JSTトッププレス一覧科学技術振興機構報 第259号 > 用語解説

【用語解説】

1)状態図:温度、組成、圧力等の条件を与えたときに、どのような状態(気体、液体、固体、化合物)が安定なのかを示す図です。合金開発の地図とも言われ、新材料開発のための基礎資料として重要です。
2)強磁性・弱磁性:強磁性は外部から磁場を加えると磁化し、磁場を加えるのを止めても自ら磁化を持ち続ける性質のことです。それに対して、弱磁性は外部からの磁場がなくなると磁化もなくなる性質です。強磁性を持つ材料は磁石など色々な磁気材料に用いられます。
3)磁性形状記憶合金:現在一般に知られているNiTi(ニチノール)合金などの形状記憶合金は、常温時に変形を加えても加熱すると形状が元に戻る性質を持ちます。それに対して、今回開発した磁性形状記憶合金は、熱ではなく磁場を加えることにより形状が元に戻る性質を持ちます。
4)マルテンサイト相:原子の拡散を伴わない、原子が連携してずれいく結晶格子変態(マルテンサイト変態)により生じた低温で安定な相。
5)磁歪材料:ある種の材料(強磁性体)へ磁場を加え磁化すると材料に変形(磁歪)を生じます。また、その材料へ力を加えると当該材料の磁化が変化します。その変形を利用して磁気的変化を機械的変化へ変換したり、その逆の変換をしたりする材料を磁歪材料と呼びます。
6)超弾性効果:形状記憶効果に付随して生じる現象で、見かけ上10%もの可逆的な弾性変形(力を取り除くと元に戻る変形)を起こします。めがねフレームや携帯電話用アンテナに利用されています。
7)圧電素子(ピエゾ素子):ある種の材料へ力を加えると電気が生じたり、電気を加えると変形が生じたりします(ピエゾ効果)。そのピエゾ効果を用いて電気的変化と機械的変化を互いに変換する素子を圧電素子(ピエゾ素子)と呼びます。
8)セラミックス系電歪材料:圧電素子の一種。電圧を加えることにより歪が生じるセラミックス材料。
9)双晶界面:結晶中に見られる格子欠陥の一種。形状記憶材料では、この欠陥は外力により容易に動かす事が可能なため、形状記憶特性に大きな影響を与えます。
10)キューリー温度:強磁性体が磁化を失う温度。強磁性体は通常、外部磁場が0でも磁化を持ちますが、キューリー温度以上になると磁化を失います。
11)磁場誘起逆変態:本合金は、高温で安定な母相が強磁性で、低温で安定なマルテンサイト相が弱磁性なため、磁場を加えますと母相が相対的に安定化して、マルテンサイト変態温度が低下します。従って、マルテンサイト相状態の温度で強力な磁場を加えますと、強磁性の母相へ逆変態を生じます。この様に、磁場を加えたときに現れる逆変態を磁場誘起逆変態と言います。
12)磁性駆動素子:磁場により応力や歪を制御することができる駆動素子。
13)熱磁気エンジン:温度変化による急激な磁気特性の変化を利用したモータ。