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資料4

選定した研究領域及び研究総括の評価

研究領域
  1. 【8億円タイプ】超短パルスレーザー
  2. 【4億円タイプ】時空間秩序
研究総括
  1. 小林 孝嘉 (東京大学大学院 理学系研究科 教授)
  2. 吉川 研一 (京都大学大学院 理学研究科 教授)
評価結果
  1. 研究領域「超短パルスレーザー」は超短パルス光源と超広帯域・超高感度の検出装置を開発し、電子状態、分子振動における動的過程の観察を可能とし、物質科学の新たな展開を図るものである。具体的には、超広帯域の実時間分光、励起状態の実時間分光を目指す。また、パルス内位相制御をした極超短パルス赤外光パルスを用いて、分子振動位相測定および分子振動位相制御を目指す。

    本研究領域において、超短パルスの発生技術および超広帯域・高感度の検出技術の開発により、電子状態、分子振動における動的過程の実時間観察の実現が期待される。光合成の機構解明や蛋白質のフォールディング機構解明など、バイオ、工学等に貢献することが期待される。これにより本研究領域は戦略目標「光の究極的及び局所的制御とその応用」に資するものと期待される。

    小林孝嘉氏は本研究領域の重要な基礎技術である、可視・近赤外領域におけるフェムト秒光パルス発生、極超短近赤外光パルスにおけるパルス内位相制御に関する先導的な研究を行ってきており、本研究領域の研究総括として相応しいと認められる。

    本研究領域において、アト秒軟X線パルス発生、アト秒計測において世界最先端の成果を挙げているマックスプランク研究所Ferenc Krausz博士と共同研究を行うことにより、相互補完的な協力体制が生まれ、両国の高い研究活力が融合することで革新的な研究成果が期待される。

  2. 研究領域「時空間秩序」は、分子論的アプローチと非平衡物理学アプローチから、生命機能を再現するモデル系を構築し、生命現象の本質に迫る新しい方法論の創出を目指すものである。具体的には、DNAの構造制御機構の解明、リン脂質膜中にDNAを閉じこめた人工細胞によるタンパク質合成系の確立を目指す。さらに化学反応のエネルギーを高効率にマクロな運動に変換する分子機械についての研究を行う。

    本研究領域において、生細胞における1分子ナノバイオロジー技術の基盤創成に貢献することが期待される。これにより本研究領域は戦略目標「プログラム化されたビルドアップ型ナノ構造の構築と機能の探索」に資するものと期待される。

    吉川研一氏は、高分子の自己組織化によるナノ構造体の形成、非平衡条件下における散逸構造に関する実験的研究といった、本研究領域の基礎となる重要な先導的研究を行っており、本研究領域の研究総括として相応しいと認められる。

    本研究領域において、DNA単一分子レベルの自己組織化に関する研究に関して先導的な成果を輩出しているフランスのDamian Baigl博士と共同研究を行うことにより、相互補完的な協力体制が生まれ、両国の高い研究活力が融合することで革新的な研究成果が期待される。
評価者
科学技術振興審議会
部会長竹内 伸
委員 石井 紫郎、岩渕 雅樹、小柳 義夫、川嵜 敏祐、郷 通子、榊 佳之、高野 幹夫、東倉 洋一、中西 準子、冷水 佐壽、村橋 俊一、安井 至
専門委員 青野 正和、井上 佳久、樽茶 清悟、難波 啓一、虫明 功臣