資料5

戦略目標


■ 戦略目標:新たな手法の開発等を通じた先端的な計測・分析機器の実現に向けた基盤技術の創出
  (平成16年度設定)
1. 名称
新たな手法の開発等を通じた先端的な計測・分析機器の実現に向けた基盤技術の創出

2. 具体的な達成目標
 全く新しい発想に基づく技術開発、新原理の探索を通した新たな手法の開発等、多方面の先端科学技術分野における創造的な研究活動を支える新たな計測・分析機器の実現に向けた基盤技術の確立を目指す。
 特に、細分化、多様化が進む先端分野の研究開発において、画期的な進展もたらすため、あるいは全く新しい領域を切り拓くため、従来技術では不可能であった現象や事象について、新たな方法論の開拓と多分野の技術の融合等を併行して進める。具体的には、例えば、以下のような領域について、先端計測分析機器の開発につながる基盤技術を確立する。
・ 無機材料や有機材料、生体・環境試料中に含まれる極微量物質の化学形態を計測・分析する基盤技術の確立
・ 無機材料や有機材料、生体・環境試料の固体-固体界面、固体-液体界面の状態を計測・分析する基盤技術の確立

3. 目標設定の背景及び社会経済上の要請
 我が国が科学技術分野で真に諸外国を先導するためには、世界最先端の研究データ、独自の研究データを取得できる先端計測分析技術・機器を整備していくことが重要である。世界最先端の研究データ・独自の研究データは、具体的な研究ニーズに基づく創意工夫による技術開発や、新たな方法論の開拓や多分野の技術の融合を通じた新しい測定機器によって生み出されるものであるが、このような新しい手法の開発等を通じた測定機器の開発自体も極めて新規性・独創性の高い研究である。
 また、新しい手法の開発を通じた先端的な計測・分析技術基盤の確立は、次の開発段階である実用化・汎用化をすることにより産業応用も可能となるものであり、社会経済上大きな波及効果も期待できるものである。
 具体的には、例えば、生体中又は環境試料中の極微量物質が、生体又は環境に与える影響は、化学物質の存在形態により大きく異なるものであり、このような極微量物質の存在形態を可視化することは生体反応・化学反応を設計する基礎的知見を与えるものである。また、次世代の超高集積化素子を実用化する際にはナノ(10億分の1メートル)領域の界面の制御技術が鍵となり、物質界面の化学状態を明らかにすることは重要である。さらに、ナノレベルの材料が生体内にどのような影響を与えるかを解析するためには、ナノ材料と生体物質の接触界面の情報を明らかにすることが重要である。
 このような技術の開発は、ライフサイエンス分野における分子認識に基づく生命現象の解明、ナノテクノロジー(10億分の1メートルのレベルの精度を扱う超微細技術)・材料分野における物質間の相互作用の解明、環境分野における生体影響の解明等の他様々な分野において鍵となるものであり、また、新規ナノバイオ(分子のレベルで物質を操るナノテクノロジーと、生命の仕組みを解明するバイオテクノロジーを組み合わせて、医療や環境の中に存在する微量物質の検出などに応用する新しい研究領域)材料の開発、新規集積化素子等の開発に資するものであり、多大な経済効果も期待できるものである。
 これまでは、我が国においては、新しい測定機器に関する研究・技術開発を、各研究機関及び個々の研究者・技術者が個別に進めてきたが、これらの研究を行うにあたっては分野横断的に体系的に基盤技術を確立していくことが重要であり、また、本基盤技術の確立のためには、全く新しい発想に基づく研究が適切な規模で長期間実施される必要がある。
 以上のことから、我が国においても、本基盤技術の開発について早期に国家的に取り組む必要がある。

4. 目標設定の科学的裏付け
 新しい手法の開発を通じた先端的な測定機器を確立する基盤技術の研究開発は、各研究機関又は各研究者・技術者個人において独自に取り組みが行われているものの、未だ不確定な要素が多く、全く新しい発想による体系的な取り組みが必要となる。
 本戦略目標は広汎な先端科学技術分野において根本かつ普遍的な価値を有する基盤技術を確立するものであり、国家として戦略的・長期的に取り組む必要がある。また、技術動向に応じて適宜新しい技術を確立していく必要もあるので、次世代を担うべき若手研究者の育成も重要な課題となっている。
 以上のことから、複数の技術開発を同時並行的に競争的環境下で進めることにより、最も有用な計測・分析技術を抽出し、世界に先駆けて世界標準となる基盤技術を確立することが重要である。さらに、20代、30代の若手研究者・技術者の育成にも重点を置く必要がある。
 また、本戦略目標は、新しい手法の開発を通じて新規性・独創性を有する計測・分析基盤技術を確立するものであるが、その開発の推進にあたっては、我が国において実施されている他の先端計測分析技術・機器を開発する事業と情報交換をしつつ、連携をとりながら推進していくことが重要である。

5. 重点研究期間
 平成16年度から平成19年度までの4年間にわたり、新規研究課題の募集を実施する。研究期間は1研究課題につき概ね5年の研究を実施する。(なお、優れた研究成果を挙げている研究課題については、厳正な評価をした上で、研究期間の延長を可能とする。)