資料4

新規採択研究代表者・研究者および研究課題概要


○個人型研究(さきがけ)

戦略目標1 「情報通信技術に革新をもたらす量子情報処理の実現に向けた技術基盤の構築」、

2 「新しい原理による高速大容量情報処理技術の構築」
7 研究領域:「量子と情報」
研究総括:細谷 曉夫(東京工業大学大学院理工学研究科 教授)

氏名 所属機関 所属学部・
学科など
役職 研究課題名 研究課題概要
阿部 真之 大阪大学 大学院工学研究科 助教授 異種原子組み替えによる固体表面量子ビットの実現 異種原子組み替え技術を用いて個々の原子を動かし、固体量子コンピュータの素子の実現を目指します。具体的には、ピコメートルオーダーの空間分解能を持つ原子間力顕微鏡(AFM)を用い、シリコン基板に埋め込まれた核スピンI=1/2を持つリン原子をAFM探針で動かしながら規則的かつ緻密に配列させます。このナノ構造(固体表面量子ビット)は、リン原子の核スピンと電子との相互作用を介して量子演算を行える素子として期待できます。
宇佐見 康二 独立行政法人
科学技術振興機構
さきがけ
「光と制御」領域
博士研究員 測定過程を使った非古典的な原子集団スピン励起の生成と制御 光と原子集団との相互作用において個々の原子の区別がつかない時、原子は集団的な振る舞いをします。この場合、原子集団のスピン状態は、光のようにボゾンとして量子的に取り扱うことができるようになります。本研究では、光と原子集団スピンのボゾンとしての類似性を探索することで、量子光学の実験手法を非古典的集団原子スピン状態の生成、推定、制御に適用し、量子集団スピントロニクスともいうべき新分野の開拓を目指します。
小川 朋宏 東京大学 大学院
情報理工学系研究科
助手 量子通信路の可逆性と情報理論的・幾何学的保存量の評価 本研究では、量子通信路の可逆性、消失性を量子相互情報量の保存条件として考察することで、量子誤り訂正の性能評価や量子暗号プロトコルの安全性評価を統一的に扱うことを目指します。このとき、量子状態のコピーが不可能であることを示すno-cloning定理と関係した二者間のトレードオフが重要になります。また、統計的に同等な量子状態族で不変な情報量についての研究を行い、量子情報幾何に新しい手法を提供することを目指します。
松下 道雄 東京工業大学 大学院理工学研究科 助教授 単一分子分光による固体中の単一スピンの観測 核スピンは取り得る量子状態の数が数個に限られているので、量子情報の格好の担い手になります。ところが、その量子状態は多数のスピンが作り出す巨視的磁化の観測から求めており、スピンの集団の振る舞いしか分かりません。個々のスピンの量子状態を知るために、単一分子分光の手法を用いて固体中の一個の発光性イオンを観測し、その核スピン状態を光遷移のゼーマン効果を利用して検出します。
遊佐 剛 日本電信電話
株式会社
先端技術総合研究所
物性科学基礎研究所
リサーチ
アソシエイト
新しい核磁気共鳴を用いた核スピンの量子状態制御 分析技術として世の中で広く使われている核磁気共鳴(NMR)は原子核の持つ核スピンという性質を用いています。最近このNMRの手法を用いて、核スピンを素子とする量子コンピュータが注目されるようになってきました。本研究では、従来と異なる新しいNMR手法を用いてナノ領域の少数核スピンを操り、電子や光と融合させることで、核スピンを用いた量子情報処理装置や量子中継器などの量子機能デバイスの実現を目指します。