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科学技術振興機構報 第315号

平成18年7月26日

東京都千代田区四番町5−3
科学技術振興機構(JST)
電話03(5214)8404(総務部広報室)
URL http://www.jst.go.jp

地震時の建物の揺れを大幅に低減する免制震装置の開発に成功

 JST(理事長 沖村憲樹)は、独創的シーズ展開事業 委託開発の開発課題「振動遮断接続機構を用いた免制震装置」の開発結果を、このほど成功と認定しました。
 本開発課題は、早稲田大学名誉教授 奥村敦史の研究成果を基に、平成14年12月から平成17年12月にかけて三和テッキ株式会社(代表取締役社長 小野和男、本社 東京都品川区南品川6丁目5番19号、資本金 4億2300万円、電話:03-3474-4111)に委託して、企業化開発(開発費約51百万円)を進めていたものです。
 1995年の阪神淡路大震災を契機に建築物の耐震性の要求が高まり、現在までに多くの免震建物、制振建物が建築されています。また最近では、今後起こりうる大地震に備え、新築、既存建物を問わず、耐震性の高い建物が望まれていました。
 本事業では、建物に新システムである慣性接続要素注1を付加することで、地震時の建物の揺れを従来より大幅に低減できることが確認されました。
 本新技術では、慣性接続要素を実現させる免制震装置(振動遮断接続装置)と、それを適用させた新しい免震および制振システム(免制震システム)の設計を行いました。新しい免制震システムについては、時刻歴応答解析プログラム注2によるシミュレーションと、検証用の試作機、建物を模擬した振動台での地震波による加振試験でも、応答加速度注3を半減できることを確認しました。本新技術は、新築・既存建物を問わず、建築物の免震性能注4制振性能注5の向上に貢献するものと期待されます。


本新技術の背景、内容、効果の詳細は次の通りです。

(背景)  今後起こりうる大地震に向け、建物の高い耐震性が要求されています。

 1995年の阪神淡路大震災を契機に建築物の耐震性の要求が高まり、現在までに多くの免震建物、制振建物が建築されています。また、耐震に関する研究も活発に行われ、免震構造、制振構造は超高層ビルから戸建住宅まで普及している状況です。一般的に、免震建物、制振建物には、ダンパーと呼ばれる金属材料の塑性や流体の粘性等を利用したエネルギー吸収装置が採用され、地震時の揺れを低減させることにより建物の耐震性を高めています。最近では、今後起こりうる大地震への対策として、既存建物では耐震補強工事が急務で行われ、新築建物にも、より耐震性の高い建物が望まれています。

(内容)  建物の耐震性を向上させる免制震装置とそのシステムに関するものです。

 本新技術は、建物の耐震性を向上させる免制震装置と、それを適用した免制震システムに関するものです(図1)。
 新技術である慣性接続要素は、それにより接続される両端座標の相対加速度に比例する接続力を発生します。本開発では、慣性接続要素を実現する装置(振動遮断接続装置)を開発し、その基本的特性を確認しました。
 この試作機は、直線運動を機械要素の一つとして用いられているボールねじにより回転運動に変換し、ボールねじの先に取り付けられたフライホイールを回転させることで慣性力注6を得る構造となっています(図2図3)。次に、東京大学教授 久田俊明の協力も得て、時刻歴応答解析プログラムを使用したシミュレーションにより、免制震システムの設計を行い、従来技術と比較して、この新技術の有効性の高さがデータから実証されました(図4)。また、装置の試作機と建物を模擬した構造物を用いて、代表的な地震波10波による加振試験を独立行政法人建築研究所の振動台にて実施しました。その結果、新たな免制震システムにおいて大幅に応答加速度が低減されることを確認しました(図5)。

(効果)  新築、既存建物を問わず、耐震性を向上させます。

 本新技術は、従来技術と比べて、1建物の応答加速度を大幅に低減させることができる。2相対加速度に依存した力学特性のため、微小振幅から効果が得られる。という優れた特徴を有しています。また、日本中に残る老朽化した既存建物または新築建物を問わず適用が可能であることから、過去の震災における被害を繰り返さないためにも、建物の免震性能、制振性能の向上に貢献するものと期待されます。

<用語解説>
図1.従来技術と本新技術の比較
図2.振動遮断接続装置の構造及び機構
図3.振動遮断接続装置(試作機)
図4.シミュレーション結果(建物最上階の応答加速度)
図5.実験データ(模擬構造物の最上部の応答加速度)
開発を終了した課題の評価

<お問い合わせ先>

三和テッキ株式会社
第2事業部 袖山 博(ソデヤマ ヒロシ)
〒329-1192 栃木県河内郡河内町中岡本2703
TEL: 028-673-0731 FAX: 028-673-1914

独立行政法人科学技術振興機構
産学連携事業本部 開発部 開発推進課
菊地 博道(キクチ ヒロミチ)、沖代 美保(オキシロ ミホ)
〒102-8666 東京都千代田区四番町5-3
TEL: 03-5214-8995 FAX: 03-5214-8999