別紙2

委託開発の採択課題の内容

課題名 RFIDタグを用いた手術器具識別システム
新技術の代表研究者 大阪大学大学院 医学系研究科 助教授 加藤 天美
委託企業 ユニパルス株式会社
新技術の内容:
 本技術は、人体を透過可能で確実に検知できる小型のRFIDタグ(ラジオ波による非接触識別タグ)を用いて手術中に使われる器材を管理するシステムである。病院での外科手術後にガーゼなどの異物が体内に忘れられる医療事故が多発しており、社会問題となっている。これまでは、器材の出入りチェックの二重化や手術直後のX線撮影など、医療スタッフに依存した方法がとられているが、医療事故の確実な防止には至っていなかった。
 本技術では、様々な医療器具に小型のRFIDタグを取り付け、無線通信で非接触に情報の読み出しを行うことにより、器具の存在をリアルタイムで認識できるため、人手に依存せずに手術中の医療器具を確実に識別することを可能にした。
 本技術を用いることにより、安全で確実な器具の管理ができるため、医療事故の防止が可能であり、手術時間の短縮は手術のクオリティーの向上にも貢献することが期待される。

課題名 連続鋳造法によるロータス型ポーラス銅の製造技術
新技術の代表研究者 大阪大学 産業科学研究所 教授 中嶋 英雄
委託企業 株式会社ASABA
新技術の内容:
 本技術は溶融銅を水素ガスの加圧雰囲気中で一方向に凝固させることにより、溶融銅中の溶解ガスが金属の冷却とともに気体として分離し、レンコンのように一方向に伸びた円柱状の細孔を有するロータス型ポーラス銅の製造技術である。近年、電子機器の高性能化・小型化に対し、部材の放熱面積が大きく水冷式に適したロータス型ポーラス銅が注目されているが、従来の鋳造法では製造コストが大きいだけでなく、サイズにも限界があり実用化には至らなかった。
 本技術では、水素ガスを吸わせた溶融銅を溶融温度・凝固温度・雰囲気ガスの圧力などを制御しつつ、冷却コントロールした鋳型に連続的に通過させることにより、一定形状を有する長尺のロータス型ポーラス銅を製造することが可能となった。
 本技術により開発されたロータス型ポーラス銅はその表面積、流体透過性から半導体デバイスなどのヒートシンクに適しており、電子機器の性能向上に寄与することが期待できる。

課題名 魚類冷水病ワクチン
新技術の代表研究者 高知大学大学院 黒潮圏海洋科学研究科 助教授 大嶋俊一郎
委託企業 川崎三鷹製薬株式会社
新技術の内容:
 本技術は、発症前の稚魚期に投与して、冷水病の予防を目的としたワクチンである。
 従来、冷水病対策としては疾病の発生の度に抗菌性物質の投与を行っていたが、繰り返して投与することによる耐性菌の発現や食用に供するためには一定期間出荷できない等の問題があった。
 本技術は、冷水病原因菌の対数増殖期に不活化した菌体のワクチン活性が特に高いことを利用して、対数増殖期に不活化した菌体を用いてワクチンの製造を行うものである。
 本技術によるワクチンは、冷水病発症前の稚魚期に投与することで予防効果が得られるため、養殖魚の生産性や放流事業による歩留まりを向上させることが期待される。

課題名 着色排水のバイオ脱色処理システム
新技術の代表研究者 大阪教育大学 講師 杉浦 渉
(元大阪府立公衆衛生研究所 主任研究員)
委託企業 三木理研工業株式会社
新技術の内容:
 本技術はバチルス菌を担持させた流動床用多孔質担体を用いて、染色工場の大半で使用されているアゾ系染料を含有する着色排水を短時間に連続的に脱色処理するシステムである。
 本技術では、微生物バチルスOY1-2が産生する酵素により、アゾ染料の発色団であるアゾ基を分解還元してアミン化合物に変換する。この酵素反応による染料の分解は嫌気状態下、菌体内の補酵素の関与により行われるため、使用する薬剤もPH調整用硫酸と菌の増殖用栄養のみで、排出汚泥量を従来方法に比べ大幅に低減することが可能となる。
 本技術により低コストで廃棄汚泥量の少ない脱色処理システムが確立されることで、既に着色排水規制が設定されている和歌山市、川崎市、三郷市はもとより、従来黙認されてきた着色排水による放流河川の水質汚染対策が大きく進むことが期待できる。

課題名 ラジカルインジェクション同時脱硫脱硝装置
新技術の代表研究者 岐阜大学大学院 工学研究科 助教授 神原 信志
委託企業 株式会社アクトリー
新技術の内容:
 本技術はアンモニア及び水蒸気を大気圧アルゴンプラズマによりラジカル化し、それを廃棄物焼却炉や重油、ガス、石炭ボイラ等の排ガス中に吹き込むことで、硫黄酸化物と窒素酸化物を同時に除去しようとする乾式脱硫脱硝システムである。環境問題意識の高まりから、中小規模の燃焼炉でも硫黄酸化物や窒素酸化物の排出規制が行われるようになってきた。しかしアンモニアと触媒を用いる大型の脱硝装置や石灰石と水を用いる湿式脱硫装置では設置面積や設備コストや運転コストの面で適応できず、充分な排ガス対策が行われていないことが多かった。
 本技術は高い反応性のアンモニアラジカル及びOHラジカルの連鎖反応を利用し、かつ排ガスとの混合方法を工夫することにより、高い脱硫、脱硝率を同時に達成できる。
 本技術により、法的規制が緩く充分な排ガス処理の行われていなかった中小規模の廃棄物燃焼炉や産業用ボイラなどの有効な排ガス対策として期待できる。

課題名 LSI高速自動検査システム
新技術の代表研究者 長崎総合科学大学大学院 新技術創成研究所 教授 田中 義人
委託企業 テスト・リサーチ・ラボラトリーズ株式会社
新技術の内容:
 本技術は、LSI検査の自動化による高速化、信頼性向上に関するものである。近年、LSI価格に対する検査コストの割合は増加しており、特に電気代、人件費が大きな問題となっていた。
 本技術では、検査装置の小型化とロボットによるネットワーク化を図り、高効率・省電力なセル型LSI自動検査システムを構築する。セル方式の導入により、多品種小量、少品種大量生産のどちらにも柔軟に対応でき、検査効率の向上が図られる。さらに、自動化により検査の信頼性向上と高速化、低コスト化が可能となる。
 本技術により、LSI価格の検査コスト低減が見込まれる。また、高・低温や振動下で使用される車載用LSIのように、厳格な品質が求められるLSIの量産検査への展開が期待できる。