JSTトッププレス一覧科学技術振興機構報 第226号 > 語句説明

【語句説明】

注1)Toll様受容体 :Toll-like receptorの和訳でTLRと略される。TLR1からTLR13まで知られている。主に免疫細胞であるマクロファージや樹状細胞、B細胞などに発現するタンパク質で、病原体特異的な構造を持つ蛋白、脂質、核酸などを認識し細胞を活性化する。活性化された細胞は病原体の貪食、排除が促進され、炎症性サイトカイン、インターフェロンなどを産生し他の細胞に危険信号を与えたり、T細胞などによる獲得免疫の橋渡しをする。

注2)炎症性サイトカイン :病原体の生体内への侵入があった際、自然免疫系は炎症反応を惹起することにより病原体を排除させる。炎症反応の原因となる液性因子が炎症性サイトカインである。病原体の侵入が察知されると、細胞内シグナル伝達分子が活性化され、炎症性サイトカインが産生される。その結果、発熱などの炎症反応が惹起され、細菌などの病原体が排除される。

注3)I型インターフェロン :ウイルス感染時に細胞から分泌される液性因子として発見された。主にリンパ球系から産生されるインターフェロンアルファと非リンパ球系から産生されるインターフェロンベータがあり抗ウイルス、抗癌作用を示す事が知られている。

注4)RIG-I :ウイルス感染を察知する細胞内センサー。ウイルス感染により生じる二重鎖RNAを認識すると考えられている。RIG-Iがウイルス感染を察知するとシグナル伝達経路が活性化され、最終的にI型インターフェロンを誘導し、生体防御反応が成立する。

注5)Mda5 :RIG-Iと同様にウイルス感染により生じる二重鎖RNAを認識すると考えられるRNAヘリケースドメインとシグナル伝達経路の活性化に必要なCARDドメインから成る分子。

注6)B-DNA :二本鎖DNAは通常ワトソン、クリックが示したように右巻きの二重螺旋の構造を取り、B-DNAと称される。ウイルスやその他の病原体だけでなくヒトの二本鎖DNAの殆んどはこのB-DNAの構造を取っているとされる。二本鎖DNAのなかには左巻きの螺旋構造を取るものも知られ、ジグザグ状に見えるのでZ-DNAといわれる。

注7)IPS-1 : RIG-IおよびMda5が有するCARDドメインと類似のCARDドメインを有する分子。このドメインを介してRIG-I、Mda5と結合し、シグナルを下流へと伝達する。最終的にはIRF3を活性化しI型インターフェロンを誘導する。

注8)TBK1 :ウイルス感染時におけるインターフェロン産生に重要なシグナル伝達分子のひとつでIκBキナーゼ(IKK)関連セリンスレオニンキナーゼ(IκB kinase (IKK)-related kinases)の一種。Tank-binding Kinaseの略。 またTLR3とTLR4におけるインターフェロン産生には必須であるがTLR9によるインターフェロン産生には関与していないとされる。