別紙2

「物性データとリンクした化学事故データベース」事後評価結果


1.課題名
物性データとリンクした化学事故データベース
 (公開名:リレーショナル化学災害データベース)
 (URL http://www.aist.go.jp/RIODB/RISCAD/

2.開発(運用)責任者
産業技術総合研究所(旧資源環境技術総合研究所)
開発責任者 緒方 雄二(爆発安全研究センター チーム長)
運用責任者 和田 有司(爆発安全研究センター 主任研究員)

3.課題概要
 過去に起こった事故と類似の化学災害を起こさないために利用者に役立つ事故情報の提供を目的として、化学災害の事故事例とその事故に関連した物質の熱的危険性を主とする危険性データ、プロセスフロー図や反応式などの付帯情報、専門家によって解析された事故進展フロー図などをリレーショナルにリンクさせた化学災害事例のデータベースである。また、利用者がより利用しやすいデータベースとするために、最終事象、工程、装置、推定原因、被害事象について専門家によるキーワード階層化を行い、多様な条件による事例検索を可能とし、さらに、検索結果の統計分布のウェブ画面上でのダイナミックなグラフ表示機能を搭載した。英語版も作成した。

<データ項目とデータ量>
事故事例4,104件
事故進展フロー90件
付帯情報43件
物質データ4,985件
熱分析(DSCデータ)71件
(データ件数は平成15年9月末現在)

<開発期間> 平成11年10月~平成14年9月

4.アクセス状況
公開時(平成14年10月)~平成15年9月 :5,628件
*産総研の「研究情報公開データベース(RIO-DB)」移行後
(平成15年4月23日~平成15年9月 :3,438件)

5.外部発表
*開発中
 なし

*開発終了後
年 度 件 数 備 考
平成14年度 4件 セイフティエンジニアリング他
平成15年度 4件 火薬学会春季研究発表講演会他


6.事後評価結果
6-1.当初計画の達成度
 当初目標である「化学物質に起因する火災、爆発、中毒、漏洩などの化学災害事例と化学物質の熱危険性データがリンクしたデータベースの構築」は日・英2カ国語で4100件以上の災害・事故事例と化学物質約5000件を収録して、達成された。当初対象とした通産省・消防庁関係の高圧ガス・危険物関連事故事例が近年関係機関により公開提供され、直接の情報源としては対象外としたため、事例件数としては当初予定を下回ったが、国内最大規模の化学災害データベースである。

6-2.データベースの評価
 事故調査報告書等を元に専門家による解析がなされた事故進展フローや付帯情報の添付は、この種のデータベースとしては大変興味のある試みである。事故進展フローは火薬学会で採用・改良され、公的委員会でも活用される見込みであり評価できる。
 事故事例の解析に基づき、最終事象、工程、装置、推定原因、被害事象についての階層化された索引が付与され、検索画面でメニューから階層的に探索できるようになっている。この検索画面にもう一段工夫を加え、よりユーザーフレンドリーにする余地はあると思われるが、今後の需要分析によって利用者の特徴を把握しながら進めればよい。データの見せ方にも工夫が見られ、防災に役立つデータベースとして、ここまでの仕上がりは順調であると判断する。

6-3.データベース化終了後の公開運用体制および運用状況
 公開後もデータ修正及び新規データの追加、画面の操作性の向上が実施されており、研究所において格別な支障もなく公開・運用されている。
 4月にデータベースが研究室設置サーバから産総研の「研究情報公開データベース(RIO-DB)」へ移行され、公開サーバはRIO-DBのひとつとして産総研の先端情報計算センター(TACC)で管理されており、セキュリティーも含めて安定した環境にある。
 産総研の研究情報公開データベースに移行した4月以降にはアクセス数が増加しており、また、アクセスページ数も民間企業が研究・教育機関の2倍以上あり、本データベースの有用性について一定の評価が得られているものと考えられる。

6-4.運用の今後の展開
 利用者の要望に応えるとともにより有用な活用を目指し、新規事例登録の円滑化、事故発生後の速報体制の確立などへの努力を期待する。あわせて、データ収集及びデータベースの質の改善への注力が望まれる。データベースの性格上、データに誤りのないことが重要である。データ収録時、ならびに事後の検査を厳格にして、ミスの少ない運用体制の整備を図って欲しい。また物質データの部分のみの利用者もかなり多いと思われるので、物質データの活用と、物質データ・災害事例のリンクの方策についての工夫が欲しい。物質データベースとしても使い勝手のよいものになることを期待している。サーバ保守面に関しては、産総研全体の中で安定運用が保証されることになり、心配はない。

7.総合評価
 昨今、各方面で安全と安心が重要な価値として認められるようになってきた。今後いろいろな安全・安心関連データベースの作成が試みられるであろう。本データベースは、これまでのところ一定のデータ蓄積と高度な解析データの付加により、災害情報関連データベースの中で独自の位置を確保しつつあるものと考えられる。特に、産総研の研究情報公開データベースのひとつに位置づけられ、組織的支援を伴って運用とデータ更新が確保されれば、昨今における事故頻発の状況から見ても、社会的に有力なデータベースのひとつに成長するものと期待される。これに向けて、使い勝手の良いデータベースの手本となるよう担当者の一層の努力を期待したい。
 国際的に見ても特色のあるDBが構築されている。初期の目標を達成しており、今後の運用に不安のない環境を整えた点も考慮して、総合評価は「良好」と判断する。

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This page updated on January 30, 2004

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