JSTトッププレス一覧科学技術振興機構報 第348号 >用語解説

<用語解説>

(注1)電極
記録電極を直接細胞に刺すと短時間で死んでしまうため、覚醒し行動している動物から脳細胞の活動を長時間記録するためには、細胞の近くに電極を止めて記録する必要があります(細胞外記録法)。そのため、近接した複数の細胞の反応は、近くにある同じ記録電極で検出することになります。

(注2)前頭連合野
前頭連合野とは脳の先端にある部位であり、サルやヒトで特に発達しています。高次機能一般に広く関わっているとされていますが、本研究で用いたような記憶課題を行う際、特に良く活動することが知られています。

(注3)細胞を区別することが全く不可能になる
細胞外記録法では、個々の細胞の反応波形が大きく変動することもありますので、波形だけから細胞を区別することは難しくなります。また、電極近くにある複数の細胞の反応を全て検出することになりますので、それらが同時に反応すると波形が重なってしまい、細胞の区別が全く不可能になります。これらの理由から、課題を行っている動物の近接した複数の細胞活動を分離し解析した研究は、これまでありませんでした。

(注4)独立成分分析を応用した独自の分離法
独立成分分析とは、工学的な信号処理技術の一つであり、特性の異なる信号を分離・抽出するための計算手法です。信号自体の大きさや形に影響されず信号源を分離できるため、本研究チームはその手法を応用し、神経科学実験用の独自の解析法を開発することで、信号源としての個々の細胞活動を分離できるようになりました。

(注5)二種類の記憶課題
サルの眼前にあるディスプレイ上に視覚刺激(四角形)を2回、3秒間あけて提示します。記憶課題Aでは、1回目の刺激の提示時間と2回目の刺激の提示時間が同じか異なるかをレバー押しで答えさせました。サルが正しく答えるためには、1回目の刺激の提示時間を覚えておく必要があります。次の記憶課題Bでは、提示時間ではなく色を覚えさせるため、1回目と2回目の刺激の色が同じか異なるかについて、同様に答えさせました。

(注6)ブレイン-マシン・インタフェース(BMI)
ブレイン-マシン・インタフェースとは、脳の神経活動でロボットなどの機械を直接操作するシステムであり、米国ではすでに四肢麻痺の患者さんへの臨床応用が始まっています。脳からより有効な信号を取り出すためには、脳がどのように情報を処理し、どのような神経活動が情報を現しているのか、知っておく必要があります。