JSTトッププレス一覧科学技術振興機構報 第317号(資料2)新規採択研究代表者・研究者および研究課題概要 > 研究領域:「先進的統合センシング技術」
(資料2)

平成18年度 戦略的創造研究推進事業(CRESTタイプ)
新規採択研究代表者及び研究課題


1 戦略目標 「安全・安心な社会を実現するための先進的統合センシング技術の創出」
研究領域 「先進的統合センシング技術」
研究総括 板生 清(東京理科大学専門職大学院総合科学技術経営研究科 教授)

氏名 所属機関 役職 研究課題名 研究課題概要
伊藤 寿浩 東京大学大学院工学系研究科 助教授 安全・安心のためのアニマルウォッチセンサの開発 動物の健康状態をモニタする無線センサ端末と、動物集団の健康管理を行うアニマルウォッチセンサネットを開発します。特に、パンデミック対策として、鳥インフルエンザ発生の早期発見システムへの応用に主眼をおいた小型・軽量・フレキシブル・メンテナンスフリーなセンサ端末を、超低消費電力MEMSセンサとフィルムシステム実装技術により実現することで、人への感染防止等、人類の健康確保と食の安全・安心の確保に資することを目的とします。
徐 超男 産業技術総合研究所実環境計測・診断研究ラボ 主任研究員 応力発光体を用いた安全管理ネットワークシステムの創出 力学的エネルギーをダイレクトに光エネルギーに変換し、その微粒子一つ一つがセンサ素子として機能する応力発光体によって、ごく微細な異常を広範囲にわたって検出可能なセンサデバイスを開発します。このデバイスを基に、トンネルなどの構造物に対するリアルタイム応力異常検出・応力履歴記録システムを開発し、システムを結ぶネットワークを経て危険兆候を包括的に早期検知する安全管理システムを創出します。
戸辺 義人 東京電機大学工学部情報メディア学科 教授 実世界検索に向けたネットワークセンシング基盤ソフトウェア 本研究は、携帯型端末を有したユーザに対して、平常時および非常時の両面で「実世界検索基盤」を利用した都市生活における安全・安心な行動支援を提供するものです。具体的には実時間センシング情報を含んだ複数の異種類のデータベースに対する情報検索を可能にし、検索時に高次処理により有意情報を抽出し、ユーザにバックエンド支援警報、安心ナビゲーションを提供します。
藤野 陽三 東京大学大学院工学系研究科 教授 都市基盤の災害事故リスクの監視とマネジメント 道路、鉄道、建物群など、線・点群から構成される都市基盤構造物における災害や事故の防止による安全・安心の実現に向け、実用性の高い統合センシングシステムを開発します。本研究は、「構造物・広域環境センシング技術」「ネットワークフュージョン技術」「ハザード・脆弱性の統合的評価によるリスク監視・マネジメント技術」の3つから構成され、2つのフィールド(東大キャンパス、高速鉄道)において有効性を実証的に示します。
山中 一司 東北大学未来科学技術共同研究センター 教授 多種類の危険・有害ガスに対する携帯型高感度ガスセンサシステム 安全のための重点課題として、多くの種類の危険・有害ガスを高感度で迅速に検知する技術が求められています。本研究では、球の弾性表面波(SAW)が平行ビームを形成して多重周回する現象を用いて吸着分子による特性の変化を高精度に計測するボールSAWセンサを高度化し、MEMSによるガス分離カラムと組み合わせて環境中の多種類のガスを検知し、センサネットワークに発信する携帯型の高感度センサを開発します。
(五十音順に掲載)

<総評> 研究総括:板生 清(東京理科大学専門職大学院総合科学技術経営研究科 教授)

 本研究領域では、安全・安心な社会に役立つ将来的なサービスイメージを設定し、それを実現するためのブレークスルー技術、応用プロダクト・システムの実用化・実証までを目指す研究提案と独創的・革新的なセンシング技術、無線ネットワーク基盤技術などの要素技術の創出をも目指しています。
 2年目を迎えた今年度も、48件という多くの応募があり、11名の領域アドバイザーと共に書類審査を行い、11件の提案について面接審査を行った結果、5件の課題を採択しました。選考に当たっては、主に以下の点を重視しました。

(1)安全・安心分野として、昨年度採択課題のカバー分野を勘案し、今年度は構造物の劣化・損傷・診断分野、食の安全分野、人体の安全分野、自然災害分野などに着目した提案。
(2)実現にあたり、超小型センサ、情報処理、微弱無線通信、自然発電などの技術融合と、これら融合技術をベースとしたセンサーネットワーク技術の創成。
(3)ただ理論のみに傾くことなく、現実的な安全・安心システムを描いて着実に段階的にシステム化を進めてゆくこと。
(4)研究技術領域としては、安全・安心な社会の実現に貢献するものという観点で選択し、領域全体としては幅広い分野で成果の出ること。

 以上のことを考慮した結果、今回の提案からは、鳥インフルエンザからの食品の安全分野、配管構造物の劣化・亀裂などを検知する人工構造物の安全分野、過密化が進む都市基盤の安全分野、独創性に優れた技術を用いた携帯型の有害・有毒ガスからの安全分野、センシングネットワーク基盤ソフト分野での優れた提案を選定しました。
 部分的に優れているものの、結果的に採択には至らなかった提案が数多くありました。個々の技術に特化してサービスイメージが明確でなかったもの、逆に核となる基盤技術が不明確あるいは予備的調査の不十分なものなどです。
 来年度も引き続き、上記(1)~(4)の点を考慮した提案が多数あることを期待します。