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科学技術振興機構報 第233号

平成17年11月29日

東京都千代田区四番町5−3
科学技術振興機構(JST)
電話(03)5214-8404(総務部広報室)
URL http://www.jst.go.jp

生殖細胞で染色体を半数化するうえで鍵となるタンパク質Moa1を発見

 JST(理事長:沖村憲樹)の研究チームは、生殖細胞で起こる細胞分裂(減数分裂(注1))の際、重要なはたらきをするタンパク質を発見した。
 従来、減数分裂において正常な染色体(注2)の分配が起こるためには、染色体の中心部分(動原体)がある一定の方向を向いている必要があると言われていたが、その分子メカニズムは謎であった。
 今回、研究チームは、動原体の方向性を決定付けるタンパク質Moa1を発見した。今回の発見は、ヒトの不妊症あるいはダウン症(注3)などの原因解明の研究にも波及効果をもたらすものと期待される。また、動原体の方向性の制御は、染色体分配の根幹をなすもので、本発見は生物学的にも大変重要な問題を解いたことになる。
 本研究成果は、戦略的創造研究推進事業 発展研究(SORST)の研究テーマ「均等分裂と還元分裂:染色体分配機構の総合的な解明」(研究代表:渡邊 嘉典、東京大学分子細胞生物学研究所 教授)の横林しほり研究員、渡邊嘉典教授らによるもので、この研究は米国科学雑誌「Cell」に、12月2日(米国時間)に掲載される。

<研究の背景と経緯>

 細胞の染色体は遺伝情報(ゲノム)を担うことで知られている。また、細胞分裂には体細胞分裂(注4)および減数分裂と異なるタイプがあるが、いずれのタイプにおいても細胞が正常に複製されるためには、複製してできた細胞(娘細胞)に染色体が適切に分配される。
 体細胞分裂時に起こる染色体分配においては、複製された染色体のコピーが娘細胞へ均等に分配される。そのためには、染色体の中心部分(動原体)が反対方向からのスピンドル微小管(注5)によって捕らえられる(図1)
 一方、生殖細胞で精子や卵子を形成するときに見られる染色体を半分に減らす分裂は減数分裂と呼ばれている。減数分裂では第一分裂と第二分裂の二段階の分裂が起こっており、第二分裂では体細胞と同じ機構の分裂が起こっているが、第一分裂では父親と母親由来の対応する染色体(相同染色体(注6))の分離(還元分裂)が起こっている。体細胞分裂では起こらず減数分裂でのみ起こる第一分裂において、染色体が適切に分離されるためには、複製された染色体の動原体が同じ方向からのスピンドル微小管によって捕らえられ、相同染色体の動原体が反対方向から引っ張られることが重要である(図2)と昔から知られていたが、その方向を切り替える分子メカニズムは謎であった。

<研究の成果と今後への期待>

 今回、酵母を用いた研究で同定したタンパク質Moa1は、減数分裂の第一分裂において複製された染色体の動原体の接着を促進することにより動原体を同じ方向へ向かせことが分かった(図2)。すなわち、正常な減数分裂が起こるためにはMoa1というタンパク質が不可欠であることが分かった。
 生殖細胞の染色体分配のメカニズムは酵母からヒトまで保存されていると考えられており、本研究の成果が、ヒトの不妊症あるいはダウン症などの原因解明の研究にも波及効果をもたらすものと考えられる。また、動原体の方向性の制御は、染色体分配の根幹をなすもので、本発見は生物学的にも大変重要な問題を解いたことになる。

<参考:論文タイトル>

“The Kinetochore Protein Moa1 Enables Cohesion-Mediated Monopolar Attachment at Meiosis I”
(動原体タンパク質Moa1は、減数第一分裂での接着を介した動原体の一方向性の確立を可能にする)
doi :10.1016/j.cell.2005.09.013


用語説明
図1
図2

この研究テーマが含まれる研究領域、研究期間は以下の通りである。
研究領域:戦略的創造研究推進事業(SORST)
研究期間:平成14年10月〜平成18年3月

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本件問い合わせ先:

渡邊 嘉典(わたなべ よしのり)
東京大学分子細胞生物学研究所
〒113-0032 文京区弥生1-1-1
TEL: 03-5841-1466 FAX: 03-5841-1468
E-mail:

相馬 融(そうま とおる)
独立行政法人 科学技術振興機構
戦略的創造事業本部 研究推進部 研究第三課
〒332-0012 埼玉県川口市本町4-1-8
TEL:048-226-5636 FAX:048-226-1216
E-mail:

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