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科学技術振興機構報 第355号

平成18年11月7日

東京都千代田区四番町5-3
科学技術振興機構(JST)
電話(03)5214-8404(広報・ポータル部広報室)
URL https://www.jst.go.jp

無線周波の利用効率を高める信号処理技術を開発するベンチャー企業設立

(JST大学発ベンチャー創出推進の研究開発成果を事業展開)

 JST(理事長 沖村憲樹)では、平成15年度より大学等の研究成果をベンチャービジネスにつなげていくために、起業化に向けた研究開発を行う独創的シーズ展開事業 大学発ベンチャー創出推進を実施してきました。
 この度、平成15年度より開始した研究開発課題「無線LAN国際標準IEEE802.11bおよび11gに準拠した高性能受信チップの研究開発」(開発代表者:末広直樹(筑波大学教授)、起業家:数田泰三)のメンバーが出資して、ベンチャー企業 シグナルデザイン合同会社(代表社員:末広直樹、本社:東京都中央区、資本金20万円)を平成18年8月18日に設立しました。
 モバイル情報通信の需要が拡大し続ける一方で、「無線周波数資源の不足」注1)が深刻な問題となっています。そのため、無線周波数資源の価値とともに、無線周波数資源を高効率で利用する技術の価値も、今後ますます高まるものと予想されます。
 本チームは、無線周波数資源を高効率で利用する技術として、マルチパス環境注2)を有効利用するための信号技術(Suehiro's DFT方式:SD-方式)を開発しました。近年用いられているOFDM方式注3)では、送りたいデータを正弦波注4)に乗せて送るため、直接波と反射波とが加算して受信されるので、受信側でこれをもとの直接波と反射波とに分けられません。このため、OFDM方式では反射波分を有効に利用して受信することができませんでした。
 SD-方式では、送りたいデータに依存した信号波形に変換することで、直接波はもとより、反射波をも有効に利用することが可能になります。同一使用帯域幅、同一使用電力、同一マルチパス環境で比較すると、ほぼ同じ誤り率でOFDM方式の約2.5倍の情報伝送速度を実現できます。すなわち、SD-方式の無線周波数資源の利用効率はOFDM方式の約2.5倍と言えます。
 シグナルデザイン合同会社では、通信半導体メーカーを対象として、開発サポート業務の受託や技術コンサルティング、ライセンシングなどを行いつつ、SD-方式の一般化・標準化を進めます。さらなる無線周波数資源の高効率利用技術に関する発明と技術開発を展開し、特許と技術をライセンスすることで平成24年度までに年間30億円の売り上げを目指します。
 今回の「シグナルデザイン合同会社」設立により、当プレベンチャー事業及び大学発ベンチャー創出推進によって設立したベンチャー企業数は54社となりました。
■用語解説
■(参考)企業概要・事業形態

<お問い合わせ先>

独立行政法人科学技術振興機構
産学連携事業本部 技術展開部 新規事業創出課
〒102-8666 東京都千代田区四番町5-3
米谷 雅之(ヨネヤ マサユキ)
TEL: 03-5214-0016 FAX: 03-5214-0017

シグナルデザイン合同会社
〒104-0031 東京都中央区京橋1-1-1 ダイビル7F 傳田アソシエイツ内
末広 直樹(スエヒロ ナオキ)
TEL・FAX: 029-853-5046(筑波大学末広研究室)