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別紙1

平成18年度バイオインフォマティクス推進事業 選定課題一覧

課題名 予測技術を用いた生命システムの同定手法の開発
代表研究者 石井 信(奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科 教授)
概要 近年、生物学情報は膨大に蓄積されているが、個別の生物機能を発現するシステムの要素の実験による確認は多くの労力が必要である。そこで、この構成に関して不足する情報を提示することのできる情報科学的予測技術を開発する。生体分子データから生物機能の予測、あるいは情報抽出(コード)・解読(デコード)技術の開発を行い、実験への仮説提供、分子から機能までのプロセス同定、機能発現のためのミニマムモデルの提示を目指す。開発手法は、神経の極性形成、および多細胞生物の体節形成の系に適用することで妥当性を評価する。

課題名 メタゲノムオーソログ遺伝子統合解析システムの開発
代表研究者 黒川 顕(奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科 助教授)
概要 環境中の細菌は、数百から数万種の集団(細菌叢)を形成し、細菌間相互作用だけでなく、環境と密接に関連しながら複雑なシステムを構成している。これら細菌叢全体をゲノム解析する「メタゲノム解析」により、環境の根幹を形成する細菌叢の生命システムを明らかにすることが可能となりつつある。本課題ではメタゲノム解析により得られた大量のメタゲノムデータから有用な知見を効率よく発見するためのインフラ構築を目的に、メタゲノムデータからの遺伝子配列の予測およびクラスタリングを行い、それらを機能別にデータベース化、可視化する統合解析システムの開発を目指す。

課題名 タンパク質化合物相互作用の網羅的予測手法とデータベースの開発
代表研究者 榊原 康文(慶應義塾大学理工学部 教授)
概要 創薬の初期ステップであるリード化合物の探索において、計算機によるタンパク質-化合物間相互作用予測は有用な手法であり、立体構造結合エネルギーを計算するドッキング解析などの手法が中心的に研究されてきた。本課題ではより汎用性が高く、入手が容易であるアミノ酸配列データ及びマススペクトルデータを用いた、タンパク質-化合物相互作用予測手法の開発を行う。膨大なデータの中から注目する特性を識別して説明する特徴や規則を発見し、未知のデータに対して意義のある予測を行う統計学的学習手法の一つであるSVMを適用して、網羅的な相互作用予測を行う。

課題名 高精度タンパク質間相互作用予測システムの開発
代表研究者 清水 謙多郎(東京大学大学院農学生命科学研究科 教授)
概要 生命システムの解明には原子レベルでの詳細なタンパク質間相互作用解析が重要である。しかし、生化学実験や構造決定などの実験的手法は多大な時間とコストを必要とし、また、既存のバイオインフォマティクス的手法は詳細な機能解析を行うのに十分な精度を得ることが困難である等、新たな手法の開発が必要である。本課題では相互作用部位予測、ドッキングシミュレーション、高精度複合体モデリング及びダイナミクス解析の3つのアプローチから、高速かつ高精度のタンパク質-タンパク質、タンパク質-低分子の相互作用予測・解析システムの開発を目指す。

課題名 転写制御領域の構築原理解明
代表研究者 中井 謙太(東京大学医科学研究所 教授)
概要 ゲノム塩基配列に書き込まれた遺伝情報の解釈、中でも転写制御情報の解釈は、バイオインフォマティクスのみならず、現代分子生物学の最大の課題の一つである。本課題ではゲノム比較に基づくプロモーターの進化モデル構築、組織特異的発現を示すプロモーター群の持つ共通構造のモデル化、培養細胞から得られる遺伝子活性データを用いた人工プロモーター解析を行う。これによって、遺伝子発現制御機序の構築原理の解明及びその分子進化的変遷の解明を目指し、得られた結果はデータベース化する。