の開発 福井大学
大学院工学研究科
教授 岩井 善郎 福井大学
福井県工業技術センター
福井工業高等専門学校
アイテック(株)
(株)松浦機械製作所
3 申請者らは、超短パルスレーザーを硬質薄膜に照射することにより、形状が制御されたレーザー波長の1/10~1/15サイズのナノ構造を薄膜表面に形成する刃物・薬品レスの加工技術を開発している。この技術を基に、超短パルスレーザーを用いて曲面の摺動面にナノ構造を形成することにより、硬質薄膜等の摩擦係数を大幅に低減できる表面ナノ加工技術とピストンリングやシリンダライナ等のエンジン摺動部品の表面加工装置を開発する。
本技術は、超短パルスレーザーによる非熱型光加工技術であり、従来の工具による機械加工や化学薬品によるエッチング加工技術に比べて、ハイクリーン、非接触で硬質表面にナノ構造の微細化加工ができる等の優位性がある。また、現行品よりも10~20%摩擦を低減できる表面加工を可能にし、加工溝の微細化や単工程での加工が可能であり、機能・コスト面で従来製品と差別化できる。
滋賀 H19 アルツハイマー病の新規MR画像診断薬の開発 滋賀医科大学 分子神経科学研究センター 教授 遠山 育夫 滋賀医科大学
滋賀県工業技術総合センター
石原産業(株) 3 申請者らが開発したアルツハイマー病の画像診断薬の「Shiga-X」は、老人斑結合能をもつ化合物を基に、フッ素MR感度を向上させるため化学構造を工夫した新規化合物であり、先行するMR診断薬を凌駕する感度をもつ。育成研究では、臨床で汎用されている3テスラMR装置での検出を目的として、フッ素の原子数と位置をデザインした新規誘導体を創製する。すでに、先行薬をさらに上回る感度をもつ誘導体の合成に成功している。育成研究期間内に研究用試薬として商品化を企画するとともに、順次安全性試験を実施し、育成研究後には前臨床試験に移行し、アルツハイマー病の医療用診断薬としての製品化を目指す。
滋賀 H19 放射光を用いた高感度・高空間分解能赤外顕微鏡の開発とナノデバイス・医薬・バイオ研究への応用 立命館大学 COE推進機構 教授・SRセンター長 太田 俊明 立命館大学
長浜バイオ大学
滋賀県工業技術総合センター
(株)東レリサーチセンター 3 ナノ・バイオデバイスの評価には、低エネルギー、高空間分解能での非破壊分析が必須となる。立命館大学SRセンターには小型放射光蓄積リング「オーロラ」があり、軟X線領域の分光研究やマイクロマシンの製造に利用されている。
この放射光は赤外領域もカバーする光源であり、実用化を検討しているのは、高感度で高い空間分解能の赤外顕微鏡ビームラインである。赤外ビームラインでは、如何に大きい立体角で赤外放射光を取り込むかが課題となる。我々は特殊な工夫で、高輝度で大強度の赤外光を取り込む方法を考案した。この赤外光源をFTIRと顕微システムをとりつけた装置に導入することにより、中赤外領域(1,000~5,000cm-1)で市販装置よりも一桁高空間分解能(2~5μm)の顕微鏡を開発する。これによって、官能基で選別した空間分布を高分解能で得ることができ、ナノ・バイオ材料開発への多大な貢献が期待できる。
徳島 H18 高周波バリア放電プラズマと鉄系酸化触媒を用いた微粒子の低温酸化によるディーゼル排気後処理装置の開発 徳島大学大学院ソシオテクノサイエンス研究部 助教授 木戸口 善行 徳島大学 (株)長峰製作所 2 地球の大気質改善と石油資源の有効利用に対して、運輸部門のCO2排出量の抑制と有害排気物質である窒素酸化物(NOx)および微粒子の低減は緊急の課題である。ディーゼル排気では、効率よくNOx低減を図るために微粒子の低減が求められている。本研究では、ディーゼル排気後処理法として、バリア放電技術と触媒技術を複合化して、微粒子の低温酸化を図る。