JSTトッププレス一覧科学技術振興機構報 第281号 > 用語解説

【語句説明】

注1: オートファジー(自食作用)
 細胞が自身の一部をリソソームで分解すること。細胞外のものを取りこんでリソソームで分解する「ヘテロファジー」と対比してつけられた名称です。図1に示すように「オートファゴソーム」という特殊なオルガネラ(細胞内小器官)を介して分解する方法がもっとも一般的です。

注2: ユビキチン・プロテアソーム系
 細胞内のもうひとつのタンパク質分解系であり、オートファジーとは対称的に目的としたタンパク質だけを厳密に識別して分解するシステムです。まず、分解すべきタンパク質にユビキチンという小さな標識が数珠状に結合し、これが目印となってプロテアソームという分解酵素複合体によって分解されます。

注3: リソソーム
 細胞内に存在する、分解を専門とするオルガネラ(細胞内小器官)。多数の分解酵素を含んでいるが、膜で隔てられているため、通常は細胞質成分とは出会わないようになっています。

注4: 小脳プルキンエ細胞
 小脳皮質の分子層と顆粒層の間に一列に並んだ大型の神経細胞。運動機能などに関係します。

注5: 錐体細胞(大脳皮質)
 大脳皮質を構成する神経細胞の一種類で、大型の神経細胞。

注6: 非選択的分解
 オートファジーは細胞内の一部を膜で取り囲んで分解するため、原則として分解は非選択的におこなわれます。異常タンパク質が選択的に取り囲まれているかどうかは不明です。今回のノックアウトマウスの解析結果も、非選択的分解の欠如の結果として単純に解釈することもできますし、オートファジーが起きなくなった結果としてタンパク質が傷害されたと解釈することもできます。

注7: アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病
 神経変性疾患の代表的疾患で、いずれも細胞内外に異常なタンパク質が蓄積することが特徴であり、それが病気の原因であるとも考えられています。痴呆を主な特徴とするアルツハイマー病では細胞外に老人斑(βアミロイドが主成分)、細胞内にタウ蛋白質が蓄積し、運動障害を主徴とするパーキンソン病、ハンチントン病ではそれぞれ細胞内にレビー小体(αシヌクレインが主成分)、ハンチンチン蛋白質(グルタミンの繰り返し構造をもつ)が蓄積します。