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科学技術振興機構報 第298号

平成18年5月31日

東京都千代田区四番町5−3
科学技術振興機構(JST)
電話03(5214)8404(総務部広報室)
URL http://www.jst.go.jp

舌圧による電動車いす運転システムの開発に成功

 JST(理事長 沖村憲樹)は、独創的シーズ展開事業委託開発の開発課題「電動車いす用舌圧コントローラ」の開発結果を、このほど成功と認定しました。
 本開発課題は、株式会社国際電気通信基礎技術研究所 主任研究員の和久本雅彦(現昭和大学歯学部講師)らの研究成果を基に、平成14年3月4日から平成18年2月28日にかけてニッタ株式会社(代表取締役社長 新田長彦、本社大阪市浪速区桜川4−4−26、資本金 7,512百万円、電話:06-6563-1211)に委託して、企業化開発(開発費約156百万円)を進めていたものです。
 手首の筋力障害により、電動車いすの手動操作が困難な症状のユーザーのために、手首以外の方法で、運転操作できるシステムが要望されていました。
 従来、音声や視線、あるいは脳波を利用した入力装置が提案されてきましたが、いずれも、外界のノイズ影響を受けやすいことが難点となっています。
 本新技術は、上あごに装着したマウスピース上のセンサを舌で識別・押圧することにより、外界の影響を受けることなく、電動車いすの前進・後退、左右回転制御用の無線信号を送出し、走行制御系に伝達するシステム(口内ユニットおよび車いす機側ユニット一式)です(図1図2)。センサは、感圧導電性インクを塗布したフィルム状のもので、舌圧力に応じた電圧信号を発生します。この信号を、人体に影響の少ない微弱FM信号に変換し、車いすに設置した受信器に伝達するものです。本システムは、市販の電動車いす(図3)に適用して評価した結果、運転操作性が容易で、かつ口内ユニットも違和感が少ないことが確認されました。
 本新技術により、手動操作が困難なユーザーが、マウスピースを用いて、電動車いすを運転し、生活の質(QOL)注1の向上を図ることが可能となりました。本システムは、電動車いす以外の電子機器に対しても、マウスピースで無線操作する手段を提供できることから、医療や、コンピュータゲームなどエンターティメント分野での応用が期待されます。


本新技術の背景、内容、効果の詳細は次のとおりです。

(背景)  電動車いすの手動操作が困難なユーザーのために、手首を使用しない運転入力方式が要望されてきました。

 手首の筋力障害の症状を持つユーザーにとって、手動操作の電動車いすの運転は非常に困難で、これに代わる入力操作方式が望まれていました。
 手動以外の入力操作方式として、音声入力方式注2視線入力方式注3、あるいは脳波入力方式注4が研究されてきましたが、これらは、いずれも外界のノイズ影響を受けやすいため、確実な運転操作を行うには問題があります。

(内容)  マウスピースに設置したフィルム状感圧センサのスイッチを、舌で識別し、押すことで、電動車いすに信号を伝達します。

 本新技術は、上あごに装着したマウスピース上のフィルム状感圧センサを舌で識別・押圧して、電圧信号を発信させ、人体に影響の少ない微弱FM電波信号に変換して、電動車いすの受信器に送るものです。電動車いすへの信号入力システムは、マウスピースの口内送信ユニットおよび、電動車いす機側の受信ユニットから構成され、マウスピースには4個のセンサ(スイッチ)を設置し、電動車いすの前進・後退、左右回転制御用の無線信号を出します。マウスピースにはつぎの特徴があります。

1.人体に影響の少ない微弱なFM電波(携帯電話の1/1000程度の電力)を使用しています。
2.無線で充電可能なボタン電池を内蔵し、8時間の連続運転が可能です。
3.電波送信のための電子回路を内蔵しています。
4.口を閉じると電源が入る節電システムを採用しています。
5.電子回路は歯科用樹脂に埋め込んでいます。

 本新技術は、閉じた口内で電波信号を発生するもので、光や音声を利用しない理由から、外界のノイズ影響を受けることが少なく、また、重症の筋力障害者であっても、舌の運動機能は利用しやすいために、入力が容易で確実という利点があります。

(効果)  手動操作が困難なユーザーの生活の質の向上を図ることが期待されます

 本開発で、手動操作が困難なユーザーが、このマウスピースを用いて、電動車いすを容易に運転でき、かつ口内違和感が少ないことが確認されました。本システムは、電動車いす以外の電子機器に対しても、マウスピースで無線操作する手段を提供できることから、手動操作が困難な患者からの要望の多いコンピュータゲームのような、エンターティメント分野への参加機会を広げることが期待されます。

<用語解説>
図1 口内ユニット
図2 車いす機側ユニット
図3 電動車いすへの適用状況
開発を終了した課題の評価

<お問い合わせ先>

ニッタ株式会社
RETS事業部 東 輝明(アズマ テルアキ)
〒639-1085 奈良県大和郡山市池沢町172
TEL: 0743-56-8841、 FAX: 0743-56-9770

独立行政法人科学技術振興機構 産学連携事業本部
開発部 開発推進課
菊地 博道(キクチ ヒロミチ)、高野 晃(タカノ アキラ)
〒102-8666 東京都千代田区四番町5-3
TEL: 03-5214-8995 FAX: 03-5214-8999