まず、プラズマ反応で排気ガス中の一酸化窒素(NO)を二酸化窒素(NO2)に転換し、このNO2とプラズマガスおよび鉄系酸化触媒により、排気ガス中の微粒子を高効率で低温酸化処理し、最終的にNO処理を行う。従来のディーゼル排気後処理技術では、貴金属触媒を適用しているため、排気中の硫黄分による被毒で触媒劣化が起こること、微粒子処理に高温を要すること、コスト高であることなどが問題点となっている。これに対して、本研究の装置では、後処理装置としてこれらの問題をクリアできる。また,従来の後処理装置とは異なり、走行条件追従型であり、小型化を図ることができるという特徴をもっている。
徳島 H18 微生物・昆虫のモニタリング法の開発およびオーダーメイドタイプ殺菌・殺虫剤の開発 徳島大学大学院ソシオテクノサイエンス研究部 教授 高麗 寛紀 徳島大学 アース・バイオケミカル(株)
深江化成(株)
タマ化学工業(株)
3 既存の殺菌・殺虫剤は、標的の菌や昆虫だけでなく、その環境に存在する多くの菌や昆虫までも駆除することになり、環境を破壊する一因となってきた。本研究では、これまで集積されてきた菌や昆虫のDNA データベースを利用して、様々な環境に存在する微生物や昆虫などの種類を同定し、またその菌数・虫数を測定し、そのデータを基盤として、その環境に適した、標的特異的な殺菌・殺虫、つまり「オーダーメイド殺菌殺虫」を行う技術および製品を開発する。
徳島 H19 サイトカインを用いた精神的ストレスの評価技術 徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部 教授 六反 一仁 徳島大学 片倉工業(株) 3 代表研究者は、DNAチップを用いて、ストレス応答を末梢白血球の遺伝子発現変化で捉える技術を確立し、サイトカイン関連遺伝子の発現パターンは精神的ストレスの指標になること、ストレスに起因するうつ病や慢性疲労症候群の患者には、疾患特有のサイトカイン関連遺伝子の発現異常が認められることを見い出している。従来、ストレスは神経・内分泌・免疫系が関与する複雑系の反応であるにも関らず、ストレス評価に免疫系の指標は用いられてこなかった。この背景には、糖付加等の修飾を受けたナチュラルなサイトカインを効率よく発現させる技術と優れた抗体がなく、高価だが信頼性の低い抗体を使用せざるを得ない現状があった。本研究では、独自のストレス評価技術と共同研究企業の迅速且つ高品質な蛋白質生産技術を有機的に融合して、高感度(高特異性、高親和性)の抗体を作製し、数十項目の蛋白質の血中変動を迅速に測定できる装置開発に発展させる技術基盤を確立する。
徳島 H19 UVA発光ダイオードを用いた汎用型殺菌システムの開発 徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部 助教授 高橋 章 徳島大学 四国化工機(株) 3 感染性微生物の混入のない水や空気、食品等の供給は、社会生活やヒトの健康を維持する上で重要な課題である。しかし現在使用されている殺菌法は、高価であったり、塩素の残留や水銀製廃棄物が生じるなど問題が多く、ヒトの健康に害を与えず、低コストで環境にやさしい殺菌方法が、求められている。研究者らは、新規に発光ダイオード紫外線照射システムを試作し、水殺菌に応用可能であることを見出した。発光ダイオードの使用は、産業廃棄物や残留物が生じないこと、従来とは異なる波長の近紫外線を使用することから機器や食品への劣化作用が低いこと、低コストであることなど利点が多い。本研究では、近紫外線発光ダイオード照射システムを用いた汎用型殺菌装置を開発し、実用化につなげることを目的とする。本研究による殺菌システムは、殺菌対象物を選ばないことや、小型化が可能であること、耐久性に優れていることなどから、様々な場面での食品の殺菌や空気殺菌および表面殺菌などへの実用化が想定される。