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<用語解説>

注1) 光アイソレーター:
 光アイソレーターは順方向には透明で光を通すが逆方向には通さないという非相反的な特性を持つ光部品で、光の進行方向を一方向に制限することが出来る。このために、磁石によって光の偏光面(光の波の向き。進行方向と垂直な向きをとっている。)が回転するというファラデー効果と呼ばれる磁気光学効果を利用しています。偏光面に依存しない光アイソレーターは、ファラデー回転素子に、レンズや複屈折結晶などを組み合わせることで実現できます。光通信システム中では、光ファイバーの接合部分だけでなく、フィルターや光スイッチなどの光部品からのわずかな光の反射によっても逆方向に進む光は生じるため、寄生発振を防止する役割で光アイソレーターが各所に設けられています。

注2) 強誘電体:
 各原子の電気的分極が自発的に揃っている物質。外部からのさまざまな刺激に対して、電気的な応答をすることから、各種センサー、原子間力顕微鏡のカンチレバー、超音波素子、波長変換素子など、さまざまな用途に用いられています。

注3) エルビウム:
 希土類元素のひとつで通常は3価のイオンとして各種の結晶に添加されます。光情報通信の分野では、エルビウム元素の発光波長(1550ナノメートル)が光ファイバーの吸収損失の少ない通信波長帯と呼ばれる波長領域に含まれることから、レーザー材料や光増幅器などに幅広く用いられています。

注4) 光増幅器:
 光信号を電気信号に変換することなく増幅する光部品で、おもに希土類元素の誘導放出による発光を利用した光ファイバー型素子として用いられます。光増幅器は光アイソレーター・励起用の半導体レーザー・波長多重カプラー・希土類元素添加ファイバーなどの光部品からなり、希土類元素添加ファイバーからの双方向的な自然発光による不要な逆方向の光の増幅が雑音の原因となります。光増幅利得の増加にはこの逆方向に進む光を減衰させることが重要となり、光アイソレーターが光増幅器の入口と出口の両方に設置されます。

注5) 相反性:
 相反定理、相反法則、可逆定理とも呼ばれる。光の屈折、散乱、干渉といった現象は、光の向きを逆にしたり、時間の流れを逆にしても、全く同じ振る舞いをするというものです。相反性はビリヤードの球の衝突、ある種の電気回路の振る舞い、素粒子の散乱や反応など、様々な物理現象においてみられます。

注6) GaFeO3
 -70度付近で磁石となる性質を持ち、さらに、一方向に押すことで静電気を発する性質(圧電性)を併せ持つ特殊な物質です。GaFeO3では磁石のNS極の向きと、表面電荷の正負の現れる向きは直交しています。このような複合的な性質を示す物質は現在、マルチフェロイクスと呼ばれます。マルチフェロイクスはそれほど多く知られていないため、現在盛んに研究されています。

注7) 浮遊帯域移動法:
 棒状に固めた試料の一部に、ランプを照射・加熱することで溶融し、試料を下方に引っ張ることで、溶融部に単結晶を育成させる方法です。本研究では、浮遊帯域移動法を用いてエルビウム添加チタン酸バリウムの単結晶の合成に成功しました。