JSTトッププレス一覧科学技術振興機構報 第340号 >用語解説

<用語解説>

注1)分子シャペロン:
細胞内のタンパク質は合成されただけではまだ未成熟で機能しないため、これを正しく折りたたみ、ある場合には複合体を形成させ、生体内で機能を持つように手助けを行う必要があります。この手助けを行うタンパク質を分子シャペロンと言います。また、熱などのストレスでタンパク質が傷まないようにする働きも持ちます。いくつか種類があり、今回のCCTはその中の一つです。 シャペロンの語源は、若い女性が社交界に通用する貴婦人になれるように介添えをする後見人(婦人)のことで、タンパク質の介添え役の意味です。

注2)ポリグルタミンタンパク質
ポリグルタミン(polyQ)を含むタンパク質のことで、ポリグルタミン領域ではβシート構造注8)を取ります。βシート同士は互いに会合しやすく、ポリグルタミンタンパク質中のグルタミンリピート数(繰り返し)が40を越えると、タンパク質は急激に凝集性を獲得し、凝集体を形成して、神経細胞を死に至らしめます。

注3)細胞質ゾル(サイトゾル)
細胞のなかで、核以外の部分を細胞質と言います。細胞質には小胞体やミトコンドリアも含みますが、それら細胞小器官(オルガネラ)を除いた部分をサイトゾルと言います。

注4)フォールディング
タンパク質は、アミノ酸が一列に並んだポリペプチドから、正しく折り畳まれ、高次構造を獲得してはじめて機能をもったタンパク質になります。この正しい折り畳みをフォールディングと呼びます。

注5)RNAi法
特定のタンパク質のmRNA(メッセンジャーRNA)に相補的な短いRNAを細胞に導入することによって、特定のタンパク質の発現だけを抑制する方法です。方法が簡単で、最近はよく用いられる方法です。

注6)ノックダウン
遺伝子そのものを破壊する遺伝子のノックアウトに対して、RNAi法によって特定の遺伝子の発現だけを抑制する方法を遺伝子のノックダウンと呼びます。

注7)蛍光相関解析(FCS, Fluorescent correlation spectroscopy)法
1フェムトリットル(フェムトは10-15)というような極微小の領域を出入りする蛍光物質を、レーザーによって測定し、その物質の大きさや、物質同士の相互作用を測定する技術です。きわめて鋭敏な方法であり、また溶液中での分子の動態をよく反映した方法です。

注8)βシート構造
タンパク質の2次構造の1つで、らせん状のαヘリックスとシート状のβシート構造が代表的です。βシートを持つタンパク質は一般的に凝集しやすく、細胞内で毒性のある凝集体を作りやすい傾向にあります。